表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/29

第13話「もう戦うつもりもないだろう」

 ンウニュさんに渡された双眼鏡で、遠くの方に見える建物の様子を眺める。僕らが立ってる砂の山とそっちにある街みたいなのの間には何もなくて、ここの下り坂の先には平らになってる平地だけがある。

 それに対して、僕は後ろを振り返るけど、もうここにはしばらくいるはずだけど、今回はまだ砂が滑り落ち切ってないみたいで、まばらにはなってるものの、僕らを乗せた大きなトカゲの足跡がくっきりとした赤色で残ってる。


 さらに僕らの足元もトカゲから降りて以降は、足跡で砂が色を変えることでくっきりと見えてるし、今いる場所に近づけば近づくほどそれらの1つ1つの粒がよく見える。それを見てる間、ただただ上半身だけを振り返らせた状態のまま、小さく口から息を吐きながらそっちの方を見るだけにしてた。


 この場所では風も吹かないみたいだから、僕らが足を止めてる間、辺りで聞こえてくるのはトカゲがたまに鳴き声を上げたり体を震わせたりしてるのがあるくらいで、それ以外に聞こえるものはない。


 僕も目で向こうに見える建物の方を眺めるけど、そっちは薄い白色に染まってるのがうっすらと見えるくらいで、それのせいでその全体は良く見えない。目を凝らすけどその様子は一切変わらない。


 ただそこだけに視線を一身にぶつけてたせいで、気づくのが遅れたけどもう兵頭彩芽は気づいてて、それに続いてンウニュさんも僕らの顔の向きに気づいて、わずかな息を吸いながら視線をそっちに向ける。


 それから向こうが何度かこっちに声を出してくるけど、その間も僕も兵頭彩芽もそっちの方を見てるだけにしてて。まずはこっちから相手に向けてあれが薫子って人なのか聞く。そしたら、そっちからただ一瞬だけ終わる言葉で違うってだけ言ってる。


 その間向こうが足に魔力を込めてるせいでその音で声が消えそうになってたけど、でも、僕も髪の毛やスカートがそっちから放たれてる風で吹かれたまま砂煙を防いでただけの様子を辞めて、膝を折り曲げて魔力を込める。

 すぐに兵頭彩芽の方から足元の魔方陣を蹴り飛ばして飛び出していく方向を僕も見つめて。だんだん小さくなって行く姿を見るなり、こっちも同じ魔方陣が生成できる。


 行こうとしたところで、腰を抜かしながらたぶんクルド語を話してるンウニュさんの方を見てるのか見てないのかという感じで、ただ顔の向きだけをそっちに近づけながら大きな声を出すだけにして。

 すぐにもう1回兵頭彩芽がまだ小さく見えてる方に向き直って魔方陣を蹴り飛ばした。


「後で追っかけてきて!」


 それだけ言いながら髪の毛や服が激しく風で揺れる感覚だけを味わいながら、先に行ってる向こうがまっすぐに跳んでた所から降下を始めるために角度を変えたのを見たのに合わせて、僕もそっちに行こうとする。

 だけど、魔力を込めすぎてたみたいで、体からそれを減らしても全然角度が変わらなくて。もう1回足に魔力を込めて魔方陣を蹴ろうにもそれを召喚した次の瞬間にはもう飛んじゃってて蹴れない。


 それを兵頭彩芽に伝えたくても、もう向こうはどんどん下の方に行っちゃっててとてもう声なんかとても聞こえない。

 それでも両膝を曲げた状態のまま何度も手を振って何度も話しかけてるのに、向こうは一切こっちには振り返らずに地面に向けて着地の準備をしてた。


 そっちを見てたせいで、もうさっきまで見てた街の防壁が、もうすぐそこの所まで来てて。それにぶつかるのに受け身を取るために体をひっくり返そうとしたら、反射的に閉じてた目を開けた瞬間、そこに何かあって。

 でも速さのせいで全然見えないから、ただ大きな声を繰り返し出すことしかできなくて。そのままぶつかることに。


 体中全体に響く大きな痛みが来て歯を強く食いしばって。それだけで押さえつけた瞼の間からほんの少しだけ涙が出ちゃうけど、それでもすぐに拭って目を大きく開ける。そしたら、ぼくは魔力を全く込めてないのにゆっくり地面に降りるまま、その足音だけを立ててる女の人がいた。


 息をするのも忘れてたせいで、呼吸が苦しくて何度も一気にそれを繰り返してる間、地面の上に両方の手を付けながら目を開けたままに。それから相手の方を見たら、僕の方に手の平を近づけながらもそれで触れようとか触れまいか悩んでいるみたいだった。


「大丈夫か?」


 すぐに何度か大きな声を出しながら両方の手を上下に動かしちゃって。それのせいで少しだけ後ろに下がって。そのバランスが上手く取れなかったせいで、しゃがんだ体勢から尻もちを突くことに。

 同じ体勢のまま上を見上げると、影になってる場所が全くない女の人が立ってて。片方の手をこっちに伸ばしてる。

 それに手を借りながら立ち上がったら、金髪の顔を見上げることになるけど、それも動作をしている一瞬だけで、手を向こうから放されて以降は、自分の左手の指を右の手で包んでその平で擦ってた方だけを見ることに。

