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地下通路の壁に仕込まれた通信筒は、巧妙な仕掛けで作られていた。竹を何重にも重ね、その間に油紙を挟むことで防水性を持たせ、内部には螺旋状の溝が刻まれている。


「まずは暗号を...」


道三は小さな火口で灯りを取り、懐から和紙を取り出す。特殊な墨で書かれた文字が、灯りに照らされて浮かび上がる。これは「闇文字」と呼ばれる技法で、通常の光では見えない文字を書く秘術だ。


「清吉、新たな発見とは?」


通信筒に文書を仕込みながら、道三は若者に問いかける。


「はい。土蔵の中で見つけた図面の裏に、別の文書が...」


清吉は懐から、新たな写し取りを取り出した。道三は火口の光に照らして、その内容を確認する。


「これは...」


図面の裏に隠されていた文書には、驚くべき内容が記されていた。大筒の設計図は、表向きの目的に過ぎなかったのだ。真の狙いは...


「江戸の地下を...」道三の声が僅かに震える。「探っているというのか」


文書には、江戸の地下水脈と、それに沿って張り巡らされた地下通路の断片的な情報が記されていた。まるで、何かを探しているかのように。


「道三様、この印は」


清吉が指さす箇所には、特殊な合印が記されている。道三はその印を見て、表情を引き締めた。


「かつての...伊賀者の道標か」


通信筒に文書を収めながら、道三は考えを巡らせる。豊臣の残党、特殊な大筒の設計図、そして伊賀流の道標。これらは全て、何かより大きな計画の一部なのではないか。


「仕掛けるぞ」


道三が通信筒の機関を操作すると、中の螺旋状の溝に沿って、筒が回転を始める。これは「転び筒」と呼ばれる仕組みで、文書を地下水脈の流れを利用して送り届ける装置だ。


「次は...」


彼は別の和紙を取り出した。今度は異なる暗号で、同じ内容を記す。一つの重要な情報は、必ず複数の経路で送ることが鉄則だった。


その時、通路の奥から微かな音が聞こえた。


「足音です」清吉が囁く。「しかし...」


道三も耳を澄ます。その足音には、特殊な意味が込められていた。いわゆる「歩み足」と呼ばれる通信方法だ。足音のリズムによって、メッセージを伝える技術。


「...味方か」


足音が近づくにつれ、その正体が明らかになってくる。町奉行所の配下、白井の使者に違いない。しかし...


「待て」道三は清吉の腕を掴んで止めた。「足音が...」


通常の歩み足には無い、微妙な乱れがある。まるで...


「囮か!」


[続く...]

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