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人よりも動物の方が多いような、のほほんとした駐在所に務める榊和正、通称「ノロマサ」。 怖がりで、涙もろい彼の元に舞い込んでくるのは、 一風変わった動物たちからの捜査(?)依頼。

~プロローグ~


僕の名前は榊和正と申します。


父親が小田和正の大ファンということから名付けられました。


安易と言えば安易ですが、


『和に正ずる』と自分で解釈してる分には嫌いではありません。


小学校5年生の文集を見ていただけると分かりますが、


道に迷った僕は、ある警察官の方に助けてもらいました。


それ以来、ずっと警察官に憧れていたのです。


そういえば最近、イケメンの俳優さんが巡査官の役をやっているのをテレビで拝見しました。


何ともかっこいい。


イケメンていうのは『イケてるメンズ』の略だってご存じでしたか?


いやはや、先日落とし物をされた女子高生に教えて頂きました。


「あんたと正反対ってことじゃない?」


と語尾上がり口調で親切に教えてくださって。


最近の若者は礼儀知らずでなっていないと聞きますが、全くです。


皆さんとても親切です。


僕も某大学卒業後、一巡査官としてスタートしたばかりのこの身です。


ですが、テレビドラマのような派手なアクションも無ければ、


人混みを掻き分けて犯人を追いかけたり、


夜の治安悪化に伴うパトロールなんてものもありません。


さして言えば、


落とし物を拾った小学生に拾得物の書類書きを拒否されたり、


ほのぼの老人会の辻おじいさんが不倫騒動に巻き込まれたり。


そうそう、先日は盗みを働いた犯人を逮捕しました。


嫌々、中々すばしっこい奴でしてね。


今は動物園の中で大人しくしていますが、相当お腹が減っていたんでしょう。


僕が初めて赴任したのは、


山の中のほのぼのとした駐在所です。


人間よりも動物の方が多いような。


初めての任にあたって、青い帽子を被って毎日自転車を走らせています。


ただ、駐在日誌とでもいうのでしょうか?


