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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
最終章
223/230

SS-61 姉は招かれる

▼10秒で分かる前回までのあらすじ

 ついに最終章

 是非とも第一章からお読みくださいませ

 聖都での一件から一月余りが経過した。


 そして今居る場所こそ、例の塔の大広間。



「何でアタシが呼ばれるわけ」


「それはどう考えても、こっちの台詞でしょ」



 天井やら壁やらに手を加えたらしく、採光が格段に向上し、塔内を明るく照らし出している。


 中央にあった石段は撤去され、代わりに円卓と椅子が用意されていた。


 同席しているのはアルラウネ。



「済まんね。精霊側の代表として参加してもらったんだが。他に適任がいるようなら、次回からは交代してもらって構わんぜ」


「勝手に決められては困ります。変更がある場合、事前にご連絡をいただかねば」



 声を掛けてきたのは、この場の主催者たる元騎士団団長。


 その隣りには、元聖騎士の女性も居る。


 二人が人族側の代表らしい。


 ちなみに、鎧姿ではなく正装だ。



「陛下の貴重な時間を浪費させるとは、何と愚かな連中か」


「大変素晴らしい試みですのよ。提言にしろ、ただの批判はお止めなさい」


「ハッ、申し訳ありません」



 魔族側の代表として、魔王と側近も同席していた。


 やはり、自分たちは場違いに思えてならない。


 ドリアードが来れば良かったのだ。






「あー、コホン。各々、時間を割いてもらって感謝する。この場を設けた理由は他でもない。精霊、魔族、人族とが、今後どう付き合っていくべきかを話し合えればと思ってる」


「僭越ながら、ワタシが書記を務めさせていただきます。終了時に会談の内容を纏めた紙をお配りいたします」



 それは助かる。


 会話の内容をいちいち覚えなくて済むし。



「初めになんだが、今後も定期的にこのような場を設けたいと考えてる。各勢力の現状報告と、他勢力への要望なんかも聞ければありがたい」


「一つ、よろしいかしら」


「おう、構わねぇぜ。何でも言ってくれ」


「会談の場に関してなのですが、毎回こちらになるのかしら」


「別の場所がよかったかい?」


「いえ、そうではなく、例えばですけれど、次回は魔族側で、次々回は精霊側で、という風になさっては如何かと思った次第ですわ」


「ああ、なるほど。つまりは持ち回りってわけか。現状を見知っておくって意味でも、そいつは名案かもしれねぇな。精霊側はどうだい?」


「別に。いいんじゃない」


「待って。帰ってから相談してみるわ。ここでの明言は控えさせて頂戴」



 軽く返答したら、アルラウネが勢いよく遮ってきた。


 どうやらお気に召さなかったらしい。



「分かった。場所に関しては保留としとこう。定期的に実施するってのには反対かい?」


「そちらに関しては異論無いわ」


「なら、終了時に次回開催の時期に関して話し合うとしよう」



 異論が出ないことを確認し、話が続けられる。



「てなわけで、まずは人族の現状報告からさせてもらう」






 教会と騎士団の廃止。


 それに伴い、新たに人族を束ねる組織作りの最中なんだそうだ。


 元団長も、単に臨時の代表という立場らしい。


 ひとまずは、元騎士から厳選し、各町村に自警団を配しているとのこと。


 しばらく会えてはいないが、聖女も頑張っていることだろう。


 当面は、内政で手一杯のようだ。


 要望としては、他勢力との交易を行いたいとしていた。


 未だ世界樹の周囲には岩壁があって通行できない。


 それらを撤去させたいのだと思う。


 次に、魔族側の現状が話された。


 世界樹周辺を警戒していた魔族を下がらせ、また、人族領内のダンジョンからも魔物を退かせているようだ。


 余剰戦力を魔界へ送り、向こうでは生き辛い魔物たちを、こちらへと呼び寄せているとのこと。


 魔物の絶対数は、今まで以上に増えると予想される。


 要望は、魔物・魔族に対しての非殺傷。


 これをまま承諾しては危う過ぎる。


 危害を加えられない限り、という条件付きで合意がなされた。


 最後に、アタシたち精霊側。


 精霊シルフの処遇についての説明。


 予想違わず、主に人族側から不安の声が上がった。


 なので、こう返してやった。


 連れてってあげるから、好きに見に来れば、と。


 結果、いずれ折を見て、ということに。


 あとは、残存する世界樹全てに、ドリアードの妹たちが誕生したことを話しておいた。


 もし万が一にも世界樹を攻撃した場合、世界樹の群れが蹂躙するだろうとも。


 要望は、火薬の処理。


 勇者の魔法や魔王の支配も懸念ではあるが、やはりコレかなと。


 鉱山での使用も鑑み、保有上限を設けることに。


 アタシは半分土の精霊でもあるわけだし、鉱山での使用も快く思わないでもないのだが。






「あらかた話し終えたかねぇ。なら最後に、次回の開催時期についてだが、何か意見はあるか?」


「頻繁に集まっても、大して進展は無いんじゃない?」


「そうですわね。毎年……いえ、半年ほどでは如何かしら」


「ま、妥当なところだと思うわ」


「こっちも異論はない。次回は半年後としよう。参加してくれたこと、改めて感謝する。願わくは、次も変わらぬ面々が揃って欲しい」


「では、こちらが今回の議事録となります。内容をご確認ください」



 手渡された紙に目を通し、アルラウネへと手渡す。



「……随分早かったけど、ちゃんと読んだわけ?」


「読んだ読んだ」


「まったくもう」



 こういうことも大事なんだろうけど、やっぱりアタシ向きには思えない。


 次回は誰か別のモノを生贄に……。



「……何を考えてるかぐらいお見通しよ」


「あらそう? なら引き続き頑張ってね」


「なら、次ばボウヤにお願いしようかしら」


「ちょっと! それは卑怯でしょ!」


「半分冗談だけど、同席させるのは悪くない考えに思えるわ」


「けど……」


「もちろん、本人の同意を得た上で、よ。無理強いはしないわ。但し、アナタは無理矢理にでも参加してもらうけど」


「嫌よ。それこそ、賢者のほうがよっぽど向いてると思わない?」


「それも本人が同意したら、の話ね。精々、上手く説得なさい」


「うッ」



 あの子、人見知りだったわよね。


 すっごく嫌がりそう。


 ハァッ、誰か代わってくれないかしら。






本日は本編155話まで投稿します。

なお、本日投稿分をもちまして、本作は完結となります。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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