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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
157/230

105 無職の少年、襲撃者の正体

 背後に空間の歪みが生じた。


 そこからすぐに、姉さんが姿を現す。



「よいしょっと。ただいま」


「ドリアードの様子は⁉ どうだった⁉」



 アルラウネさんが、掴みかからんばかりに詰め寄る。



「まだ疲労困憊って感じだったわ。けど、襲撃があったのを知って、動けるだけ動かしてみるって」


「そんな⁉ まだ回復し切ってないのに、無茶よ!」



 つんざくような声が上がる。


 普段の落ち着いた様子とは、随分と違ってるみたい。


 それだけ、ドリアードさんのことが心配なんだろう。



「世界樹群に近づけば、魔力の回復量も上がるって言ってたわ」


「だからって」


「なら、説得してみたら? 送ってってあげるわよ」


「……ドリアードの決断は、皆のため……なのよね」



 声の調子が落ちた。


 どうにも浮き沈みが激しい。


 チラリと隣を見ると、オーガ兄が首を横に振ってみせた。


 取り敢えずは、黙って見守ったほうがいいらしい。



「多分、そうなんじゃない? アタシに聞かれても困るけど。会わないの?」


「今は止めとくわ。感情的になっちゃいそうだし」


「そう? けど、アタシが向こうに戻ったら、出発するつもりみたいだったわよ」


「ちょっとだけ時間をくれない? 気持ちを落ち着けたいのだけど」


「そうは言ってもねぇ……住処じゃなく、一旦集落に行けばいいんじゃない? それこそ、家に来れば?」


「……いいえ、住処には戻るわ。けど、ほんの少し時間を頂戴」


「もぅ、面倒臭いわねぇ……じゃあ、少しの間、此処を任せていい? 騎士の天幕に行って、移動することを伝えてくるから」


「分かったわ」


「弟君たちも、此処をお願い。すぐ戻って来るから」


「分かりました」


「うッス。任されたッス」



 姉さんが遠ざかった行くのを見送る。


 さっき襲撃して来たお爺さんって、騎士かもって話してなかったっけ?


 騎士に会いに行って、大丈夫だったのかな……。


 もしかしたら、その天幕に隠れてたりしないだろうか。


 ……どんどん不安になってきた。



「どうした? 変な顔してよぉ」


「う、うん。姉さんは大丈夫かなって」


「姐さんが? 何でだよ」


「さっき襲って来たのって、騎士かもって話だったから」


「騎士……っぽくは微塵も見えなかったけどなぁ。当然、一般人なわけはねぇだろうがな」



 一般人じゃないのは確かだろう。


 魔装化まそうかして逃げたのに、全然引き離せなかったし。


 とても、お爺さんとは思えない動きだった。



「戻りが遅いようなら、見に行ってみるか?」


「うん。そうしようかな」


「あのジジイ、針っぽいのを投げてくるのと、水魔法を使うっぽかったぜ」


「っぽい、ばっかりだね」


「うっせぇ。 師匠が戦ってたのを見てただけだっつうの」


「あと、毒がどうとかって言ってなかった?」



 サラマンダーさんが水浴びしたいとかも言ってたよね。


 アルラウネさんが水魔法で対応してたけど。



「おっとそうだった。師匠がよぉ、武器に毒が塗ってあるんじゃないかって警戒してたぜ」


「そもそも、針って武器なの?」


「針っつっても、デケェんだぜ? 手の平からはみ出すぐらいはあったからな」


「……それって針なの?」


「だから、針っぽいっつっただろうが」


「あ、そっか」



 普通、縫物をする針は指ぐらいの大きさだろうし。


 そんなに大きいなら、武器にもなりそう。



「まぁでも心配すんな。もしまたジジイが現れても、オレが倒してやるぜ」



 心配してるのは、お爺さんのほうじゃなく、姉さんのことなんだけど。


 まだ疲れてるみたいだったし。


 うーん、大丈夫なのかなぁ。






「何も異常はなかった?」



 少しすると、姉さんが歩いて戻って来た。



「はい。姉さんのほうは、何もありませんでしたか?」


「コイツ、しきりに姐さんの身を案じてたッスよ」


「あら、そうだったの? 御免ね、心配させちゃって」


「いえ、姉さんが無事ならいいんです」


「あーん、もぅ、可愛いんだから」


「ウプッ⁉」



 正面から抱きつかれてしまった。


 く、苦しい。



「あ、相変わらずッスね。死ぬほど羨ましいッス」


「アンタ相手には絶対やらないわよ」


「ちっきしょぉーーーーーーッ!」


「で、話は無事済んだのよね?」


「ええ。後、襲撃者については、特徴から言って、聖騎士の一人じゃないかって話だったわ」


「プハァッ!」



 気が済んだのか、抱擁が解かれる。


 丁度頭の位置に胸がくるから、いっつも苦しい思いをさせられる。



「せいきし? なんスか、それ?」


「教会の長、教皇を護衛する四人の騎士らしいわ」


「へぇ…………ん? そんなのが、何だって襲撃なんてして来たんスかね?」


「その老人、随分と精霊や魔族を排除したがってたらしいわ」


「護衛ブッチして、襲撃して来たってことッスか⁉ かなりヤベェジジイってわけッスね」


「もう一人、危なそうな聖騎士が居るらしいけどね。どの道、急いでこの場を離れたほうが良さそうよ」



 姉さんの視線が、アルラウネさんを捉える。


 応じるように、アルラウネさんが頷いてみせた。



「分かったわ。世界樹に戻りましょう」


「もういいのね?」


「ええ。アタシはドリアードを支えるだけよ」


「そう。なら、帰りましょ。アタシたちの家に」






本日の投稿は以上となります。

次回更新は来週土曜日。

お楽しみに。


【次回予告】

世界樹の移動は叶い、もうすぐ元の場所まで戻れそう。

しかし、不穏な影はすぐそばまで迫っていた……。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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