あまり大事件もなく、白い部分がほとんどです。


これはとても良いことです。


しかし困った事に、


僕にはもう一冊駐在日誌が存在するんです。


そちらの方は毎日ひっきりなし起こる出来事で、


詳細欄の隅から隅までびっしり埋め尽くされており、余白が見当たらないほど真っ黒です。


この普通の青いノートに書かれたタイトルは、


『別冊 駐在日誌』


有名な「書いたら死ぬ」なんて物騒なノートではありませんので、悪しからず。


そもそもこのノートのきっかけは、梅雨も明けた暑い夏に始まったのです。






エピソード1

    『真夜中の訪問者』






「雨、やっと上がったようですね」


僕は二部屋ある駐在所の一室から、窓を開けて空を見上げました。

雲はまだかかっていますが、星がちらほら見られます。

この辺りはとても空気が澄んでいるので、夜空は最高に綺麗です。


屋根の庇からは、雫が数滴、下へ落ちて行きました。


締め切っていた部屋の窓を開けた放った途端、涼しい風がするりと中へ入り込んできました。

汗がひんやりと冷まされます。


駐在所は、来られた方との応対の場が一部屋。

もう一部屋は休憩所です。


僕は皆さんが外から良く見るガラス戸から身を乗り出して、

駐在所からの明かりを背に、半舗装の道路を見下ろしました。


でこぼこした道路にはあちこちに大きな水たまりが出来ています。

脇に止めてある自転車もずぶ濡れです。


「今日はスゴイぬかるみですけど、帰りは大丈夫ですか?」


もう一人残っていた佐波多さんを振り返ります。

佐波多さんは僕の声に、書類から視線を上げました。

その利発そうな瞳が「仕方ない」とでも言うように柔らかく細まります。


彼は自分の卓上を片づけると、僕の隣にすらっと立って夜空を見上げました。


僕よりも数十センチ高く、三十代半ばで髪もすっきりとした短髪です。

こんな素敵な方が、のんびりとしたこの駐在所にいるなんてびっくりしてしまいます。


佐波田さんのような方をイケメンと呼ぶのでしょう。


今度あの女子高生が来たら聞いてみようとは思っているのですが、

あれから音沙汰無しなので残念です。


佐波多さんは道路に溜まった水たまりを見て、わずかに苦笑しました。


「これは、自転車押して帰るしかないかな?」


「その方が安全ですね。きっと」


二人で顔を合わせて吹き出します。

今日は僕が夜勤なので、イケメン佐波田さんはこのまま帰宅です。


「唐傘電灯の道祖神の前、くぼんでいるので水がすごいと思いますよ。

気をつけて下さい」


僕の言葉に、佐波多さんは長靴を履きながら笑って頷きました。

僕より長く勤務されているので、言うまでも無いですよね。


思わず自分の言葉に頭を掻きました。


一度大きく伸びをした佐波多さんは、

そのまま僕を振り返ると爽やかな笑顔を向けます。


「お前も、何も無いとは思うが用心してな」


「はい。有り難うございます」


「日誌も忘れずにな、ノロマサ」


「承知しております」


佐波多さんは、頼りない後輩にいつもこうして声を掛けて下さるのです。


街灯の少ない道を、水たまりを避けてゆっくり自転車を押していく後ろ姿に大声で、


「お疲れ様でした」


と敬礼しました。


ああ、ノロマサというのは僕のあだ名です。

これだけは小学校から変わっておりません。


僕はおっとりしているほうで、足もあまり速くなく、背も高くありません。

誰かに『ノロマさん』と言われた事から、いつの間にかノロマサになってしまいました。


自分では割と気に入っています。

皆に同じように呼ばれるなんてなんか嬉しくて。

そう言う事ありませんか?


ああ、失敬。余談でした。


僕はいつものように机に向かい、駐在日誌に巡察の時間と何も無かった旨を記入し、いそいそとテレビを付けました。

あの刑事ドラマの時間です。


無い物ねだりと言いますか、実は欠かさず見ているんです。

お恥ずかしい。


いえいえ、『イケメン』が羨ましいのではなく、

僕には到底解決出来そうもない事件や真相を解き明かすあの心意気とでもいいますか?


いえ、何でもないです。

余計に弁解しているようになってしまうので黙っておきます。


ですが、その日に限ってテレビが上手く点きません。

おかしいな?


僕は配線を確認し、電源を入れたり切ったりしてみましたが言うことをきいてくれません。


何か気の触ることでもあったのでしょうか?


ふむっと腕を組んでいると、いきなり天井の蛍光灯がチカッチ、チカッチと点滅を始めました。


もしやこれは、外の配線がおかしいのでは?

