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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
161/230

109 無職の少年、勇者に挑む③

 距離が一気に詰められる。


 相手の武器は剣。


 接近しなければ、攻撃は食わらない。


 なら、離れてしまえば済む話。



光壁ウォール



 ドン。



「なッ⁉」



 後退しようとした背に、何かがぶつかって邪魔をした。


 反射的に振り向こうとするのを、理性が止める。


 散々教わったこと。


 敵から目を離すべきじゃない。


 既に剣は、向かって左上から振り下ろされようとしていた。


 即応が必要。


 そして魔力は温存しておきたい。


 ならば──。


 魔装化の一部を解除して、右手を腰裏の短剣へ。


 逆手に抜剣。


 振り下ろされる剣に対し、斜め下から迎え撃つ。


 ぶつけるのではなく、表面を這わすように。


 軌道を逸らしてゆく。


 と同時に、身体の重心を左側へとズラす。


 酷くゆっくりに感じられた時の流れが、次第に元の速さを取り戻してゆく。


 跳び込むようにして、左側へと駆け出す。






「おやおや、今のを凌ぎますか。簡単に決着とはいきませんかね」



 逃れつつ、短剣を鞘に納める。


 ついでに、先程の障害物を確認しておく。


 背後を塞いでいたのは、光の壁だった。


 当然、あんなモノに見覚えなどない。


 まるで幻だったとでも言うように、光の粒子となって消えてゆく。


 ……もしかして、あれが魔法?


 姉さんが出現させた岩壁みたいなモノだろうか。


 もしも今のが、妨害じゃなく攻撃だったなら……?


 離れた場所へ攻撃できるなら、距離を取っても無駄になる。


 しかも、魔法を使っても、相手の動きは止まらなかった。


 魔法を使いながらでも、動けるらしい。


 他にどんなことが可能なのかも分からない。


 立ち止まるのはマズいか。


 けど、相手はこちらの消耗を待っていた節がある。


 疲れてからじゃ勝てなくなる。


 相手の武器は剣と魔法。


 防御は硬く、今のところ、こちらの攻撃は通用していない。


 どうする。


 どうしたら……。



光縛ロック



 ビクン。



「ッ⁉」



 急に身体が動かなくなった。


 何かされた⁉


 これも魔法⁉


 いつの間にか、身体を拘束する光の鎖が出現していた。


 これの所為か!


 必至に逃れようともがく。



「中々どうして。魔法がこれほど便利なモノとは」



 声が近付いて来ている。


 やっぱり魔法か。


 何だよこれ。


 こんなの、避けようがないじゃないか。


 余りに理不尽過ぎる力。


 見えないから避けられない。


 ……そう、そうだ。


 見えない攻撃は避けようがない。


 それは当然、相手にとっても同じこと。


 イメージするのはつた


 足裏から地中を這わし、相手の足元を狙う。



「戦いとは非情なモノ。子供と言えども魔族相手に容赦はしません」



 ──黙れよ。


 主義も主張も関係ない。


 オマエは赦さない。


 オマエを倒す。


 魔装化まそうかと同じく、魔法だって魔力が無ければ使えないはず。


 だから、触れられさえすれば、魔力を吸収してしまえる。


 魔法が厄介なら、魔法を使えなくすればいい。


 十分に接近したところを狙う。


 ──今だ!






 …………え?


 つたが地面から出てこない。


 何かに邪魔されてる⁉



「それだけ視線を向けられれば、狙いが地中だと教えているようなものですよ」


「ッ⁉」



 バレてた⁉


 よくよく見ると、相手の足元が光っているような。


 また魔法か!


 複数同時に使えるらしい。


 いや、もしかして、今なら拘束から脱せられるかも。



「ああああああああァーーーッ‼」



 地中のつたはそのままに、全身に力を込める。


 どちから一方でも突破できれば。



「まだ諦めが付きませんか?」



 遂には眼前まで迫って来ていた。


 もう猶予が無い。



「これで終わりです」



 まだだ。


 まだ諦めたりなんかしない。


 諦められるわけがない。


 相手は至近距離。


 無駄になったつたを解除する。


 どうにも拘束が解けそうにない。


 つたや棘で攻撃しようとも、鎧の防御を突破するのは難しい。


 ならば、今できることは何か。


 相手は1人、こちらは1人と1体。


 僕には無理でも、ブラックドッグの力ならばどうか。


 魔装化まそうかを解除する。



「これは、煙幕⁉」



 途端に生じるのは、大量の黒い霧。


 瞬く間に、相手ごと覆い尽くす。


 と、拘束が消えた。


 不自然な姿勢から解放されて、地面へと倒れ込んでしまう。


 ドサッ。



「そこかぁ!」



 黒霧が視界を遮る中、殺気を感じた。


 咄嗟に、声の方向から遠ざかるように横に転がって逃れる。


 ザッ。


 至近から地面に刺さる音がした。


 きっと、剣で突かれてるんだ。


 生身で攻撃を食らうのはマズ過ぎる。


 けど、これは攻撃する絶好の機会でもある。


 厄介な魔法を使われる前に、全力の一撃を食らわしてやる。



魔装化まそうか



 相手の防御は硬過ぎる。


 生半可な攻撃では通用しないだろう。


 防御を度外視して、攻撃にのみ力を注ぐ。


 イメージするのは、圧倒的な力の象徴。


 間近で見た、ドラゴンの姿。


 そのあぎと


 右腕から生じて襲い掛かる。


 黒の竜が白い鎧を噛み砕く。






 ────はずだった。


 上半身を呑み込み、腰の辺りへと噛みついている。


 が、一向に歯が喰い込まない。



「不覚を取りましたか。こんな芸当もしてみせるとは驚きです。そして何より驚きなのは、この鎧の強度でしょうかね」



 喋ってる。


 やっぱり、攻撃が中身まで届いてないんだ。


 相手は白い鎧で全身を覆っている。


 こっちの攻撃は、あの鎧には通用しない。


 ならもう、どうにかして鎧を脱がせるか、あるいは、鎧の継ぎ目を狙うとかしか、攻略手段を思いつけない。


 魔装化まそうかとは違って、相手の鎧は金属製のはず。


 熱するか冷やすかしてやれば、中身も無事では済まないだろう。


 脱がずにはいられまい。


 問題は、そうする手段を持ち合わせていないこと。


 つまりは、鎧の隙間を狙うしかない。


 あの鎧さえどうにかできれば、勇者を倒せる。


 魔力をできるだけ節約しないと。


 あの鎧越しだと、魔力を吸収できないみたいだし。


 竜を解除して、鎧として纏い直す。


 絶対に、ここで倒して終わらせてやる。






本日は本編110話とSSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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