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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第三章
190/230

126 無職の少年、助言

▼10秒で分かる前回までのあらすじ

 勇者との対決に向けての訓練が続けられる

 しかしながら、未だ魔法への対処法は見出せないでいた

「まだ動きが固いな」


「済みません」


「……いや、そう言うオレも覚悟が足りてねぇらしい。明日からは、刻印武装を着込んでこよう。そうすりゃ、思い切りやれるだろ?」


「では、ワタシも槍を」


「いやいや、嬢ちゃん。そいつはちげぇ。騎士の剣術に対応させるんだろうが」


「そうでした。済みま──」


「おっと、そう何度も謝罪を口にするな。言葉の意味が軽くなっちまうぜ」


「済み──コホン、気を付けます」


「そうするこった」



 本日の戦闘訓練を終え、まずは聖女さんへと声掛けが行われた。


 次いで、僕のほうへと歩み寄って来る。



「さて、今日はどうした。他事でも考えてる風に見えたが」


「あ……はい、少し悩んでまして、つい」


「解決できるとは限らねぇが、話せる内容なら話してみな」


「その……魔法への対処方法についてなんですけど」


「魔法、か。そいつはまた、随分と厄介な問題だ。生憎とオレは使えねぇしなぁ」


「……そうですか」


「だがまぁ、騎士団の全員が魔法に不慣れなことは確かだぜ。何せ今まで使えなかったんだしな」



 それはそうかもしれない。


 だけど、現に勇者は魔法を使ってみせたわけで。


 ズキン。


 頭が痛む。



「とは言え、門外漢のオレじゃあ、碌な助言もできやしねぇか。他に頼れそうな相手はいるのかい?」


「アルラウネさんにも相談してみました」


「ふむ。他に当ては?」


「魔法協会に住んでる賢姉けんしさんなら、もしかしたら何か分かるかもしれません」


「……剣士? ま、まぁなんだ、そうそう魔法戦に特化できるとは思えねぇ。付け入る隙はあるはずだぜ」


「はい」


「大したことが言えずに済まねぇな」


「いえ、そんな。ありがとうございました」


「だが、訓練の最中で他事は考えるなよ。怪我の元だからな」


「気を付けます」


「明日こそは、気合の入った訓練を見せてくれよ」



 昨日と同じく、手をヒラヒラ振りながら、歩み去って行った。






「あの、少しお尋ねしても構いませんか?」



 続く自主訓練も終えたころ、聖女さんに声を掛けられた。



「はい、構いませんけど」


「ありがとうございます。ふとした疑問というか、好奇心のようなものなのですが。魔装化まそうかしている状態では、どちらの意識もあるのでしょうか?」


「えぇっと……?」



 何を質問されたのか、よく理解できなかった。



「ボウヤとブラックドッグ、どっちも意識があるのか、って聞いてるんじゃないかしら」



 戸惑ってるのを察してか、アルラウネさんが説明してくれた。


 なるほど、そういう意味だったのか。


 いつもの感覚を思い出してみる。


 喋ったり、意識して意思疎通したりはしてないかな。


 けど、考えに合わせて形状を変えているのは、ブラックドッグに違いない。



「多分、どっちもあるんだと思います。けど、会話とかしてるわけじゃなくて、考えたら応じてくれるって感じです」


「能動的にはキミが、受動的にはブラックドッグが対応しているんですね」


「そう……なんですかね」



 難しくてよく分からないけど。



「もしかしたらなんですが、より素早く反応できるようになれるかもしれません」


「え? それってどういう……?」


「つまりですね──」






「たっだいまぁー」


「おかえりなさい」



 居間でぼんやりと考えごとをしていると、姉さんが帰ってきた。



『オヒサ!』


『トモダチ、ゲンキ?』


「あ、スライムたちも一緒だったんだ」



 しばらくぶりのスライムたち。


 姉さんの腕から跳び下りて、机の上に着地する。



「住処でバッタリ会ってね。弟君がこっちに帰ってるって知って、付いて来たってわけ」


『マタ、イッショ』


『オセワ、ナル』



 近付いてきたのを、抱きしめる。



『『ギュー』』


「あらあら、仲が良過ぎて、お姉ちゃん妬けちゃうわ」



 ああ、何だかホッとする。


 帰ってきたって感じ。


 そう言えば、妹ちゃんやオーガ兄にも、まだ会ってないや。



「妹ちゃん、最近来ないわよね。もしかして、帰ってきてるの知らないのかしら」



 姉さんも同じことを思ったらしい。



「警備で一緒、ってわけじゃないんですよね?」


「兄のほうは一緒だけど、妹ちゃんは違うわよ。てっきり兄から伝わってるものと思ってたんだけど」



 自分の家には帰ったんだし、兄妹仲が良好になったとばかり思ってたけど。


 そういうわけでもないのかな?



「明日、行きがけに寄ってみるわ」



 そう言うと台所へと向かい、手洗いを終えて対面に座った。



「それで? 今日はどうだった?」


「今日も上手くはできませんでしたね。どうにも魔法対策で悩んでしまっていて」


「そう……何なら賢者でも呼びましょうか?」


「お願いしたいです」


「分かったわ。今日は……流石にもう遅いし、明日にしましょうか」


「はい、お願いします」



 正直、賢姉けんしさんでも駄目なら、打つ手がない。



「お姉ちゃんが思うに、魔力を根こそぎ吸収してやればいいんじゃないかしら」


「鎧越しだと無理でした」


「そうなの? 普通は鎧越しだろうが通用すると思うんだけど。もしかして鎧が特別製だったりするのかしら」


「お話し中に済みません。その鎧のことなんですが」



 二階に居た聖女さんが、一階へと下りてくる。



「別に構わないわよ。それで、鎧がどうかしたの?」


「どうやら、初代勇者の装備との話でして」



 ズキン。


 頭が痛む。



「……父の話だと、魔物の所為で所在不明になったって聞いてたんだけど」



 ドクン。


 胸が疼く。



「教会が保管していたようです。刻印武装ではないようですが、防御力は団長の鎧以上かもしれません」


「魔法耐性も高いって聞いてるわ。それで魔力吸収も防がれてるのかしら……」



 話を聞く限り、特殊な鎧らしい。


 強敵は強敵のまま。


 白刃すら通用するのか不安になったきた。






本日は本編130話までと、SSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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