そう思って懐中電灯を手に取ると、長靴を履いて外の配線コードを見に行きました。


コードは雨に濡れて、懐中電灯のオレンジ色の光を鋭く反射しています。

なぜか背筋が寒くなり、ぶるっと震えてしまいました。


更に、雫が僕の首筋にぽたりと落ちてきてその場でひゃっと飛び上がりました。

小心者で、すいません。


フクロウの「ほーうほーう」という声がする他、蛙が一斉に鳴く声が響くのみです。


辺りは人っ子一人見あたらず、僕の持つ懐中電灯の明かりが暗闇にぽやんと浮かんでいます。


僕は辺りを見渡してから、再度コードを覗き込むように一歩進みます。

泥に踏み込むように、ずぶっと自分の体も沈んでしまいました。

あ、でもこれは僕がメタボだからではありませんよ。

言い訳っぽく聞こえるかもしれませんが。


駐在所の回りはコンクリートで固められた訳でもなく、土がむき出しなので、雨の後はいつもこんな状態なんです。


雨上がりでなければもう少し綺麗なんですが。


コードは切れているわけでもなく、何の異常も見つかりません。


僕が首を傾げながらずぶずぶ泥をかき分けて部屋の中へ戻ると、

いつの間に入ったのか、綺麗な女の方が立っていました。


音もなく静かに振り返った姿に、思わず見惚れてしまったほどです。


「あ、す、すみません。

コード、外のコードの異常を確かめようと思いましたもので」


僕は慌てて女性に頭を下げた後、椅子を勧めました。

真っ白な着物を着た、色の白い儚い花のような女性です。


彼女は軽く会釈すると、音もなく椅子に座りました。

この村の方では無いような気がします。


夜遅くに女性一人で来られるとは珍しい限りです。


ふと気になって見ると、蛍光灯もテレビも正常に作動しています。


やはり接触だったのだろうと思い直し、テレビの電源を切ってその女性に冷たいお茶を出しました。


「大変失礼致しました。どうされましたか?」


僕は机を挟んで座り、対面する形で問い掛けます。

と、彼女は寂しそうに俯いてしまったのです。


襟から覗く真っ白な項が弧を描き、

結い上げた真っ黒な髪と対比して艶容な姿が浮かび上がります。


伏せられた睫は僅かに震えていました。

何か込み入った事情があるようです。


僕はその女性が話し出すのを、

促すわけでもなく、

ただそっと待ってみました。


何かを書いている振りをしたり、時折視線だけ向けてみたり。

しかし、待てども待てども彼女は何も言いません。


ハンカチで口元を覆って俯いたままです。


「お話しされる心の準備が整ったらで構いませんから」


僕はにこやかな笑みを作って、氷の溶けてしまったグラスを持ち上げました。

別のグラスに新しいお茶を入れ直します。


氷を入れて持って戻って来た時、


「あれ?」


その女性は跡形もなく煙のように消えていたのです。

僕はぽかんとその場に立ちつくしました。


駐在所のドアすら開いていません。


とても律儀な方だった様です。

やっぱりお話するのを躊躇われたのでしょうか?


お役に立てなかったことが残念でなりません。


何でもなければ良いのですが…。

また来て下さるでしょうか?


僕は肩を落として、そのまま椅子に座り込みました。


途端、チカッチ、チカッチと蛍光灯がまた点滅を始めたのです。


今度は止まる気配も有りません。

止まるどころか、すうと消えそうになります。


これには流石に僕も体を固くしました。


佐波多さんのしていた『身も毛もよだつ怖い話』が思わず頭の隅を過ぎりました。


まさか。


さっきの女性は幽霊という物では?


不安に思いながら点いたり消えたりする蛍光灯を怖々見上げていると、

彼女の座っていた椅子がキイと音を立てて急に動き出しました。


「うひゃああ」


思わず悲鳴を上げて飛び退きました。


赴任してから、これ程驚いたことはなかったかもしれません。


え?ちゃんと仕事をしているのかって?

勿論です。


じゃあ幽霊の方が怖いのかって?


いえいえ、怖いではなく、急に起こった事に驚いたのです。

冷や汗がたらりと流れました。


只でさえ汗臭いというのに。

これ以上汗臭くなってしまい、来られた方に不快な思いをさせてしまったら大変です。


もしかして先程の方はそれが気になったとか?

ハンカチを持って鼻をおさえていましたし。


椅子はくるくると回り続けています。


僕は意を決すると、さびれた音を立ててゆっくり回る椅子に抜き足差し足で近づきました。

こんな現象は初めてで、どうして良いか対処に困ります。


「あ、あのう、誰か座ってらっしゃいますか?」


自分でもおかしなことを言っているなという自覚はありました。

誰もいないのは一目瞭然だったのですから。


でも、蛍光灯はいきなり点滅し、椅子は勝手に回る。

貴方だったらどうします?

