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ギネスに挑戦だ!

 二つ並んで倒れて行く――進んでゆくドミノ倒し。

 黒いドミノと赤いドミノが手を取り合うように。


 最初はまず、お互いの進路を交差させる。腕と腕を絡めるように。

 あるいは足を絡めるように。

 並んで進んでいたはずの二つのラインが、混ざり合う。


 しかし、二つのラインは併走状態に戻る。

 しかし先ほどと同じとは行かなかった。


 赤いドミノが描くラインが、微妙に乱れている。


 二つのラインは今度はアーチ状の小道具を利用して、再び交差しながら、そしてさらに複雑に交差させてゆく。赤いドミノはさらに乱れてゆくが、それでもなんとかラインを保っていた。


 しかし休憩は許されなかったようだ。


 二つのラインは今度は階段を駆け上がってゆく。

 精巧に並べられたこともあって、その進行速度に緩みは見えない。


 いや、赤いドミノが少しばかり先行しているのだろうか?

 まるで黒いドミノから逃げるようにも見える。


 そして、そんなラインのチェイスが新たな情動を刺激したのは必然であったのだろう。

 逃げる赤いドミノ。追う黒いドミノ。


 そんな関係性を見出してしまえば、それが終わり。

 いや始まり。


 嗜虐心を抱えながら、二つのラインが交差する瞬間を待つ。

 何しろラインが向かう先では、再びの交差が待ち受けていたのだから。


 赤いドミノは乱れながらも、なんとかラインを維持しつつ、宙に跳びだした。

 今度はそういった仕掛けだ。


 ワイヤーで脱出するような赤いドミノ。

 それを再び追う、黒いドミノ。

 この関係性は維持されたままだ。


 無事、再び進み始めたライン。

 それはつまり、赤いドミノが再び黒いドミノに追いついてしまうと言うこと。


 二つのラインは再び交差するが、赤いドミノが描くラインは途切れ途切れにも見える。


 すると黒のドミノが、今度は赤いドミノを慈しむようにラインを復活させる。

 同時に二つのラインは、今度は円を描く螺旋階段を登る。


 競うわけでもなく。

 協調するわけでもなく。


 しかしアトランダムな動きを見せる二つのラインは、それでも尚、美しかった。

 螺旋階段を登ることによって、破壊をまき散らしていたとしても。


 同時に頂上にたどり着いたラインは、それぞれドミノを落下させる。

 落ちたドミノは――再びラインを始動させた。


 それは惰性であるのか。

 はたまた、この時間が終わることをもったいなく思う感情があるからなのか。


 そこで二つのラインは完全に別れる。

 しかしそれで終了というわけでは無い。


 隙間無く並べられた仕掛けに突入すると、倒れると同時にそこに現れるのはヒエロニムス・ボッスの「快楽の園」。


 赤いドミノが描き出すのは、左翼のエデンの園。

 黒いドミノは右翼の地獄。


 正反対のモチーフのようで、この二つは密接に関係している。

 離れているように見えて、それぞれのドミノは結局同じものを描いているのだ。


 いや、二つのドミノに距離は最初から関係無かったのだろう。


 「快楽の園」はもちろん、左翼と右翼だけで完成する絵では無い。

 ラインはそのまま中央を描き出す。


 中央に描かれているのは猥雑な、そして不可思議な事象。

 今度はそれを協力して描き出す、二つのライン。


 そのままラインは協力して「快楽の園」を完成させるのかと思われたが――


 突然に、絵は乱れ始めてしまう。

 地獄からやって来た――つまりは黒のドミノが乱れ始めたのだ。


 そして今度こそ、赤のドミノが怯えたように右往左往する。

 しかし黒のドミノは獣のように躍動し、赤のドミノもまたそれに対抗するように躍動する。


 もう「快楽の園」の完成は望めないだろう。


 現れたのはまったくの混沌。

 それでも尚、赤のドミノと黒のドミノは絡み合う。


 お互いを求めるように。

 いっその事、それぞれがそれぞれに染まることを望むように。


 だが、終わりの時は来た。


 赤と黒。


 二つの脈動は終わり、僅かに触れあい、奏でるドミノの音が虚ろに響いた……

ドミノ倒しでギネス記録に挑戦って番組が定期的にあった気がするんですよ。

それに、色んなギネス記録に挑戦する番組も。今回検索かけたんですが引っかかりそうもないので諦めました。


今回、○回しなければ出られない部屋風に想像して下さい。

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