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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第一章
39/230

29 無職の少年、思い出して

 仰向けで見える空は、青さを失い始めている。


 気が付けばベッドに横たわっていた。


 直前の記憶が無い。


 いつ、どうやって寝たんだったか。



『お目覚めコロ?』



 視界にフワフワと入って来たのは、緑色の球体。



「僕、何で寝てたんだろ」


『覚えて無いコロ? ダンジョンで気絶しちゃったポー』



 気絶?


 いやそれよりも、ダンジョンって。



「弟君、起きたー?」


「あ、はーい」



 階下から聞こえた声に返事をする。


 すぐさま、階段を上って来る足音。



「気分はどう?」



 問い掛けに、少し自分の様子を確かめる。


 頭がぼんやりとしている以外は、問題はなさそうかな。



「多分、大丈夫そうです」


「なんだか不安な答えね。もう少し横になってなさい」



 ベッドのそばまで来た姉さんが、頭をやさしく撫でてくれる。


 目を瞑って、再びの眠りにつきたくなってくる。


 けど、気になることがあった。



「何があったんですか?」


「弟君はどこまで覚えてるの?」



 問い掛けに問い掛けが返る。


 何をしていたんだったか。


 散り散りになった欠片を拾い集めるように。


 記憶を寄せ集める。


 ダンジョン、緑、黒、音、恐怖、揺れ。


 連なっているような、いないような。


 漠然とした印象だけが浮かぶ。



「ダンジョンに行っていたんですよね?」


「そうね」


「何か、怖い思いをしたような気がします」


「それも間違ってないわね」



 後は、何だったか。


 よく思い出せない。



「弟君たちを鍛える目的で、ケンタウロスの集落から程近いダンジョンに向かったのよ」



 あ、黒い建物を見たような気がする。



「入り口の封鎖を解き、すぐ地下への階段があって」



 淡い緑色の光を幻視する。



「通路の先の部屋にアントの大群が居たの。弟君たちも襲われてしまったわ」



 耳に残る不快な音。


 そして恐怖。



「弟君が魔装化まそうかを使って、どうにか無事に切り抜けたんだけど、今度は部屋の床が抜けて落ちちゃったわ」



 その先でも怖い思いをした気がする。



「そこにもやっぱりアントの大群。そしてマザーも居たわね。ダンジョンの外に出た魔物を放置はできないから全滅させたわ」



 暗闇の中、激しい揺れに見舞われたっけ。



「どうにかダンジョンに戻って、他に外へと繋がる穴が空いてないか、探して奥へと進んだの」



 暗い通路をみんなで歩いた。



「その先の部屋でのことね。アタシが魔物をどうするか弟君に問い掛けた後、気絶しちゃったのよ」



 その部分の記憶が、どうにもよく思い出せない。



「何て答えたんでしたっけ」


「見逃すようにって」



 魔物を倒したいとは思わない。


 なら、そう答えたのかもしれない。



「結局、どうなったんですか?」


「気絶した弟君を抱えて、更に奥へと進んだわ。穴は転移魔法陣の部屋に空いていた。外に出た魔物は倒して、穴を塞いで帰って来たってわけ」


「じゃあ、魔物は全部……?」


「いいえ。ダンジョンの中に残っていたアントたちは、そのまま放置したわ。襲っても来なかったしね」



 何かが、できたんだろうか。


 ただただ魔物が倒されただけで。


 強くなれた気は当然しない。



「初めてのダンジョンはどうだった?」


「怖かったです」


「でしょうね。予定では戦い方なんかも教えてあげるつもりだったんだけどね」


「戦いも怖いです」


「それが普通よ。何もおかしいことはないわ」


「姉さんは? 怖かったですか?」


「ダンジョンも魔物も怖くはなかったわ。ただ、弟君の身に危険が及んだことだけが、凄く怖かったわ」



 頭を撫でる手が止められ、額と額が合わさる。



「何度も怖い目に遭わせて御免ね。これじゃあ、お姉ちゃん失格だわ」


「そんなことないよ!」


「弟君?」


「お姉ちゃんはいつだって守ってくれてる。僕が、僕が弱いのがいけないんだよ」



 僕に力が無いから。


 僕に天職が無いから。


 だから、誰も何も守れやしないんだ。


 悔しい。


 何で、こんなにも弱いんだろう。



「お姉ちゃんって、また呼んでくれたね」


「ッ⁉」



 恥ずかしさで顔に熱が集まる。


 ずっと姉さんって呼ぶようにしてたのに。



「弟くぅ~ん! だ~い好きよ~!!!」


「え、いや、ちょっと待って――ぎゃあああぁぁぁーーーーーッ⁉」



 感極まった姉さんに抱きしめられる。


 それも手加減を忘れて。


 悲鳴に駆け付けてくれたアルラウネさんに助け出されるまでに、またしても気絶してしまうのだった。






本日は本編30話までと、SSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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