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そういう風に出来ている

 この場合の「同時」はもちろん同時に“達する”という奴でね。


 エクスタシー、とか、アクメ、とか呼ばれる状態。

 それに男女同時にいたる事が選ばれる理由なんだけど……まぁ、いないんだよね。


 女性がどれだけ演技をしているのか、浮き彫りにされた感じだ。

 頑張れ、野郎共。


 実はこの条件については、見直しが必要なんじゃ無いかとか議論になっている。

 本番でも、この「同時」は使うつもりだから、実はかなりマズい。


 でも、今は二人への説明が最優先だな。

 ムータンも、クッションをフカフカさせながら、その辺りを懸命に説明している。


「それじゃ、結局覗いてたって事じゃ無い!!」


 マイが怒り出した。

 これはこれで説明が上手くいったということなんだろう。


 この辺りのマニュアルはちゃんと作り込んでるから大丈夫……のはずだ。


「いえいえ。そういうことが起こったと魔法で察知して、そこから我々が声を掛けさせていただくわけです。監視してるわけじゃないですよ」

「魔法? そんなこと……」


 マイが確認するように、タケルに目を遣った。

 タケルは難しそうな表情を浮かべている。


 ようし。


 ここで、自分が練り上げた決め台詞をお願いムータン!


「いいですか。『高度に発達した魔法は科学と見分けが付かない。』んですよ!」


 決まった……(ドヤ顔)


 いやぁ、こっちの世界は良い言葉があるね。

 そこ。

 パクリとか言わない。


「ああ、ああ……ええと、『タケルか童貞かどうかは、観測するまではっきりしない』みたいなことね」


 なにそれ!?

 何だか、凄く深いことを言ってる気がする!


「童貞だよ! いや違う!! 童貞じゃないよ!」


 タケルが何か叫んでる。それ以上に混乱してるね。

 いやそれは違うんだろうけど、それよりもその言い方はいったいどういう考え方で出てきたんだ?


「それが本当かどうかは、あたしだけが知ってるわけよ」

「待ってくれ。それはムータンもわかるだろ?」

「……そう言われましても、私どもは反応があったから声を掛けさせていただいただけで、実際の所は確かにマイさんじゃないとわからないですし」


 確かに……それはそうか。

 覗いてたわけでも無いしな。


 探知魔法(センス・マジック)がこっちの世界でどうなるのかははっきりとはわからないわけだし。


「はは~ん、確かに覗いていたわけじゃ無いみたいね」


 自分たちが、確信を持てないうちにマイの方が“覗いていない”というこちらの主張を認めてくれたようだ。

 まさかこんな展開になるとは……でも、これはこれでありだな。


 だから、童貞かどうかははっきりしない、みたいな言葉の由来を探さなくてはな。


 ――「高度に発達した科学は魔法と見分けが付かない」


 と、同系統の言葉だと思うんだけど。


「それでは、ご協力いただけると言うことでよろしいでしょうか? お礼としては――」


 そうだね。

 生命の加護がないものは送れることは見せておかないと。


 うん、ムータン。良い手際だ。


「――そちらの冷却器の中をご覧下さい。赤い石があると思うんですが、こちらの世界ではルビーという名前のようですね」

「これをくれるの?」


 冷却器を開けたタケルが目を輝かせながら、尋ねてくる。

 奮発してかなり大きめの石を用意したからな。

 いい感じの食いつきだ。


 そして、用意してある報酬はこれだけじゃない。


「それはほんの一部です。そういった生命の加護がない物体は送ることが出来ると、まず証明しなければなりませんから」

「ああ、そうか。じゃあ、このテストプレイに最後まで付き合えば――」


「そうですそうです。実際にはクリアしていただければ、という事になるかと思います。その方がお二人にも達成感を楽しんでいただけるのではないかと考えております」


 ようし、ムータン。

 特別手当だ!


「こんなのじゃダメよ」


 ダメだ、ムータン。

 給与カットだ!


 ……って、マイは何か不満があるみたいだけど。


「あ、あの、なんか不手際がございましたか?」

「不手際といえばそうだけど、やっぱり違う世界の人と言うべきか、世間知らずと言うべきか」


 何だか、厳しいことを言われてしまった。

 ムータン、ちゃんと理由を聞いて!


「こんなの売ってお金にするにしても、あっという間に足が付くのよ。どこから持って来たのか疑われるわ。そういう面倒ごとを全然予想してないでしょ?」


 え?

 ああ、そういう仕組みになってるのか……これは迂闊だったかも知れない。


 しかし、マイから指摘されるとは予想外だ。

 マイの方が現実的なんだな。


 いや、それよりも問題は――


「……では、ご協力願えませんか?」


 うん、そこが問題だな。

 ややこしい手続きが……


「それはやる」


 ところがマイは参加を表明してくれた。

 そのままクッション(ムータン)に唇を押しつける。


「――タケルがやる気なんだもん。仕方ないでしょ」


 ああ、そういうことね。

 そしてマイはもう一度、クッションをベッドに叩きつけた。


「その代わり報酬はもう一度考え直すこと。タケルもそれで良いわね? 宝石なんか貰っても、甘くともなんともないから」

「要するに現金か……いや……それ僕も考えても良い?」


 それはその方がこっちも助かるな。

 ムータン、頷いてあげて。


 ……クッションを二つ折りにしてるけど、これで通じるのかな?


 とにかくこんな感じで、我々カルバッハ商会のテストプレイは開始されたわけだ。

 ちなみに、二人がラブホテル「紗々」に乗り込む経緯については、あとから付け足してみた。


 二人から、そういった話をムータンが聞き出して。

 これから先も、多分話が前後するだろうけど、そこは許して欲しい。

実際、金貨とか宝石とかもらってもどうしようも無いと思うんですよね。

何をもらおうとするのかは、引っ張る予定です。というかオチに近くなるのかな?


これで、プロローグみたいな部分は終わりです。

次は、想像力が必要な章です。

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