バナナはこう使う
まずは黄緑色の袋からとりだしてみよう。
赤みを帯びた水蜜桃。
その二つが白いフルーツキャップに包まれている。
フルーツキャップのサイズが合っていないのか、半ば以上、水蜜桃が溢れ出していた。
触れてみれば、そのあまりの柔らかさ。
今にも、ホロホロと崩れていくかのよう。
しかし、フルーツキャップの上からその感触を味わううちに、その柔らかさに変化がみられる。
どこか堅さも感じられた感触を包み込むようにして、柔らかさはさらに進化する。
途端。
ついにフルーツキャップから水蜜桃がまろびでる。
そして二つ並べて、その柔らかさを競わせるように。
その柔らかさを堪能するように。
それでいて決して傷つけないように。
優しく。大事に。
その柔らかさに溺れるように。
そこから満を持して、バナナに取りかかる。
そのバナナはまだ青い部分を残していた。
だからこそ、二房のバナナは未だ繋がったまま。
堅さの残る二房のバナナを、外側に開く――開こうとする。
そうしなければ食べることが出来ない。
だから抵抗されても、こればかりは断固として行わなければならない。
しかしあくまで慎重に。そして優しく。
バナナに取りかかっている間も、水蜜桃への気配りも忘れずに。
もちろんバナナもまた慎重に扱わなくてはならない。
曲線をなぞるように、上から下まで。
いっそのこと、舌先で舐めるように上から下まで。
青さそのものを讃えるように。
そこまで手を掛けることで、ついに二房のバナナがゆっくりと外側に開いてゆく。
しかし、ここからはさらに慎重に。
二房のバナナの接合点を、指で撫でてゆく。
この二房を分かつわけにはいかないのだ。
しかし、思い切って分かちたいと思わせるような「誘惑」がそこにある。
匂い立つ、甘い香り。
二つの水蜜桃と、二房のバナナ。
立ち上がって、二揃いを並べてみよう。
見下ろしてみよう。
何という征服感を味わうことが出来るのか。
そして外側に開いた二房のバナナの間に、差し込まれるデラウェア。
二房のバナナの合間、房の大元に擦り付けるようにして。
デラウェアの皮がむける。そして、したたり落ちる果汁。
むき出しにされた、半透明の果肉が踊る。
それにつれて水蜜桃、それに二房のバナナも踊る。
いや踊っているのは、それらのフルーツが載せられたテーブルごとであったのだろう。
弾む。水蜜桃が。
軋んだ音を立てる。二房のバナナとテーブルが。
それは破壊であり同時に創造であった。
ついにデラウェアの皮は完全にむけ、果汁と共に二房のバナナの間に射出される。
同時に、水蜜桃は「るんっ!」と震え、二房のバナナはその曲線を逆にするかのようにのけぞる。
……こうしてフルーツ達の競演は終わった。
想像せよ(加藤機関風)