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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
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SS-48 女騎士の闘い③

 魔族領侵攻から壁へと帰還したワタシを待っていたのは、またしても王都からの伝令だった。


 今度は南部の世界樹への襲撃に参加せよとの命令が下った。


 しかも、部下を伴わず単独でとの指定付きで。


 魔族潜伏の調査など、さして意味が無かったとばかりに。


 もしかしたら、聖都に戻れる日は二度と訪れないのかもしれない。


 またしても町の復興に碌な助力も行えないまま、出立せざるを得なかった。


 倒壊した世界樹を避け、更に南下すること数日。


 この世の出来事とは思えぬ光景を目の当たりにする。


 動く世界樹。


 自身の正気を疑うほどの異常。


 ただ茫然と眺めることしかできない。


 しばらく無為に時間を浪費し、世界樹群とは異なる位置にあったことを遅れて理解した。


 襲撃目標は、この世界樹と見て間違いあるまい。


 人族にとって、いや、全ての生物にとって、明らかな脅威。


 問題はその手段。


 如何に刻印武装とて、通用はすまい。


 移動速度は遅く、追い付くのは容易。


 巨大さ故に、見失うこともありはしない。


 怯える馬を宥めつつ、一定の距離を保ち、後を追うことにした。






 追跡者はワタシだけではなかった。


 まさか聖騎士が、こうして直接動くことがあろうとは。


 遅れて、副団長代理までもが合流を果たした。


 この場に副団長と副団長代理が居るというのに、団長が不在なのはやはり……。


 世界樹倒壊に巻き込まれてしまわれたのだろうか。


 二人とも、所在は知らぬらしい。


 何処かで療養中であるのだと思いたい。


 結局、この三名で襲撃を敢行するつもりのようだ。


 世界樹は定期的に移動を止め、巣食っているモノが外に出てくるんだとか。


 そこを強襲する算段となった。


 しかし、改めて彼の要領の良さというか、図々しさには呆れてしまう。


 当たり前のように聖騎士と接しているが、一体どういう神経をしているんだか。






 あの褐色の女性。


 見覚えはない、はずだ。


 なのに、武器といい声といい、妙に気に掛かる。


 何よりも、あの銀髪の少年には見覚えがある。


 忘れもしない、聖都を襲撃した魔族の1体。


 ならばあの女性こそが、もう1体だったというわけか。


 雪辱を果たす、絶好の機会。


 が、女性の相手は聖騎士がすることになりそうだ。


 副団長代理は、既に少年と交戦状態。


 ワタシの相手は、残った赤い魔族か。


 腰巻だけの軽装。


 露出した体は、此処からでも、筋肉で引き締まっているのが分かる。


 武器の類いは見受けられず、格闘主体なのだろう。


 ともすれば、身体能力は相手のほうが上回っている可能性があるか。


 如何に間合いに入れないかが、勝敗を分けることになりそうだ。






「妙な手心を加えるでないぞ。聖都での失態、よもや忘れてはおるまいな?」


「無論です」


「ならば良い。精霊にくみするモノは、何であれ滅っするのじゃ」


「はい」



 失敗すれば、この身がどうなるか知れない。


 勝つ、勝たねばならない。


 まずは邪魔にならぬよう、他の戦闘から離れる。


 応じるように、赤い魔族も付いて来る。



「青髪の騎士、ねぇ……アンタさぁ、最近、魔族の集落を襲わなかったか?」


「──ッ⁉」



 思いがけぬ問い掛けに、足がもつれた。


 いきなりの失態。


 生じた隙に、身を固くする。



「その反応、どうやら間違いなさそうだな。オレの妹がよぉ、随分と泣いたらしいんでな……」



 予想した攻撃は来なかった。


 が、続く言葉に呼応して、放たれる闘気が高まるのをひしひしと感じる。



「兄貴としちゃぁ、どうにも気合いが入っちまうぜ!」



 相手の姿が視界から消える。


 周囲に充満する闘気の所為で、気配も掴めやしない。


 何処に居るか分からないなら、逆に確実に居ない場所へと移動すべき。



≪召喚≫



 愛槍を手に取り、間を置かず次の行動へと移る。



付与エンチャント



 纏うは風。



疾駆ペネトレイト



 向かうは真正面。


 相手が居た場所へと移動する。



「どういう理屈だ、そりゃ? そんだけデカい得物を持ったら、普通は脚が遅くなるってもんだろうによぉ」



 声は至近から。


 並走されている。


 この状態と同程度の速度とは、恐れ入る。


 正面にこそ姿は無いが、左右後ろの何処に居るかは判然としない。


 視線は逸らせない。


 逸らした瞬間にこそ、攻撃が見舞われる。


 相手の位置を限定させる必要がある。


 開けた場所では不利。


 ならば、次に目指すべきは──。






 目標地点に到達し、ようやく足を止め反転する。


 これでもう、背後を取られる心配はしなくて済む。



「背後を取られるのを嫌ったのか? 別によぉ、真正面からやり合いたきゃあ、言えば応じてやったぜ?」



 声に遅れて、相手が姿を現した。


 口調こそ軽いが、放たれる闘気は未だ健在。


 背後には世界樹。


 先んじて攻撃すれば避けられる。


 狙うはカウンター。


 視認できずとも、姿が消えたら三方向へと攻撃を見舞えば終いだ。



付与エンチャント



 火を纏わせ、攻撃に備える。



「迎え撃つ気満々って感じだな。いいぜ、試してみるか?」



 声だけ残して姿が消える。


 すぐさま攻撃を見舞う。



爆発ブラスト


爆発ブラスト


爆発ブラスト



 右、正面、左へと、三連撃。


 急激な魔力の消耗に、頭が痛む。


 手応えは…………無い⁉


 強烈な悪寒。


 ──上ッ⁉


 反射的に、横へと跳び退く。


 ドゴォン!


 衝撃は至近から。


 先程まで居た地面が抉れ、相手の姿があった。






本日はあとSSを3話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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