僕もどうしよう?と思ったのです。


そしたら、


「おうよ。アンタかい?お巡りさんいうんは」


返答があったので、僕はいくらか肩をなで下ろし、そしてはて?と思いました。

回る椅子の上には勿論、誰も座っていらっしゃらないのです。


「どちらにいらっしゃいますか?」


僕は慌てて周囲を見渡してその声の主を捜しました。


「上じゃ上じゃ」


直ぐに上を見ましたが、これもおかしな話です。

なぜ上から声がするのでしょう?


上にも勿論、誰もいません。


幻聴かな?


僕は小指でぐりぐりと耳をほじくると、

出てきた耳垢をふっと息を吹きかけて飛ばしました。

これは耳掃除をしないといけない量です。


「これ、若造がわしを無視をするでない」


凄みのある声に思わず体がぴしっと『気をつけ』の姿勢になりました。


「そ、それは大変失礼致しました。

ええと、どちらにいらっしゃるのでしょう?」


「上じゃと言うとるがな」


「はあ?」


一応頷いて上を見ると。

確かにいました。


「あのう、貴方ですか?」


「さっきからそう言うとるがな。

全くのろい奴じゃな」


チカッチ、チカッチ点滅する蛍光灯の真横に、大きなヤモリがいたのです。


あの、ちょっとお聞きしたいんですけど、ヤモリって喋るんですか?

僕が習った限りでは喋らないと思うんですが。


更に、そのヤモリは半分透き通っていたんです。


僕の頭がおかしいんじゃないかって?

はい。僕もそう思います。


「なんじゃ、頼りなさそうな奴じゃのう」


喋るヤモリさんはふわりと宙に浮くように降りてくると、椅子の上に胡座をかいて座りました。


いえいえ、間違っていません。

胡座です。

尻尾は確か後ろから横にくるんと丸まっていたと思います。


僕はそのヤモリさんをしげしげと眺めました。


僕の手の平に載る程の大きさです。


半分白く透き通った、初めて見る方でしたね。


「あ、あの、どうされましたか?」


僕は挙動不審に体を揺らしながら下に正座をすると、ヤモリさんと同じ目の高さで話しかけました。


そんな僕の態度を、ヤモリさんが見直してくれたようです。

瞑っていた片目をほんの少しだけ開けて仰りました。


「最近の若い者はなっとらんもんが多いが、お前さん、なかなか礼儀正しいじゃないか」


「あ、ありがとうございます。恐縮です」


半分透き通ったヤモリさんに褒められるなんて、初めてで照れてしまいました。


え?何かおかしい?


そうなんです。

泥だらけで上がってきた事を忘れていて、正座したらズボンがどろどろになってしまったんです。

明日洗うのが大変ですよね。きっと。


暑いから直ぐに乾くのは不幸中の幸いです。全く。


あれ?そうじゃない?


いやあ、こんな方もいるなんて世の中って広いなあと驚きました。


「私、ここの駐在所の榊と申します。

お名前をお伺いしてもよろしいですか?」


僕は直ぐに机の上にあったノートを取ると、膝の上で広げました。


「名?ワシは死んだ身ゆえ名はないのう。好きに呼んでくれ」

「はあ、亡くなられたのですか。それはご愁傷様です」


そう言って頭を深々と下げてから、え?と顔を上げました。


そうです。

皆様の何を呑気に対座してるんだと言うご指摘を、僕は今やっと理解したんです。

つまり、こちらが幽霊。


ヤモリさんの幽霊だったのです。


ど、どうしよう、どうしよう。


僕はこの時になって初めて慌てました。

幽霊の相談て、僕みたいな者が聞いても良いのでしょうか?

しかも、ヤモリさんは人間ではないし。


僕はこの時怖いと言うよりひどく慌てていました。

おろおろする僕に、ヤモリさんは一つ咳払いをして告げます。


「アンタなら解決してくれるだろうと聞いてのう」


「解決?ど、どなたにでしょうか?」


寝耳に水のお話に、思わず声が裏返ってしまいました。

警視庁のエリートでもない只の巡査に、事件の解決なんて出来るでしょうか?


