表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第三章
180/230

118 無職の少年、聖女との訓練①

 コンコン。


 洗濯の助言を終え、再び掃除に従事していると、玄関の扉がノックされた。



「はーい、開いてます」


「おはよう、ボウヤ。お邪魔するわ」


「おはようございます。どうぞ、座ってください」


「ありがと」


『久しぶりポー! 元気してたコロ?』


「うん。元気だよ」



 来客はアルラウネさんとコロポックルだった。



「何で呼ばれたのか、よく分かってないのだけれど」


「えっと、姉さんから説明は……」


「見張って欲しいだか、見守って欲しいだか言ってたわね」



 どうやら、碌な説明が行われていないらしい。


 聖女さんと訓練すること、その監督役をお任せしたいことを告げる。



「それって、樹上でやって大丈夫な類いなの?」


「激しい戦闘なんかは、やるつもりはありませんけど。剣戟にはなると思います」



 今回は勝敗というよりも、剣との戦闘に慣れる意味合いが強い、と思う。


 もっと言えば、騎士の剣術になるのか。


 だから、魔装化まそうかで範囲攻撃、とかはしなくて済むはず。



「つまるところ、危なそうなら止めに入るのと、他の誰かを巻き込まないよう警戒すればいいのかしら」


「お願いします。あ、飲み物お出ししますね」


「そう? なら、お水をお願いしてもいいかしら」


「分かりました」



 掃除してた手を洗ってから、コップに水を入れて持って行く。



「どうぞ」


「ありがと。それで準備のほうは、もうできてるの?」


「洗濯物を干し終わったら、ですかね」


「……そう言う割には、掃除してなかった? 珍しいく、ボウヤが洗濯してるわけじゃないのかしら」


「姉さんや聖女さんに嫌がられてしまったので」


「嫌がられてって……ああ、そういうことね」



 何となく事情を察してくれたみたいだ。


 つまりは、それだけ当たり前のことなのだろう。


 抵抗を覚えない僕のほうがおかしいのかな。



「何とか洗濯終わりました~」


「お疲れ様です」


「あ、お客様がいらしてたんですね」


「おはよう。それが済んだら訓練の準備をお願いね」


「おはようございます。では、すぐに済ませます。もう少々お待ちください」


「別に急がなくていいから、慌てずにやりなさい」



 アルラウネさんの言葉を聞いていたのかどうか。


 洗濯物を持って、二階へと駆け上がって行った。



「それにしても、随分と雰囲気が変わったわね」


「何がですか?」


「ボウヤが、よ。戦いを前に、怯えてる様子がないもの」


「それはまぁ、訓練ですし。実戦なら怖がってますよ」


「つまり、訓練だからって油断してるってわけかしら」


「そういうつもりじゃ……」


「気を引き締めて臨みなさい。武器は本物を使うんでしょ? 止めには入るつもりでいるけど、そもそも怪我を負わないようにしなくちゃ駄目よ」


「はい、気を付けます」



 そっか、そうだよね。


 本物の武器を使うんだ。


 あ、でもだとしたら、白刃は使わないほうがいいよね。


 石を簡単に切断しちゃうんだし、グノーシスさんの大剣に対してもそうだった。


 金属の剣や鎧だって、斬れちゃう気がするし。


 僕だけじゃなく、聖女さんにも怪我して欲しくはない。


 魔装化まそうかでもう一本の短剣を具現化して訓練に臨もう。






 久しぶりの世界樹。


 相変わらずの快晴。


 雲の上なんだから、当たり前なんだけど。


 グノーシスさんの住処は常に明るかったものの、本物の日の光ってわけじゃないみたいだし。


 特有の熱を感じられる。


 やっぱり、日光は気持ちがいい。



「随分とリラックスされているご様子ですね」



 家のそば、頭以外を銀色の鎧で覆った聖女さんと対峙する。



「緊張しているよりかは余程いい。ですが、ともすればワタシへの侮りとも取れますね」



 姉さんやオーガ兄は、聖女さんと戦って勝ってる。


 だからって、僕より弱いはずもない。


 勇者よりも騎士の役職は上の副団長。


 ズキン。


 頭が痛む。


 赤い記憶に、彼女の姿はない。


 仇……ではないはず。


 昂りを抑える。


 冷静に、相手の攻撃を見極めないと。


 そのための訓練なんだから。



「ふぅーーー」



 目を閉じて、深く長く息を吐き出す。


 心音が一定のリズムに戻るのを待つ。


 相手の言葉に一々反応して、乱されちゃ駄目だ。


 落ち着け、落ち着け。


 心音が安定したところで、目を開く。



魔装化まそうか



 そばに控えていたブラックドッグが、黒霧となって身体を覆う。


 イメージするのは姉さんの鎧姿。


 そして、最初に姉さんから貰った短剣を2本分。



「その黒い靄、聖都での一件と同じ力ですか。しかし、形状が違う……?」



 魔装化まそうかは時間制限付き。


 のんびりと説明している暇はない。



「では、よろしくお願いします」


「はい。武器は……短剣ですか。攻撃には不向きに思えますが、小回りと防御に優れそうですね」



 少しでも長く、少しでも多く、戦闘を。


 話には付き合わず、一気に距離を詰める。


 短剣は振るわない。


 攻撃を誘って、いつもどおりに逸らしてゆこう。


 相手は右手に剣、左手は空手。


 右足を前に出し、刺突が見舞われた。


 速い!


 捌くのを諦め、身体を捻りつつ横に跳び退く。



「それでいい。不用意に懐へは跳び込むな」



 左脚を軸として、身体が回る。


 再びの刺突。


 今度はどうにか。


 剣の表面に短剣を滑らせる。


 と、短剣から伝わる抵抗が消えた。


 相手の身体が回転している。


 剣が一周し、横薙ぎとなって襲って来た。






本日は本編120話までと、SSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