 鼻から息を吐いてる感覚まで感じそうになってて、その動きで頬が自然に膨れてるような感じになってた。


「あっ、あの……」


 しばらく感覚に浸ってた所でふと僕の方から顔を上げたら、それと一緒に顔を上げて。そしたら水色のスーツに赤のマントを下げてるその姿を追ってから、目が会うことになった。

 そのまま僕の方から進んで相手の様子を見つめてるだけの時間がずっとあって。だけど、その間、声を出せずに口をただ動かしてるだけにしてたら、向こうの方からこっちの顔を両手で挟んで。その体温をこっちに髪の毛や肌越しに伝えてくる。


 そのせいで、僕も今まで体にくっつけるだけにしてた両方の手を胸に押し込む感じになりながら目も眉を使って目いっぱい開くことになっちゃった。

 だけど、それも向こうが一回両手でこっちの顔を軽く叩くみたいにしながら「よし、大丈夫そうだ」とだけ言ったら。すぐに離れて。小さな声を出しながら僕はそっちを見ることになった。


「ストライカー!」


 少し離れたところからする大きな声を聞いて、僕もストライカーさんもそっちの方を見ることに。それからほとんど間髪入れずにそっちの方から大きめの声で「今行く」とだけ伝えたら、もう一度僕の方へと向き直ってた。


「話は後だ。まだ助けなきゃいけない人がいる」


 ただ、僕の両方の肩に手を置いたまま膝をちょっとだけ折り曲げてこっちに話しかけてくれる。そして、それに対して僕は顔を下げたまま早口で自分でも何言ってるのかわからない話をすることしか出来ない。その間両方の手の重なりの上下を何度も入れ替え続けることになる。


 でも、その次の瞬間、突風が吹いたと思って。それのせいでこっちは顔の前に腕を持ってくる感じになっちゃう。それを数秒間続けた後、閉じた目を開けてから腕を降ろしたら、さっきまでそこにいたストライカーさんがもういなくなってて。辺りを見渡すけど、その跳んでる姿すら見えないままになってた。


 強いていうなら、さっきその人の名前を呼んでた人が走ってる姿とその足音だけがしてて。それ以外はもう砂煙も消えかかってるせいで、もう辺りはただ静かさだけが残ってた。





 僕が最初にそうしてたみたいに魔力を感じた方に向かって、走って行ってたら城壁で見えなかった姿がだんだん見えてきた所で、向かってた人を一撃でノックアウトさせてるストライカーさんの姿があって。

 そっちに向けて手を振りながら名前を呼んで。その言葉が終わった後も自然と明るい声が出てた。


 だけど、たくさんの倒したと思う人たちが、灰色の砂の上だけに倒れている姿の中に兵頭彩芽もいて。

 向こうは、上瞼を開きながら口を開けてるのか閉じてるのかわからないまま、細かく動いているの以外には何もしてないで、両足を地面の上で折り曲げてるの以外には何もできない。


 その姿を見るなり、僕も手を降ろしながら足を進めるペースを落としていってて。それでも、兵頭彩芽はずっと手を体の前で膝の上に落っことしているのと同じ方に視線を向けるだけで。僕もそっちの方を立ったまま見つめてるだけにしてた。


 ただ時間が過ぎてるだけの状態が続いてた矢先、ストライカーさんが兵頭彩芽の方を見るなり、向こうもそれに気づいたみたいで銃を両方の手で持つけれど、歯を食いしばってもそこから出る音を止められずにいた。それから一度顔を振り回してから一瞬だけ僕と視線を合わせる。


 向こうは顎を引くようにしながらこっちの様子を見てるだけにしてて。それが過ぎたら、兵頭彩芽の方から自分の足に限界まで思い切り魔力を込めて空中に飛び出してた。その音は僕の所にも聞こえてたけど、その数秒後にはその進行方向にストライカーさんがいたせいで止まることに。


 それを見た瞬間さっきまでその人が立ってた方を僕も息を吸い込みながら見るけど、もうそこには足の形に砂がへこんでる様子くらいしか残ってない。そっちの方には兵頭彩芽が両方の手を斜め下の方に落としながらほんの少しだけ体を前のめりにして立ってる姿くらいしか残ってなかった。


 ただ、そっちの方を僕も見てるつもりだけど、だんだん兵頭彩芽が浮力を失って降下しようとしている所だった。そして、そっちはすぐに降りて来たと思ったら、今度はその軌道が僕でも見えるようなペースで下がってくれてた。


 でも、僕の方へと向かってきてくれたと思ったら、次の瞬間にはもう僕の後ろにいたさっきストライカーさんのことを呼んでた人と話してて。「もう戦うつもりもないだろう。何も殺すことはない」ってだけ言ってて。そっちの方を見上げながら目尻を両方とも落っことしてた。


 目線は相手のことを見たり、外しながら口を潰してたりをしてる間に、向こうの方から視線をこっちに合わせてくれてたみたいで。

 それのせいで息を吸いながら顔を持ち上げることになって。さらに、足を数歩下げちゃってた。


「君のことも知りたかった。そっちの来てくれて好都合だ」


 その言葉と一緒に、ストライカーさんは口の両端を持ち上げてた。

読了ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