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恐らく、じっちゃんと血縁というのは妄想

 ラブホテル「紗々」の308号室。

 二人は改めてこの部屋を取っていた。


 目的は、また倒れるまですること……では無くて、迷宮攻略の準備。

 具体的にはムータンを質問攻めにすること。


「確かに部屋代は助かってるけど。というか、これがないと付き合ってられないわ」

「はい。テストプレイヤーの負担を減らすのは我々の義務ですから」


 今日のマイは、迷宮に乗り込む予定もあるせいだろう。

 いつもと違って、少しは着込んでいる。


 ピンク色の半袖シャツになったぐらいだけど。

 それにスキニージーンズにスニーカーだ。


 ムータンは、変わらずぬいぐるみ。


「これって、本番はどうする予定なの?」

「あ、ご休憩で、料金いただくことになります」

「ふ~ん、その辺りは考えてるんだ」


 ベッドの上に、何やら並べているマイが感心していた。


「な、何か問題がありましたか?」

「別に? ただ、その辺り何も考えてないと、ご褒美も空約束なんじゃないか? って思ったから」


 ……やっぱり、マイは怖いなぁ。

 ウチの経理担当は大丈夫かな?


「それで、ご褒美は考えてくれてるの?」

「……もう少しお時間をいただきたく」


 ムータンが、恨ましげな目でこっちを見ているが、どうしようも無い。

 とっかかりがないんだから。


 そうだ!


 今こそ、無茶振りのチャンスじゃないか?


 ムータンにさっそく指示を出す。


「あ、あの……タケルさん」

「うん、何?」


 タケルは床の上でマイ以上に、色んなものを広げていた。

 何か武器っぽいものとか、よくわからないもの。


 やっぱりTシャツ姿だけど、上からポケットが沢山付いているチョッキを着ている。

 これは便利そうだけど、こっちだと布の強度が危ないかもなぁ。


「上からの質問なんですけど」


 あ、ムータン。

 言っちゃったよ。自分がちょっと気を取られた隙に。


 この抜け目の無さが頼もしい。


「上司って、どこの世界でも厄介なんだな。わかったよ、答えられるものなら」


 いい感じに話が転がったぞ。

 これなら悪役を振られても、問題無い。

 別に損が発生するわけじゃないしな。


「それでは。以前、タケルさんは色んな小説の話をなさっていましたけど」

「したっけ?」

「あれよ。『※※※※※※』とか」


 マイからフォローが飛んだ。

 助かる。


「ああ、あれだと別に色んな本の話じゃ無いよ。どっちも推理小説」


 そうだね。

 ムータンに頷きを返すと同時に、細かく指示を出した。


「そ、それでですね。こっちの世界を勉強するのに、ちょうど良いって上司がいうもので」

「それは……否定出来ないかも」

「とにかくそれで、ご褒美について考えようということになるわけね」


 マイの理解が早くて助かる。


「それで、マンガの方が受け入れやすいので『名探偵コナン』と『金田一少年の事件簿』を読んでるみたいなんですけど――」

「あ!」


 突然、マイが大声を出した。

 え? 何かマズかった? いや文字だけだと、そこから調べるがですね……


「推理小説調べるつもりなら『金田一少年の事件簿』はダメだ。絶対に手を触れるな。あんなものに手を出した瞬間、魂が腐る」


 た、魂が腐る?

 そんなとんでもない呪い(カース)が込められていたのか?


 マイが唇に指を一本立てて、なにかしてる。

 このジェスチャーは……「黙れ」?


「あれは推理小説では決してやってはいけない、トリック丸パクリをやってるんだ。推理小説好きなら手を出しちゃダメだ」


 ああ、そういう……でもパクリってことは大元があるんだ。


「何からパクったんですか?」


 いいぞムータン。

 まさにそれを聞きたかった。


 けれどタケルの答えは――


「言えない」

「え?」

「これがパクリの最大の罪なんだよ。注意しようとしたら、そのままネタバレになるだろ? 結果として、パクった方が大手を振って歩いてしまう」


 確かに……それはそうかも。


「じゃあ、マイさんも?」

「知らない。あたしも無理に知ろうとは思わないけど。ただ『金田一少年の事件簿』は読まないことにしてる。タケルが……ね?」


 でもこれって、今も続いてるんじゃないかな?

 最近のデータから調べていってるんだけど、結構名前見るし。


 つまりはタケルの心配の通りの事が起きてるわけか……と、とにかく触れない方がいいな!


「マンガで知識を得るなら、推理小説にこだわらなくても良いよ。そういうの売りにしてるマンガ、色々あるし」


 タケルも、切り上げるタイミングを計ってくれていたらしい。

 その申し出は確かにありがたいな。


 それはズルじゃないのか? ってマイが言っているが、タケルは異世界相手にそれを言ってもどうしようも無いと言っている。


 是非ともそういう方向で話がまとまって欲しいところだ。


 その後、ムータンが色んなタイトルを聞き出している。

 「僕はコーヒーが飲めない」「ギャラリーフェイク」「王様の仕立て屋」「空のグリフターズ」等々。


 今から調べるのが楽しみだな。


「……これだけ教えてばっかりだと、損をした気分だな。こっちからの質問にも答えてくれるんだろ?」

「は、はい。元々、そういうつもりでした。報酬については満足な答えが出来ませんでしたが」


 うむうむ。

 その調子だムータン。


 ぬいぐるみにも口が動くぐらいは手を入れても良いな。


「それじゃ確認だけど。この迷宮でのレベルアップはどうするつもりなのか聞きたい」

「レベルアップ? え? 強くなるの?」


 ムータンより先に、マイが声をあげてしまった。

 いや……しかしタケルもさすが、って感じだな。


 実際に乗り込む前に、それに気付くんだから。

今回も多少伏せ字はありますが、恐らく問題無いかと。


問題があるのは「金田一少年の事件簿」です。

これは混じりっけ無しに問題しか無いです。

そもそも、元の作者が映像化を断ってるというのに、アニメにしやがってますからね。

でも、それをおおっぴらにやるとトリックが知れ渡りすぎるという二次災害が発生します。

だからこうやって草の根運動をするしか無いんですね。悔しいことに。

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