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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第三章
192/230

128 無職の少年、魔法への対処法

「たっだいまぁー」


「おかえりなさい、姉さん」



 いつもと同じ遣り取り。



「失礼。お邪魔する」


「お邪魔します、デス」



 少し違ったのは、続く別の声があったこと。


 それも二つも。


 玄関から姿を現したのは、賢姉けんしさんと石像だったモノ。



「遅くなって御免ねー。けど、ちゃんと連れてきたわよ」


「わざわざ来ていただいてありがとうございます」


「無用。構わない」


「どうぞ、座ってください。今、飲み物をお出ししますから」


「お姉ちゃんも行くわ。手を洗わないとだし」



 席から立ちあがり台所へと向かうと、姉さんもやって来た。


 手狭になるから、お風呂場を使って欲しい。


 何が楽しいのか、背に覆い被さってくる。



「重いです」


「気の所為じゃないかしら。お姉ちゃんは全然重くなんてないはずよ」


「苦言。邪魔をするのは感心しない」


「してませんー。するつもりもないしー」



 してるしてる。


 お茶よりかはお水のほうがいいだろうか。


 石像も飲むのかな?


 一応、出すだけ出しておこうか。


 二人と一体分のコップを持って、居間に戻る。



「どうぞ。お水ですが」


「感謝。有難く頂戴する」


「ありがとうデス」



 あ、石像も飲めるらしい。


 以前に比べて、随分と人に近い姿になってはいるけど。


 フリフリ衣装は、今のほうが断然似合って見える。



「聖女は? 二階に居る?」


「そのはずです」


「聞こえてるんでしょ。アナタも同席なさい」



 応答までには少しの間があった。



「しかしワタシは」


「いいから、早く。泊められないから、送り届けないといけないんだし」


「……分かりました」



 今でも気まずいんだろう。


 聖女さんは襲撃した側だったんだし。


 足早に降りて来ると、空いてる席へと腰掛けた。



『タクサン、イル』


『ナニカ、ハジマル?』



 その腕にスライムたちを抱えて。






「集まってもらったのは他でもないわ。弟君に助言をお願い」


「急にお呼びたてして済みません。魔法への対処方法について、何か妙案はないでしょうか」


「詳細。情報が不足している。詳しく話して」



 求めに応じて、状況を説明してゆく。


 倒さなければならない相手。


 頑強な鎧や、使用された魔法についてなどを。



「該当。ただし、解決策足り得ない」


「回りくどいっての!」


「善処。勇者の使う光魔法にこそ、対魔法と呼べるモノが存在したと、ご先祖様の手記にはあった」



 ズキン。


 頭が痛む。



「はあぁ? 相手が使えても意味ないじゃない」


正鵠せいこく。だから先にそう言った。魔法による解決策はない」



 そうなのか。


 でも、どうせ魔法が使えないんだし、最初から関係がなかったとも言える。



「他には? 何か思い付かない?」


「思案。すぐに思い付くのは、魔力切れぐらい」


「それぐらいは思い付いてるっての。魔力吸収も鎧に対しては効かないらしいわ」


「熟考。しばし待て」


「もう!」



 何故だか姉さんが怒ってる。



「エルフさん、気を静めるデス」


「……ふぅー。そうね、焦っても仕方がないわよね。御免なさい」


「彼の者の魔法とは、それほどまでに強力なのでしょうか?」


「アタシも直接見たわけじゃないけど、聞いた話だと、勇者はその魔法こそが脅威らしいわよ」



 ズキン。


 頭が痛む。



「えぇっと、どうしてそうと分かるのでしょうか」


「どういう意味?」


「人族には、勇者の魔法なる情報は、特に伝わっておりませんでした」



 ズキン。


 頭が痛む。



「そうなの? ま、こっちは生き証人とかもいるしね」


「もしや、300年前からご存命の方がおられるのですか⁉」


「まあね。それこそブラックドッグや、アナタが抱えてるスライムだってそうよ」


「えぇッ⁉ そ、そんなにご高齢でいらしたのですか⁉」



 スライムを腕から解放し、そっと机に下ろした。



『ゴコウレイ?』


『イミ、フメイ』


「そうねぇ……長生きとか、年寄りとかって意味かしら」


『ピチピチ』


『ヨボヨボ、チガウ』


「ご、御免なさい。失礼なことを申し上げました」


『ユルス!』



 スライムと聖女さんとの力関係が変わったらしい。






「献策。持久戦を提案。人族はエーテルを生成できないはず。対して、こちらにはポーションもエーテルもかなりの蓄えがある」


「なーんか、普通な意見に落ち着いたわね」


「愚問。奇抜とは不安定なもの。定番こそ安定」


「魔力切れを狙うなら、それまでの間は魔法へ対処しなきゃならないわよね。尋ねてるのは、その対処法なんだけど」


「不覚。つまり、話が開始時点まで回帰したのか」


「そうなるわね~」



 気まずい雰囲気が漂う。


 そう簡単に解決しないよね。



「進言。精霊による魔法の再封印」


「大規模なのは世界樹が揃わないと無理みたいよ。小規模なら、上位精霊がその場にいれば可能でしょうけど」



 賢姉けんしさんが何かを言う前に、姉さんが続ける。



「けど、上位精霊はもしもの場合の備え。突入部隊には組み込んで無いわ」


「疑問。万全を期すならば、最高戦力で臨むべき」


「それはそうなんだけどね。精霊の力で制圧しちゃうと、教会に代わって精霊が支配する、みたいになっちゃわない?」


「理解。均衡が崩れれば、今度は魔族との戦いにも発展しかねない」


「そうゆうこと。どの勢力にも関係し得ない精霊でもいればいいんだけどね」


『心当たりならある』


「……え?」



 意外なところから、声が上がった。


 みんなの視線がブラックドッグへと集まる。



『獣の上位精霊だ。好き勝手に世界中を歩き回っている』


「あー、いたわね。すっかり忘れてたわ」


『居場所も分かる』


「……なら、精霊の説得で解決しちゃう感じ?」



 さっきとは異なる気まずさが漂った。






本日は本編130話までと、SSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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