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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第一章
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SS-18 女騎士の悩み

 聖都から最も近い壁に到着して数日が経過した。


 流石に団長の真似はせず、10日ほど掛かってしまったが。


 そろそろ、別の壁に向かうべき頃合いか。


 ”壁”とは、世界樹群に面した複数の町から形成されている通称だ。


 北西、北東、南東と、聖都や他の町村を囲うように、横長の造りの町が点在している。


 魔族の侵攻に対抗するための、人族の盾であり最前線。


 ……となる予定の場所。


 現在は世界樹群があるため、散発的な魔物との戦闘と、騎士の調練が主だった利用目的だ。


 騎士団の多くが、この壁に配備されている。


 当しか、人が増えれば問題も増えるわけで。


 加えて、馴れは行動の精度を下げもする。


 団長が配属されていたのは、そういった事態に備えるためでもあった。


 引き継いだ今は、ワタシの仕事でもある。


 団長の不在で気が緩んでいるのを、ワタシが正さねばなるまい。






 壁の住民の大半が騎士。


 他は装備関係や、薬品関係、飲食関係などが占めている。


 騎士を中心とした町なのだ。


 それを都合良く解釈し、横暴な振る舞いをする騎士の姿が散見された。


 当人も問題ではあるが、他の騎士がいさめないのも問題だ。


 ゆえに、連帯責任として、ひと月の奉仕活動を命じておいた。


 悲しいかな、平和が人を堕落させている。


 そんな思考さえ覚えてしまう。


 壁は複数存在し、常に全てを見回ることは叶わない。


 指導者不足。


 常に付きまとう悩みの種。


 身体を鍛えることは容易でも、精神までは行き届いていない。


 騎士の数が増えようとも、その質が下がっている。


 さもなくば、ワタシのような若輩が副団長などに任ぜられようはずもない。


 これは騎士団全体の話。


 聖都の騎士たちもそう。


 言動に乱暴さが目立つようになってきた。


 自身の統率力の無さ。


 その表れなのだとしたら、自身をこそ鍛え直さねばなるまい。






 忘れてはならないことが、もう一つ。


 派遣された主目的でもある、魔族の調査。


 道中(しか)り、周辺では目撃情報すら得られなかった。


 そもそも、魔族は世界樹群の外側に棲んでいるはず。


 越えられないからこそ、ここ200年余りの平和が保たれていた。


 そう、越えられないはずなのだ。


 だというのに、どのような手段を用いてか、聖都に現れてみせた。


 すぐに思い付く可能性は2つ。


 世界樹群の内側に、元々潜伏していた個体。


 もしくは、何らかの抜け道が存在しているか。


 その両方で怪しいと目されるのはダンジョン。


 世界樹群の内側のダンジョンは、全て把握済みのはず。


 未発見の箇所があるのか、内部に隠し部屋でも存在しているのか。


 どちらにしろ、足を運んでみるしかあるまい。






 近場のダンジョンをリストアップさせる。


 すると該当するのは2つあった。


 どちらも小規模とのこと。


 朝から向かえば日帰りできる距離だが。


 期待値はかなり低い。


 何故ならば、騎士の演習として利用している場所だったからだ。


 魔族はいないが魔物はいる。


 ダンジョン内部からは、魔物が湧いて来る。


 下手に封鎖して放置し続けるよりかは、有効利用しようという試みらしい。


 実戦に勝る訓練なし。


 実際、警邏などよりも、騎士たちのやる気は高い。


 が、そんな場所では、流石に魔族が潜伏しているとは考え難い。


 時間は有限。


 万が一と言うこともあり得るが、演習の際にくまなく探索させれば事足りる。


 ならば、次の壁へと向かい、普段立ち入ることのないダンジョンを探す方が余程に有意義というもの。


 騎士たちに規律を守るよう、強く言い聞かせておく。


 それと共に、住民たちへも指示を出す。


 騎士の狼藉があった場合、ワタシのところか、聖都へ連絡するように、と。


 懸念はあるが、他の壁とて放置はできない。


 思考を切り替える。


 まずは移動の準備を整えなければ。






本日はSSをあと3話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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