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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第三章
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SS-58 オーガ兄の闘い②

 大広間へと突入する。


 目配せし合い、姐さんとは逆方向へと跳び退く。


 立つのが困難なほどの暴風が荒れ狂っている。


 ただの戦力外だと思っていた地味子が、魔法を使えるってだけで、こうも違うものとは驚きだ。


 ま、こっちにとっては嬉しい誤算なわけだが。


 さてと、まず狙うべきはジジイ。


 色とりどりの鎧が見える。


 あの一番背の低い青いのがそうか。


 これは奇襲。


 察知されては意味がない。


 闘気や殺気を外には漏らぬよう、内側のみで留め高めてゆく。


 姿勢を限りなく低くし、速さを頼みとして駆け抜ける。


 敵は場所を移動しようと動き始めていた。


 間に合うか?


 と、敵の周囲の床が剥がれ、不自然にぶち当たって行くのが見えた。


 こちらの足場に変化はない。


 風の影響にしちゃ、おかしな光景だ。


 が、まぁ理由はどうあれ、好機には違いねぇ。


 さらに加速。


 団長とやらの鎧を思い出す。


 あの時は技を使っても砕けなかった。


 今回は籠手有りとはいえ、同じ技で挑むのは危うい気がする。


 速度を殺さず、全体重を乗せた一撃を狙う。


 舞う床を意に介さず、這うようにして接近を果たす。


 相手は水の膜らしきものに覆われていた。


 水越しに交差する視線。


 水が邪魔だな。


 未熟な魔法で己を燃やし、僅かでも水に抗ってみせる。


 思い浮かべるのは師匠の姿。



竜翔りゅうしょう -えん-≫



 炎を纏った両の拳を突き出し、勢いのままに激突する。


 ドゴォーン!


 轟音と衝撃。


 相手ごと、石段へと埋まる。


 確かな手応え。


 炎の効果はほぼ見込めなかったが、必殺の衝撃は通ったはず。


 相手が動かないことを確認し、瓦礫から這い出す。






 暴風が止んだ。


 散開した聖騎士の一人が、姐さんのほうへと向かって行く。


 この場に残ったのは、赤いのと黄色いの。



「距離を取れ。遠距離で仕留める」


「ええ」



 そういや、女は後回しだったっけか。


 なら、相手すべきは黄色いデカブツ。


 赤いのを無視して、黄色いのへと駆け出す。


 動きは大したことねぇな。


 これなら余裕で追いつける。


 邪魔するように床が隆起し始めた。


 姐さんと似たような能力か?


 余裕で躱して、接近を果たす。


 狙いは腕。


 強く踏み込み、必殺を見舞う。



竜牙りゅうがあぎと



 部位破壊特化の技。


 両の拳で挟み、圧し潰す。



≪召喚≫



 突如、巨大な何かが出現した。


 ガキィーン。


 拳が途中で阻まれる。


 だけに留まらず、籠手が砕け散った。


 んだとぉ⁉


 追撃を諦め、一旦距離を取る。


 隆起する床に加え、火球が降り注いできた。


 赤いのは火を扱えるらしい。


 とにかく回避に専念しつつ、姐さんのほうからは遠ざかるように誘導する。


 そうして、邪魔した何かを視認した。


 両腕に身の丈を超える籠手……いや、縦長の盾を装備している。


 あれも刻印武装とやらなのか?


 見るからに防御特化。


 つまりは、あれに通用すれば、他の連中も打倒できるのだろう。


 しかし、どうしたもんか。


 攻撃を避けつつ、対抗手段を考える。


 籠手が砕けた以上、殴り系は無意味。


 脚甲を頼みに、蹴り技しかねぇか?


 だが、やるならせめて、あの盾を道連れにしねぇとマズい。


 生身では、ちぃとばかし荷が勝ち過ぎる。


 壁際まで退避。


 なるべく速度を殺さずに、相手に一撃を加えねば。


 迎撃すら間に合わぬほどに。






 駆ける。


 回避は最小限に留め、デカブツを目指す。


 と、足が空を切った。


 足場が、無い⁉


 眼下には床の代わりに、闇が広がっていた。


 同じ攻撃ばかりしてたのは、このための伏線かよ⁉


 身体が沈む。


 クソッ、踏み込む瞬間を狙われた。


 ご丁寧に、足場どころか掴まれる場所すら残されてねぇ。


 油断したつもりはなかったが、攻撃に気を取られ過ぎたか。


 ……こりゃあ、また師匠にどやされちまうな。


 闇に溶ける。



「馬鹿アニキぃーーー!」



 寸前、居るはずのない妹の声が聞こえた気がした。


 床スレスレまで傾く視界に、何かが迫ってくるのを捉える。


 反射的に、その何かを掴む。


 すると、凄まじい力で身体が引っ張られた。


 よくよく見ると、掴んだのは矢。



「……ヘッ、妹に助けられてりゃ、世話ねぇな」



 如何なる理由か。


 大広間の出入り口には、見覚えのあり過ぎる妹の姿があった。






 落とし穴を脱して、矢を離す。


 床はもう、足場足り得ない。


 接近するには、新たな足場が必要だ。


 流石に、接触してない石や岩までは操れまい。


 狙うは隆起した床。


 思い切り殴り砕く。


 飛散する破片の群れ。


 足場と言うには頼りないそれらの上を駆ける。



「奈落へ落ちよ」



 突如、周囲を覆う壁。


 破片の下は、先程と同じく闇が広がっている。


 最後の破片を足場に、両足を揃えて大跳躍。


 届け届け届けぇーーーッ!


 ……いや、駄目だ。


 飛距離が足りねぇ。


 姿勢を変える。


 膝を抱え込む。


 急げ急げ急げ急げ急げ!


 焦りつつ、左の脚甲を外す。


 足裏に当て、足場として再度跳び出す。


 援護を妨害したつもりなんだろうが、壁を出したのは余計だったなぁ。


 壁を殴りつける。


 が、砕けない。



「うおッ⁉ マジかよ⁉」



 予想外の硬さに慌てたが、どうにか壁にしがみつく。


 ったく、面倒くせぇ相手だぜ。



竜爪りゅうそう



 宙返りするように、蹴りを見舞う。


 岩壁が縦に切り裂かれる。



「存外にしぶといな」


「たりめぇだ」



 どうにも相性が悪い。


 無駄に時間ばかり食っちまってやがる。


 片足分で仕留められるか……?


 いや、次の機会なんてねぇんだ。


 ここでケリをつける。






本日は本編140話まで投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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