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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
83/230

56 無職の少年、筋肉付かず

▼10秒で分かる前回までのあらすじ

 是非是非、第一章をお読みいくださいませ

 家以外での、姉さんとの生活。


 一緒に起きて、一緒に寝て。


 そこはまぁ、いつもと変わらないけど。


 起きてる間の行動が異なっている。


 魔装化まそうかの訓練と、身体作り。


 大変なのは当然後者。


 ポーションが無ければ、初日と同じ激痛に苛まれてたはず。


 2日と持ちはしない。


 そのどちらも、成果はあんまり。


 天職の備わっていない僕では、こんなものなのだろう。






「やっぱり、環境が駄目なのかもしれないわね」


「娘よ。突然何を言い出すのだ」



 草と綺麗な鉱石で溢れた場所。


 疲れて倒れた頭を膝に乗せて、姉さんが唐突に話し始めた。


 少し距離を空けて立つグノーシスさんが律儀に応じる。


 なんのかんの言ってるけど、実は仲が良い気がする。



「食事のことよ。身体を鍛えたって、食事の量が限られてるんじゃ、身体も育たないんじゃない?」


「……娘は十二分に育ったように思うが」


「ちょっと、何処見て言ってんのよ」


「別段、他意はない」


「いや、そりゃまぁ、アタシは育ったかもしれないけど。それは精霊の性質ゆえでしょ。魔力を吸収できる分、純粋な人族とは違うわよ」


「ならばどうしろと?」


「理想的なのは、外で過ごすことなんでしょうけどね」


「身体を鍛えるだけならばともかく、戦闘は外では無理だな」


「あー、やっぱり?」


たちまちの内に周囲が崩壊することだろう」


「個人的には、今のままの弟君が好きなんだけどねー」



 サワサワ。


 優しく髪を撫でつけられる。


 精霊の住処や世界樹だと、食事の量は少なく済む。


 けどその所為で、成長が妨げられているってことかな?


 賢姉けんしさんが小さいのは……住んでる場所が違うから別の理由か。


 なら、妹ちゃんの方はどうだろう。


 妹ちゃんも小さいと思うけど、お兄さんやご両親はどうだったかな。


 ドクン。


 思い浮かべた言葉に反応し、心臓が強く脈打って痛みを訴えてくる。



「……本当に妙な関係ではないのだろうな?」


「はあぁ⁉ 一体、何をそんなに疑ってるのよ」


「どうにも接し方が過剰ではないか?」


「姉弟なんだから、別に普通よ、ふ・つ・う」


「……そういうものか?」


「ただし、すっごく仲がいいってだけで。ねー、弟君」



 ワシャワシャワシャワシャ。


 髪がぐしゃぐしゃにされる。



「姉さん、痛いです」


「あ、御免御免。つい気持ちが入り過ぎちゃったわ」



 力加減が元に戻る。



「世話を焼いてると言うより、迷惑を掛けているように見えるがな」


「そんなことないわよ。食事は……弟君が作ってくれるわね。掃除……もそうね。洗濯はさせてくれないし」


「娘が世話を掛けるな」


「いえ。もう慣れました」


「ちょっと⁉ アタシは……そう、弟君のお世話全般をしてるわ!」


「どうしてこうも愚かな娘になってしまったのか」


「酷くない⁉」



 最初のころに比べて、姉さんたちが良く話すようになった気がする。


 まだ偶に喧嘩まで発展することもあるけど。


 大抵は口喧嘩未満で治まってる。


 あと、グノーシスさんの態度が柔らかくなった気も――。



「休憩は終いだ。続けるぞ」



 するような、しないような。


 どうだろう。






 食事の話が本当かは分からない。


 けど、全然筋肉が付く感じがしない。


 毎日毎日、こんなにも動いて、全身痛い思いをしてるのに。


 緑色の泉に浸かりながら、身体を触って確かめる。


 硬く……は無いね。



「どうしたの? まだ痛む?」


「いえ。筋肉が少しは付いたのかなって」


「弟君がムキムキになるのは嫌よ」


「そこまでは目指してませんけど」



 すぐそばには姉さんと、頭を淵に乗せて目を細めているブラックドッグが居た。


 こうして目に見える変化がまるでないと、どうにも不安が募る。



「筋肉はともかく、身体は動きに慣れてきてると思うわよ」


「そう、ですか?」


「少しずつだけどね。母は0か10かの考え方だから、ちょっと変わったぐらいじゃ、何も言わないでしょうけど」



 ドクン。


 言葉に反応して、心臓が強く脈打つ。


 じゃあ、グノーシスさんに認められるには、姉さんみたいな身体にならないと駄目なのかな。



「? 今度はお姉ちゃんをジッと見て、どうしての?」


「いえ、道のりは険しく遠いみたいです」


「???」



 筋肉の権化、は流石に言い過ぎだろうけど。


 りきんだ姉さんの筋肉は、石みたいに硬い。


 それに比べて、僕はりきんでも指が沈んでしまうほど柔らかい。



「ナニナニ? 突っついて欲しいの?」


「違います」


「じゃあ、お姉ちゃんを突っついてみたいとか?」


「それも違います」



 筋肉はどうにも望み薄な気がする。


 焦りと不安。


 いつになれば、アイツに敵うのだろう。


 もっと魔装化まそうかを上手く使えるようになれば、それだけで届くだろうか。


 あの日。


 もう少しで倒せたあの瞬間を、何度も何度も思い出す。


 次の機会がいつ巡ってくるのか。


 相手が弱くなっているはずもない。


 次はもっと大変だろう。


 何か、決め手が欲しい。


 相手を必ず倒せる一撃が。



「姉さんは、相手を絶対倒せる一撃、みたいなのってありますか?」


「えっと、技ってこと?」


「わざ、って何ですか?」


「あれ? 教えてなかったっけ? なら、明日にでも教えてあげるわ」


「お願いします」






本日は本編60話までと、SSを2話投稿します


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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