SS-17 スライムは精霊と戯れる
トモダチと遊びたい。
あと、リンゴも食べたい。
いつものように、お願いしに行く。
『ソト、デタイ』
「――む? 何じゃ、また其方か」
葉っぱがいっぱいの場所に居る、葉っぱのセイレイ。
服、着てない。
葉っぱだけでダイジョブ?
ちょっと心配。
「――生憎と、みな不在じゃぞ」
『トモダチ、ドコ?』
「――世界樹の外じゃ。先に言うておくが、そちらへは出さぬぞ」
『トモダチ、アエナイ?』
「――そうじゃな。帰って来よるまで、待つしかあるまいて」
ションボリ。
寂しいよう。
あ、でもまだ、アレがあるかも。
『ソト、イク』
「――駄目じゃと言うておろう」
『オウチ』
「――ふむ?」
『リンゴ、タベル』
「――もしやとは思うが、留守中に食べ物を漁る積もりではあるまいな」
『ダイスキ』
「――意地汚いにも程があるわい。自重せい」
外に出してはくれないみたい。
ザンネン。
トモダチには会えないし、リンゴは食べれそうにない。
どうしよう。
「――大人しゅうしておれ。帰って来たならば、知らせてやるゆえな」
『ヒマ』
「――コロポックルと戯れておれば良かろう」
『アソンデ』
「――妾と戯れるつもりか?」
『ヒマ、チガウ?』
「――忙しくはないが、構ってやる理由もない」
『ケチンボ』
「――これ、少しは敬わんか」
『ヒ~マ~』
あの緑の丸いのは、すぐに飛んじゃう。
ヒキョウ。
偶には、違う相手と遊びたい。
ポヨンポヨン。
足元を跳ね回る。
「――己の欲望に忠実なヤツじゃのう。やれやれ、付き纏われても敵わんか」
『アソブ?』
「――仕様の無い。相手をしてやろう」
『サスガ、キニイッタ!』
「――調子の良いヤツめ。して、何をするのじゃ。余り動くのは好まんぞ」
『ウゴク、キライ?』
「――そうじゃな。其方は逆に、動くのが好みじゃろう?」
『ダナ』
「――ノームのような喋りは止さぬか。……しかし、どうしたものかのう」
目を閉じて動かなくなった。
あれ?
遊んでくれるんじゃないの?
ペチペチ。
脚に体当たりしてみる。
「――ええい、落ち着きの無いヤツめが。ならば、同胞が存分に相手してやろう」
『ワオ⁉』
草がグングン伸びて、体を持ち上げていく。
と思ったら、今度は斜めに傾いた。
コロコロ転がる。
草が高さや向きを変え、色んな方向へ転がされる。
スゴイスゴイ!
『グルグル』
「――カカカッ。どうじゃ、目が回ってしもうたか? これで多少は懲りて…………はおらんのか」
『ラクチン』
ワンコに打ち上げられるのとは、また違う感覚。
これは……そう、オフロ!
プカプカ浮いてる感じが近い。
『モット、モット!』
「――見かけによらず、意外と胆力があるようじゃな。ならば、次はこうじゃ」
草の動きが止まる。
もう終わり?
シュルシュル。
今度は壁から蔦が伸びてきた。
壁から壁へ。
張り巡らされていく。
「――どうじゃ、跳ねるのが好きじゃろう? 存分に堪能するが良いわ」
オォゥ。
もうセイレイの姿が見えないほど、蔦だらけになっちゃった。
試しに近くの蔦に跳び乗ってみる。
『チョット、ムズカシイ?』
グラグラ揺れて、すぐに落ちちゃった。
良く見ると、太さが違ったりするみたい。
細いのは難しい。
あと、長く乗ってるのも難しいのか。
『ミキッタ!』
蔦に乗ったらすぐに跳躍。
それを繰り返せば、落ちずに済む。
「――ほう、器用なものじゃな。……しかし、足場が動かぬとは限らぬぞ?」
ピンと張ってた蔦が突然緩む。
『ナントォ⁉』
ポテッ。
あれま、また落ちちゃった。
「――カカカッ。これは流石に難易度が高過ぎたかのう」
『マダマダ!』
跳ねるのを、乗った直後じゃなく、少し遅らせてみる。
けど、やっぱり上手くいかないことが多くなった。
何度も落ちちゃう。
『ズルいポー! 混ぜて欲しいポー!』
『新しい遊びコロ?』
『ドリアード様、呼んで欲しかったポー』
いつの間にか、緑の丸いのも沢山来ていた。
フヨフヨ飛んで、乗ったり落ちたりしてる。
「――ちと大規模にやり過ぎたか。じゃがまぁ、偶には良いか」
『トブ、ヒキョウ!』
『ドリアード様と遊んでる方が、よっぽどだポー』
『上には来れないコロ? 残念だったポー』
『乗るのは難しいポー』
どんどん頭上に集まって来る。
やっと遊んで貰えたのに。
横入りとかヒキョウ!
けど、まだ上手く乗れないみたい。
落ちて来るのを足場に、更に上を目指す。
『踏まれたポー』
『みんなで落としてやるポー』
「――これこれ、仲良う遊ばんか。できぬなら終いじゃ」
『それは困るポー』
『一時休戦するポー』
『スキアリ!』
『また踏まれたポー』
これはこれで楽しい。
当分は、セイレイに遊んで貰おう。
でも、早くトモダチに会いたいな。
リンゴも食べたい。
本日はSSをあと4話投稿します。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。




