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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
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SS-43 魔王様の展望

「──では、人族への侵攻は行わぬと仰るのでしょうか?」


「ええ。また新たに世界樹が倒壊させられないとも限りませんわ。むしろ、世界樹近辺の皆を避難させてくださいまし」


「……それでは、人族からの侵攻に対処できないかと存じますが」


「世界樹を倒壊させ得る相手を、どう対処させるおつもりでして?」


「なればこそ、此処に近づけさせるのは危険ではありませんか?」



 ダンジョンの奥底。


 いつもの謁見の間にて、側近と言い争うことしばらく。


 ああ言えばこう言う。


 どれだけ人族を攻めたくてたまらないのかしら。


 本当に困ったものですわ。



「もちろん、監視は続けていただきますわ。侵入を許すはずもありません」


「……世界樹の連中と戦わせ、消耗を待とうというお考えなのですか?」



 随分とご都合主義的な、お考えですわね。


 精霊が敗北してしまえば、それこそこちらが危ういでしょうに。



「違いますわ。この世界への精霊の影響は測りかねます。万が一にも精霊の不在となれば、こちらにとっても不利益にもなりましょう」


「では、世界樹の暴走を止めに行かれたのは何故なのでしょうか? あのまま傍観していれば、人族を容易く滅ぼしてみせたかもしれません」


「もし精霊がそのおつもりなら、全ての世界樹を動かしたはずではなくて? 1本だけというのは、想定外の暴走だったのではないかしら」


「機に乗じて、人族へと攻め入っていれば」


「人族はすでに世界樹を倒壊させるすべを得ているのでしてよ。先の世界樹による特攻は、迎撃される公算が高かったと思われますわ」


「……なるほど。逆にこちらが人族側の罠に誘い込まれる可能性もあったというわけですね」


「そ、そうですわ。ようやくお分かりになりまして?」



 単純に、前回ご迷惑を掛けたお詫びとして、精霊への助力をと思っただけなのですけれど。


 まさかあれほど大勢で出向いておいて、一向に止まる気配が無いことには驚かされましたわね。


 あれこそが精霊の有する力。


 全力なのか、もしくは精々が力の一端、というわけかしら。


 おっそろしいですわ!


 絶対に争うべき相手ではございませんことよ。


 こちらに世界樹を差し向けられたら、ぺちゃんこにされてしまいますわ。



「ともかく、皆の安全を最優先になさいませ。もし追われるようなことがあれば、助けに向かうことは許可いたしますわ」


「……承知いたしました」


「ただし、アナタが出向くことは禁じますわ」


「元より、おそばを離れるつもりはございません」



 勝手されるのは困りますが、付き纏われるのも困りものですわね。


 何せ転移先まで追って来ましたし。



「今回、魔法が使えることは証明できましたでしょう? 皆、魔法の調練を徹底なさってくださいまし」


「そちらは既に開始しております。最低でも中級以上、デヴィルに関しては上級を習得させるべく指示を」


「期待しておりますわ。励んでくださいましね」


「ハッ」



 自衛の手段があるのと無いのとでは、雲泥の差ですものね。


 ただ、魔法で世界樹の暴走を止められなかったことからも、人族の有している力は魔法を超えたモノに思えますわ。


 自衛にしろ、どうにも心許ないですわよね。


 そもそも、現在の防衛状況はどうなっていたかしら。



「此処の防衛状況を説明していただけるかしら」


「ハッ。周囲に関しましては、平地にスレイプニル、山道にジャイアント、山中にはドラゴンを、上空はグリフォンを配しております。住処内は主にデヴィルで固めております」


「上空の防衛が心許ない気がいたしますわ。遠距離攻撃も難しいのではなくて?」


「敢えて上空を手薄に見せ、山中に潜ませたドラゴンによる迎撃を、と愚考しておりました。では、ハルピュイアと、魔法の習熟を終えたデヴィルも配しておきましょうか」


「そうしてくださるかしら」


「承知いたしました」



 これだけ備えておけば、人族も容易に接近は果たせないとは思いますけれど。


 駄目押しで、精霊との協力関係を取り付けたいところですわ。


 問題は、精霊に対し提供できるモノがあるかどうかかしら。


 んんん~~~。


 パッとは思いつきませんわね。


 ピンチに駆け付けては恩を売ってゆく、とかどうかしら。



「住処の防衛、世界樹の監視、世界樹近辺からの避難、魔法の調練。他にご指示はございますでしょうか?」


「そうですわねぇ……世界樹の近くに住む魔族に、話を聞いてみたいですわね」



 もしかしたら、精霊について耳寄りな情報が聞けるかもしれませんし。



「どのような情報をお望みなのでしょうか」


「それはもちろん、世界樹や精霊についてですわ」


「……ならば、こちらとの交流を絶っていた種族となりましょうか。もっとも適しているのは、樹上に居たモノたちなのでしょうが」


「拉致は駄目ですわよ」


「確か最近、塔のほうにケンタウロスの集団が身を寄せているとか」


「こちらの世界では、随分と昔に、人族に恭順を示した種族でしたかしら」


「記録によれば、分不相応にも人族が魔王を僭称した際、離反したモノたちだったかと」



 それってつまり、初代様の次の魔王ってことですわよね。


 もしかしたら、こちらの知らない歴史を知り得ていたりするのかしら。



「今の事情に詳しいモノと昔の事情に詳しいモノ。此処にお連れくださいまし」


「承知いたしました。転移魔法陣にて、直ちに向かわせます」



 魔界のケンタウロスは、いずれ劣らぬ勇壮な戦士たちでしたわ。


 たもとを分かったとは言え、こちらの世界に於いても、きっと勇ましいモノたちなのでしょうね。


 初代様からの因縁を、修復して差し上げられれば良いのですけれど。


 この邂逅により、色々と前進しそうな予感がいたしますわ。






本日の投稿は以上となります。

次回更新は来週土曜日。

お楽しみに。


【次回予告】

未だ世界樹の帰還が叶わぬ中、何者かの襲撃を受ける……⁉


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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