そんな高名な批評を自分が持ち合わせているとは、どうしても考えられません。


僕は大きく首を振ります。


「身に余る光栄ですが、

私は巡査でありまして捜査出来る程の身分ではないんです。

加えて、貴方様の様な霊体の方のお話を聞いたこともありませんで」


大変に申し訳なかったのですが、再度深々と頭を下げて謝罪しました。


「そんなことは分かっとる。しかしアンタ、話を聞きもせずに投げ出す気かね?」


「それは…」


確かにヤモリさんのおっしゃることもごもっともです。


僕はどうしたら良いか項垂れました。

お話を聞いてから断るとなると、かえってヤモリさんに無駄足を踏ませてしまうことになります。

わざわざこうして来て下さったのに。


かといって自分に全く出来そうにないことを引き受けるほど身勝手な話もありません。


僕が答えに詰まっていると、ヤモリさんは椅子をくるっと一回転させて言いました。


「あるお人が、アンタならと言ってくれたんだ。その子を失望させていいのかね?」

「その子、ですか?」

「おう、アンタみたいにわしらが見える子じゃ」


ということは、やはり皆には見えないのでしょうか?


僕は今まで見えた記憶を探ってみましたが、さっぱり思いつかず、う~んと唸りました。


「私、初めて貴方の様な方とお話したと思うのですが」

「そうかい?おかしいのう」


ヤモリさんは首らしき部分を捻って目を瞑ります。


「わしはこの辺りを仕切っとるもんだ。

仕切っとると言っても、古株なだけだがのう。

皆が相談を持ち掛けよるんじゃ」


「そうですか。それはご立派な方なんですね」


僕がなるほどと感慨深げに頷くと、ヤモリさんは謙遜する様に手を振ります。


「だが最近はわしの手に負えないことも多くてのう。花音に頼むことにしたんじゃ」

「花音?」

「おう、その子と共にアンタならと言うてな。

子供一人ふらふらさせると狐や狸が悪さしよるからのう。

それで、こうして直々に頼みに来た次第なんじゃ」


花音という名前からすると女の子?


確かに女の子を一人ふらふらと歩かせる訳にはいきません。

僕は天秤をぐらぐらと揺らしながら、それでも自分を奮い立たせるようきっぱりと言い放ちました。


「分かりました。お役に立てるかは別として、護衛くらいにはなるかと思います。

お引き受け致します」


そう言うと、ヤモリさんはよくぞ言ったという風体で指をぴいんと鳴らしました。


それから空中に浮き上がり、くるりと一回転して無い壁を伝うようにひたたたたと駆け上がったかと思うと、

するりと本物の壁を抜けて姿を消しました。


「あ、あの、それでどうすればよろしいんでしょう?」


僕がいなくなってしまったヤモリさんに慌てて叫ぶと、半分透き通った白い顔だけが天井からにゅっと突き出して、


「花音に連絡をしておく、わしも一緒に来るけえ。夕方待っとれ」


そう言うとひゅるんと消えてしまったのです。


先ほどまでチカッチ、チカッチしていた蛍光灯はふっと明るさを取り戻し、いつもの静かな駐在所が戻ってきました。


僕はしばらくぼけっとその場に突っ立っていました。


その後、起きた出来事が幻かとほっぺたをつねってみたのです。

意外にもとても痛かったことを覚えています。

いつの間にかテレビドラマも終わっており、外に出るとカエルの合唱が大きく響いていました。


夜の湿気に満ちた泥混じりの匂いが鼻孔をくすぐります。

どうやら、僕は正常みたいです。


しかし、起きた出来事を駐在日誌に書くわけにもいかず、

うんうん悩んだ末に普通の青いノートに書き込むことにしました。


真夜中の訪問者と捜査依頼の詳細。


そして、いきなり現れて消えた女性はどちらかも分からなかったので、取り敢えずこちらのノートへ書き込みました。


そして表紙に黒いマーカーで、別冊・駐在日誌と書いたことでこの日誌は誕生したのです。







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