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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第一章
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15 無職の少年、頼もしき門番

 日が頂点辺りに差し掛かるころ。


 姉さんが言ったように、集落が見えて来た。


 想像よりも遥かに大きい。


 それとも、広いと表現するべきなのかな。


 一箇所を除き、石壁で覆われているみたい。


 向かった先は当然のことながら、その出入口らしき場所。


 でも、門と思しき場所は立ち塞がれていた。



「止まってくださいデス」



 奇妙な恰好をしている。


 上下繋ぎとなっているらしい服は黒色。


 上は二の腕まで、下はスカートが膝までを覆う。


 その上から白い前掛けのような物を着けている。


 あと、頭にも白い布が乗っかってる。


 全てがフリフリ。



「久しぶりね。元気してた?」


「ごーれむちゃんは、いつでも元気デス」



 可愛らしい声が応じる。


 でも、見た目で可愛らしいのは服装だけで。


 姉さんよりも頭一つ分以上は大きい体は、角ばっているうえに灰色をしていた。



「集落に用事があるのよ。通して頂戴」


「えーっと、ここを通りたければ、ワレを倒して行くがよい、デス」


「本当に戦いたい?」


「……たくないデス」



 魔族、なんだよね……?


 この集落には他にも沢山居るってことかな。



「変な子だ!」


「ム、変な子じゃないデス。ごーれむちゃんデス」



 ビシッと指差し、妹ちゃんが告げる。


 即座に否定する声が返ってきた。



「この子は魔力で動く門番、ゴーレムよ」


「ごーれむちゃんデス」


「コホン。ゴーレムのごーれむちゃんよ」



 姉さんが言い直した。


 よく分からないけど、魔族じゃないのかな?


 取り敢えず分かったのは、だいぶ変わってるってこと。



「魔力は足りてる? ついでだし補充してあげるけど」


「ホントデスカ⁉ 満タンでお願いしますデス」


「割と図々しいわね。ほら、出番よアルラウネ」


「は? アンタがやるんじゃないの⁉」


「アタシの魔力が枯渇したら、いざってときに戦えないじゃない。でもアナタの魔力は使い道がないでしょ?」


「そりゃあ、魔法が封じられてるんだから、使い道はないけど……」


「あ、その、無理にとは……デス」


「良いわよ! やるわよ! ほら、手を出しなさい」



 巨体がビクッと震えた。


 恐る恐るといった様子で、ゴツい手を差し出してくる。


 手を重ねると、アルラウネさんの体からモヤみたいなのがフヨフヨしだした。



「クッ、結構キツイわね、これ」


「お、お、お、お、お」


『頑張るポー! ファイトだポー!』


「ほら、コロポックルも応援してくれてるわよ」


「だから……アタシには分からないってぇ……の……ッ!」



 ガクン。


 アルラウネさんが膝を折り、地面にへたり込む。



「み、み……」


「み?」


みなぎって来たあああぁぁぁーーーデス!」



 ゴツい石像が咆哮する。


 ちょっとびっくりした。



「最近アイツは来てないの?」


「もしかして、マスターのことデス?」


「そ。こっちにはちょくちょく顔見せる癖に」



 それって賢姉けんしさんのことかな?


 っと、その前に、アルラウネさんは大丈夫なのかな。



「大丈夫ですか?」


「ボウヤ。ありがと、大丈夫よ」



 手を貸すと、どうにか立ち上がってくれた。


 でもまだフラフラしてる感じ。



「丁度お昼だし、集落で休憩しましょうか」


「賛成。むしろ是非そうして欲しいわ」


「お腹空いたよ~」


「そういや何か食べたいとか言ってたわね。集落にお店なんてあったかしら……」


「エェーッ⁉ 無いの⁉」


「みんな親切だから、頼めば恵んでくれるわよ」



 姉さんが集落へと歩みを進める。


 と、石像が立ち塞がった。



「ここを通りたければ、ワレを倒して行くがよいデス」


「本当にぶっ飛ばすわよ?」


「ヒッ⁉ で、でも、マスターからテンプレは大事って……デス」


「通って良いわよね?」



 姉さんは笑みを浮かべている。


 でも、目は笑ってはいない。



「どうぞデス」



 石像が道を譲る。



「アイツ、次に会ったら文句言ってやんなきゃ」


「手は出さないようにね」


「そこまではしないわよ」


「どうだか。さぁ、行きましょう」


「おっひる! おっひる!」



 みんなに続く。


 石像の横を通り過ぎる間際、軽くお辞儀をしておく。



「あ、どもデス」



 すると石像もお辞儀を返してくれた。


 悪い石像じゃないみたいだけど、変な石像ではあるよね。


 地上って、こんな石像が町や村を守っているものなのかな?


 でも、賢姉けんしさんがどうとか言ってたし、そうでもないのかも。



「ほらほら、弟君。ここは地上なんだから、ボーっとしないの」



 手がギュッと握られる。



「石壁やゴーレムが守っているとは言っても、魔物は空や地中からだって出てくるんだからね」



 そのまま手を引かれ、抱きしめられる。



「お姉ちゃんから離れちゃ駄目。いいわね?」


「はい、分かりました」


「よろしい。じゃ、行きましょ」



 身体は離されても、手は繋がれたまま。


 度々警告される魔物。


 普通なら意思疎通のできない相手。


 でも、僕たちなら可能なはず。


 なのに、凄く敵視してる感じがする。


 スライムやアルラウネさんみたいに、仲良くはできないのかな。


 手を引かれて歩きながら、そんなことを考えていた。






前作でちょろっと匂わせておいたキャラの登場回となりました。

予想されてたかな?

しかし、こんなキャラとは思うまい!

見た目はDQのストーンゴーレムにメイド服着せた感じです!


本日の投稿は以上となります。

次回更新は来週土曜日。

お楽しみに。


【次回予告】

少年たちを鍛えるべく訪れた魔族の集落。

しかし、想定外の事態へと発展してしまう⁉


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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