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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第三章
191/230

127 無職の少年、新たな魔装の姿

『ナニカナ?』


『オマチカネ』


「はいはい、大人しくしてなさい」



 アルラウネさんに抱えられたスライムたちが騒いでいる。


 少し距離を空けて、丸い鎧姿の団長さんも居る。


 今日も今日とて、訓練が始まる。



「昨日した話は覚えていますか?」


「はい、もちろんです」


「折角ですし、これから試してみては如何でしょう」


「まだできるか分かりませんけど」


「だからこそですよ。物は試しとも言いますし」



 昨日の話。


 今は受け身だけになっているブラックドッグの意識。


 それを、僕の意識と同じく、ハッキリさせてみるというもの。


 一人と一体が、本当の意味で一緒に戦う。


 可能なのかすら定かじゃない。



「いいじゃねぇか。何の話かは知らねぇが、折角の訓練なんだ。試せるものはどんどん試していけ。危ねぇと判断すりゃ、オレが必ず止めてやるからよ」



 ずっとずっと、ブラックドッグは頑張ってくれていた。


 僕一人じゃ戦えやしない。


 頼るしかない。


 命懸けなのは、僕だけじゃないんだ。


 僕が負ければ、ブラックドッグだって無事では済まない。


 勝たないと。


 強くなるために、できることは全てやる。



「今までより頼ることになっちゃうかもしれない。それでも協力してくれる?」


『無論だ。共に在り共に戦う。かつても今も変わらずに』



 しゃがみ込んでギュッと抱きしめる。


 大事な友達。


 それを僕の都合で戦わせるなんて、間違ってるのかもしれない。


 けれど。


 例えそうなのだとしても。


 勇者を倒さなければ、どこにも進めない。


 ズキン。


 頭が痛む。



「ありがとう。ゴメンね」






「先手は譲ります」



 剣こそ抜いてるものの、その場から動こうとはしない。


 今、試せということなのだろう。


 いつもと同じでは意味がない。


 考えろ。


 ブラックドッグにできることは何か。


 黒霧になったり、吠えたり、引っ掻いたり、噛みついたり、大きくなったり、離れた相手を攻撃したり。


 魔装化まそうかして、それらを使ったことがあっただろうか。


 ブラックドッグと魔装化まそうかは別物と考えていたように思う。


 魔装化まそうかは思ったとおりに、考えたとおりに姿形が変わる。


 イメージする。


 一緒に戦う姿を。


 いつも、一緒に戦ってはくれた。


 でも、そうじゃない。


 僕を手伝ってくれてただけ。


 力を貸してくれてただけなんだ。


 魔装化まそうかして、けどブラックドッグとも一緒にいる状態。


 どうやったらいい。


 2つを1つ、1つで2つ。


 だから、ええっと、つまり……。






魔装化まそうか



 黒霧が纏わり付く。


 イメージするのはいつもの鎧姿ではなく、ブラックドッグの姿。


 魔装化まそうかでブラックドッグを創る。


 それを鎧として着るのだ。


 ……ど、どうかな。



『意識はある。これが望んだ形か』



 聞こえる。


 ブラックドッグの声が。



『共闘を。今こそ共に戦おう』



 うん。


 戦って、勝つんだ。



「鎧……ではあるのでしょうか。頭は犬で体は人。最初に見た姿に似ていますね」



 自分の身体を見回してみる。


 全身真っ黒。


 いつもより鎧が薄い。


 うわ、指先が一回り大きいし、尖ってて痛そう。


 足は靴じゃなくて、指先が分かれてる上に、こっちも尖ってる。


 あれ?


 脚の間に何か見える。


 背後を覗くと、尻尾が生えてた。


 あ、何か動かせそうかも。


 ピョコピョコ。



『尻尾の動作は受け持とう』


「うん、じゃあお願いするよ」



 改めて手を見てみる。


 この爪、短剣持つには邪魔だなぁ。



『仕舞えばよかろう』



 あ、そっか。


 普通の手をイメージしてやれば、すぐに変化した。


 具現化した短剣も、ちゃんと握れる。


 なんだろう、この感じ。


 身体がむず痒いような。


 思いっきり動き回りたいような。


 ワクワク、してる?


 これで何ができるのか、試してみたい。



「やってみよう」


『ああ。それと、声に出さずとも考えは伝わる』


「そ、そうなんだね」



 会話しようとすると、つい声が出ちゃう。


 確かに、戦闘中に喋ってられないもんね。


 じゃあ改めて、行くよ!


 双剣を手に、聖女さんへと向かう。






「逆に動きが悪くなりましたね」


「あぅ」



 訓練を終えての、聖女さんからの一言。


 自分の身体が自分のモノじゃないみたい。


 そんな感覚だった。


 僕の意思とは別に身体が動くという、その違和感。


 想像以上に難しい。



「察するに、身体の主導権争いをしている感じでしょうか。反応速度の違いが、悪い影響として出てしまってますね」



 的確に分析されてるし。



「しかしながら、身体能力は向上していたように思います。訓練を重ねれば、自然な動作ができるようになるかもしれません」


「二人共、お疲れさん。いやはや、中々どうして。嬢ちゃんはこう言ってるが、オレは良かったと思ってるぜ」


「団長?」


「手練れであればあるほど、動きの癖を読む。相手の動きを予想して動くもんだ。その点、さっきの動きは理に適ってる」


「お言葉ですが──」


「待て待て。何も今のままでいいとは思っちゃいねぇさ。ただな、経験を積むにしろ、良さは無くすなってこった」


「良さ、ですか」


「ああ。時折見せた、動物的な動き。規則的に使い分けてちゃ、結局読まれる。態と同じ動作を繰り返し見せて、突然違う動作をぶっこむ、みてぇなもんだ。相手の意表を突け」



 うーんと。


 結局、どうすればいいんだろ。


 自然に?


 それとも意図的に?



「……少々、難しいですね」


「慣れだ慣れ。相手の嫌がる動きってのを意識してみるこった」



 よく分かんない。






魔装の見た目について。

アヌビスですね。

犬の頭の下に主人公の顔が収まっています。

目は犬の部分と合わせて四つ。

元々は○トの紋章のブラックシーザーみたいにしようかと思っていたのですが、胸に犬の頭部は大き過ぎて邪魔かなと思い、この形態に。

イメージとしては騎士甲冑ではなく、変身ヒーロー物を想定。

全身のベースは光沢の無い黒で、手足の爪や墨入れ部分は光沢のある金色な感じ。

また、爪は指より一回り大きく、指先を覆っています。



本日は本編130話までと、SSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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