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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
158/230

106 無職の少年、盲点

▼10秒で分かる前回までのあらすじ

 世界樹は落下した穴からどうにか脱する

 その期に乗じたのか、聖騎士の一人が襲撃を仕掛けてきた

 サラマンダーが撃退するも、協力してくれた皆はそれぞれの住処へと帰還した

 よっぽどゆっくり動いているのか、樹上集落に居ても揺れを感じない。


 元の場所へと、今も移動し続けているはずなんだけど。


 世界樹が暴走した際、一日どころか半日も移動してはいなかった。


 それでも、元の場所へと移動を開始してから数日が経過したのに、未だ到着してはいない。


 これだけ時間が掛かっているのは、主に2つの理由なんだろう。


 1つ目は当然、この移動速度によるもの。


 とにかく遅い。


 暴走していた時と比べれば雲泥の差。


 これならまだ、歩いたほうが早いんじゃないかってぐらい。


 そして2つ目は、ドリアードさんの魔力。


 都度休憩を挟みつつの移動は、より多くの時を費やすことになっていた。






「いい加減、自分の家に帰ったらどうなの? ご両親も心配してるんじゃない?」



 ドクン。


 胸が疼く。



「だってぇ~」


「折角、久しぶりに全員が揃ったんでしょう」


「うぅ~~~」



 最近恒例となった、朝の食卓の光景。


 妹ちゃんが、連日泊まり込んでいた。



「そんなに嫌? けど、嫌いってわけじゃないんでしょ」


「それはッ! でもでもぉ~、すぐ酷いこと言っちゃうしぃ。父ちゃんと母ちゃんも、困らせちゃうんだもん」



 ドクンドクン。


 胸が疼く。



「全く……難儀な兄妹ね」


「……ウチが居ると迷惑?」


「そんなわけないじゃない。好きなだけ居てくれて構わないけど、いつまでもこのままじゃ駄目よ」



 お兄さんが帰って来たことで、ギクシャクしちゃってるみたい。


 修行に旅立つ前は、仲良くしてた覚えがあるんだけど。


 久々に会うと、そうもいかないのかな。



『オトマリ、シナイ?』


「う……ゴメンね。泊めてあげるのは、まだ無理かもぉ」


『ガンバ!』



 スライムたちを妹ちゃんの家に泊めてあげるって話だったけど。


 結局、泊めてあげられてない。



「さてっと。またお昼ごろに移動が止まるみたいだから、今のうちにしっかり食べておかないと持たないわよ」


「ウチ、また上なんだよねぇ? オネーチャンたちと一緒がいい~」


「妹ちゃんは弓使いなんだから、こっちの警備のほうが向いてるでしょ」


「だってぇ~」


「それとも、兄と一緒に居たかった?」


「ち、違ッ⁉ 違うよ!」


「はいはい、揶揄からかって悪かったわ。地上よりかは安全だと思うけど、油断しないようにね」



 世界樹の移動が止まっている間、樹上と地上とで警備を行っている。


 樹上には、遠距離攻撃や、空を飛べるモノが担当。


 妹ちゃんやアルラウネさんが参加してる。


 地上は、それ以外のモノが担当。


 姉さん、僕、オーガ兄を含む面々だ。


 そもそも、姉さんが居なければ、地上との行き来もできやしない。


 ドリアードさんが元気なら、ゲートを使ってもくれるんだろうけど。


 それで魔力を消費するぐらいなら、世界樹の移動を優先して欲しい。



「もう2・3日の辛抱よ。今の調子なら、それぐらいで着くはずだから」


「そしたら、ごーれむちゃんのお見舞いに行ける?」


「そうね。そのぐらいの時間は作れると思うわ」


「……大丈夫だよね? ケンネェが治してくれてるよね?」


「例えどんな結果になってたとしても、賢者を責めないこと。それが約束できるなら、連れて行ってあげるわ」


「……そんな約束なんか、できるわけないよぉ」


『トモダチ、オコマリ?』


『イジメ、ヨクナイ!』


「イジメてるわけじゃ──って、確かに意地が悪かったかしらね」



 姉さんたちの様子からして、絶対に助かるって怪我じゃないみたい。


 見知った相手。


 話しもしたし、触れもした。


 親しいとまでは言えないけど、助かって欲しいと思う。






 微妙な空気になった食卓。


 払拭すべく、話題を探す。



「えっと……そう、果樹園を元通りにできるといいですね」


「果樹園? そうねぇ……でもまずは、ケンタウロスの家のほうが先決かしら」


「全部、壊れちゃったもんね」


『クダモノ、シンパイ』


『オネガイ、ナオシテ』


「それには、人族の侵攻を防がないとね。やっぱり、世界樹の倒壊をどうにかしないとかしら」



 おっと、思ってたのと話題の進み方が違った。


 な、何とか前向きな話題にしないと。



「人族って、世界樹が倒れた場所から侵入してるんですかね」


「流石に、上空や地下からってことはないでしょうし、そうなんじゃないかしら」


「なら、塞げばいいんじゃないですかね」


「世界樹が元の大きさに成長するには、相応の時間が掛かるって話だったわ」


「いえ、そうではなくて、姉さんが岩壁で塞げないんですか?」


「あ」



 姉さんが硬直した。


 しばし、沈黙が流れる。



「そ、そうよね、よくよく考えてみれば、何も世界樹だけに頼らなくても、どうにかできるかもしれないわね」



 世界樹の暴走を止めるため、姉さんが巨大な岩壁を出現させていた。


 あれなら、侵入して来れないように塞げるんじゃないかなって。


 ようやく姉さんも思い当たったみたい。



「じゃあじゃあ、集落も直せる?」


「案外早く、着手できるかもしれないわね」


「ホント⁉ やったぁーーー!」


「随分とあの集落のこと、気に入ってたのね」


「だってぇ、みんな仲良くしてくれたし」


「思い込みって怖いわね。弟君、ありがとね」


「いえ。お役に立てて何よりです」



 やっと食卓の空気が改善できたかな。


 後片付けを終えたら、洗濯を済ませておかないと。






本日は本編110話とSSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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