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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第三章
216/230

146 無職の少年、気掛かり

 未だ塔の内部。


 精霊たちが姿を消し、しばしの時間が経過した。



「……ふぅ、もう大丈夫よ。ありがとうね」


「いえ。お役に立てて何よりです」



 上体を起こそうとするのを、聖女さんと僕で手助けする。



「しっかし、戻って来ないわね」


「……そのようですね。これからどうしたものでしょうか」



 戦闘は一応、終結している。


 まだ、黄色い鎧に対し、団長さんが説得に当たってはいるみたいだけど。


 時折、こちらにまで声が届く。


 死者は二名、共に聖騎士だ。



「留守を預けてたはずの面々が、軒並みこっちに来ちゃってるからねぇ。世界樹の様子も気掛かりなんだけど」


「帰ったらマズいんですかね」


「もしも教皇が──いえ、精霊シルフだけがこの場に戻ってくるなんて状況にでもなったら、魔法以外の攻撃手段を持ってるモノが残っていないと、対処できないでしょうしね」



 なるほど、それを警戒してたのか。


 じゃあ、まだ戦いが終わったとは限らないわけで。



「いつまでもこうしてはいられないし、どこかで見切りをつけないとね」


「提言。最長で夜までとするべき。肉体的にも精神的にも休息は必須」


「塔内では時間が分かりませんね。ワタシが外に出て確認して参りましょう。ついでにお食事やお飲み物など、教会から調達してきます」


「流石に一人だけじゃ、そんなに多くは運べないでしょ。手伝うわ」


「いえ、お気持ちだけで。念の為、戦力は極力分散しないほうが賢明でしょう。こう見えて、力はあるほうですから。ご心配には及びません」



 槍を携え、一人通路へと歩み去ってゆく。


 聖女さんと入れ替わるようにして、アルラウネさんがそばへとやって来た。



「何だか、終わったって実感が湧かないわ」


「それはアタシだって同じよ。気がついたら全部終わってたんだもの」


「これでもう、世界樹が壊されることは無くなるのかしら」


「まだやるべきことは残ってる。この塔の何処かにある火薬ってのを、どうにかしておかないと。お蔭で随分と苦戦させられたわ」


「なら、苦戦してる風だったのは、その所為だったの」


「まあね。技はどれも威力があり過ぎて、どうにも及び腰になっちゃったわ」



 そうだったんだ。


 確かに、姉さんなら塔を破壊するぐらい、訳ないって気がする。



「その点、弟君はすっごく頑張ってくれてたわね」


「そうみたいね。訓練とは見違えたわ」


「いえ、そんな……僕だけじゃ、どうにもできませんでしたし」


『謙遜することはない。友は十二分に頑張っていた』


「アナタ、最近よく喋るようになったわよね。どういう風の吹き回しなのかしら」


『……今までは友の力となることを是としてきた。が、今は共に意思を持って戦っている。その所為だろう』


「ふーん。ま、弟君と仲良くしてくれてる分には構わないけど」


『仲違いなどせぬ』



 そもそも、今まで誰かと喧嘩なんてしたことないけど。



「ブラックドッグが沢山話してくれるようになって、僕も嬉しいよ」



 すり寄ってきて、尻尾をフリフリさせている。


 普段は頼もしかったり格好いいけど、こうしてると可愛い。



「で、何で此処に来てるわけ?」


「え? ああ、そういえばボウヤたちにしか説明してなかったわね。元々、オーガに頼まれてたのよ。あ、妹のほうよ」


「頼まれてたって、どういうことよ」


「あの子も、この日のために頑張ってたってこと」


「じゃあ、ケンタウロスの集落で訓練してたのって、そういうこと?」


「そうね。世界樹の暴走で色々と戦闘があったわけだけど、どれも役に立てなかったって悩んでたわ」



 ……そっか。


 僕だって、大した役には立てなかった。


 けれど、それ以上に、妹ちゃんは悔しい思いをしていたのかな。



「危ない真似するわね」


「それをアンタが言うわけ? 連れてきた責任として、ずっとそばには付いてたわよ。誰かさんとは違ってね」


「うぐッ」


「冗談よ。聞き流しなさい」


「……的確に抉り過ぎ」



 本当に仲がいいんだなぁ。


 それはいいとして、話に上がった妹ちゃんはどうしてるんだろ?


 薄暗い屋内は見通しが効かない。


 離れた場所では、誰が何処に居るかも定かじゃない。


 頼りになるのは声だけだ。



「──馬鹿アニキ!」


「──いてぇ⁉」



 ……ま、まぁ、元気にはしてるっぽい。


 お兄さんと一緒に居るらしいのは、今ので分かった。



「……終わったのよね、これで」


「多分ねぇ~」


「また、平和に過ごせるのかしら」


「当分は大丈夫なんじゃない? 魔王が代替わりした時が問題かしらねぇ」


「……魔王は、どんなだった?」


「どんなって言われても……そうねぇ……」


「断言。優しい。争いを好むたちでないことは、ワタシが保証する」


「はいデス。マオーさんはすっごく優しいデス」


「だそうよ。賢者たちとは、随分と仲良くしてるみたいね。気になるなら、会ってみればいいじゃない」


「……怖いのよ」


「だーかーらー、優しい子だって話──」


「そうじゃない。そうじゃなくて、アナタは知らないのよ。魔物が狂暴化していたころの有様を。そして、それを成したのが他ならぬ魔王だってことを、ね」


「……また、支配されるのが怖い?」


「当然でしょ」



 魔王って、あのデヴィルの女の子だったっけ。


 しはいって何のことなんだろう。






本日は本編150話まで投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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