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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
146/230

96 無職の少年、帰還の前に

▼10秒で分かる前回までのあらすじ

 世界樹の暴走は阻止できたものの、今度は元の場所まで戻る必要があるわけで

 脱出したみんなと野宿で一夜を明かした

 しばらくして、姉さんたちが話し合いから帰って来た。



「お帰りなさい。って言うのも何か変ですかね」


「……ただいま」


「えっと、何かあったんですか?」


「いいえ、何でもないわ」



 本当かな?


 様子が少しおかしいように見えたんだけど。



「じゃあ、みんなを集落に移動させましょう」


「そうね。けどまずは、みんなを集めて事情を説明したほうがいいでしょうね」



 姉さんに対し、アルラウネさんがそう提案した。



「分かったわ。じゃあ、アタシがみんなに声をかけてくるから、説明はお願いね」


「ええ、お願いするわ」



 すぐさま姉さんが、みんなに声掛けを始めた。



「アルラウネさん、話し合いで何かあったんですか?」


「御免さない。アタシから言えることは無いわ」


「……そうですか」



 アルラウネさんの様子もおかしいような?


 あんまり話したくはないみたいだし、これ以上は詮索しないほうがいいのかも。


 多分、こっちに集まってくるんだろうし、少し離れてようかな。


 邪魔にならないよう、スライムたちと一緒に、端へと移動しておく。



『ナニカ、ハジマル?』


「家に帰る前に、説明があるんだって」


『オウチ、カエレル?』


「みたいだよ。帰ったらまずは片付けからだけどね」



 家の中の惨状は如何程だろうか。


 食器は補充してなかったし、そうそう壊れる物は無いと思うんだけど。


 それでも、以前に世界樹が倒壊したときとは比べ物にならない。


 随分と長い時間、移動していたんだから、揺れもそれだけ続いていたわけで。


 相応に家の中は、グチャグチャになってることだろう。



『オコマリ?』


「う~んと、困ってるのとは、ちょっと違うかも」


『ムズカシイ』



 野宿よりかは、家のほうが助かることも多い。


 片付けぐらい、不便に比べたらマシかな。


 ……何か、変な気持ちだな。


 ずっと昔は、地上で暮らしてたはずなのに。


 もう、世界樹の上が家だって思ってる。


 いいことなのかな。


 それとも、悪いことなのかな。


 それだけ、昔のことを忘れていっているってことなら、少しだけ悲しいな。






 みんなが集まり切ったみたいで、アルラウネさんの説明が始まった。


 内容自体は、さっき聞いたモノと大差ない。


 話し合いの内容に関しては、説明してくれないのかな。


 家に帰れると聞いて、みんなが喜ぶ。


 けれどもすぐに、世界樹が元の場所にはしばらく戻れないと聞き、不安そうな声に変わる。


 人族の町が見える距離にあるのだから、無理もないのだろう。


 次に人族に狙われるのは、この世界樹かもしれないのだ。


 魔力が溜まるまでの間は、世界樹の守りは弱まる。


 その間は、みんなで世界樹を守る必要があるわけで。


 地上に加えて樹上も。


 日中と夜間。


 姉さんだけでは、どうしたって無理がある。


 樹上はアルラウネさんが、地上は姉さんが中心となって警護するとのこと。


 僕も参加したほうがいいのかな。


 姉さんには反対されそうだけど。






 説明が終わっても、すぐに帰れはしなかった。


 世界樹の下部は地面に埋まったまま。


 家に戻る前に、せめて穴からは脱しておかないと、樹上で揺れに見舞われるのは避けられない。


 というわけで。


 姉さんがグノーシスさんを呼びに行った。



「なるべく、ドリアードの力を使わずに出れるといいのだけれど」



 不安そうな声。


 いや、声だけじゃなく表情も不安そうなアルラウネさん。



「みんなで引っ張っても無理かな? ほら、ドラゴンも居るし」


「無理よ。大きさが違い過ぎるもの」


「そっかぁ~。ならもう、土の精霊様に頼るしかないのかなぁ」


「そうね。ノームたちも居れば、どうにかできるって信じたいわ」



 妹ちゃんも、どうにか解決策を考えようとしてるみたい。


 まぁでも、引っ張り出すのは無理だよね。


 ドラゴンの大群とかなら、もしかしたらできるかもだけど。



「あ、魔法はどうかな? 浮かせるとか、地面を動かすとか、できない?」


「……そうねぇ、上級魔法の使い手が数十も居れば、もしかしたら可能かもしれないわね」


「無理ってこと?」


「少なくともアタシには無理ね。中級までしか使えないし」


「あ、あの」


「どうしたの、ボウヤ?」


「コロポックルでは無理なんですか?」


「いくら植物を操る力があるからって、コロポックルじゃ……」


「えっと、1体だけじゃなく、みんなでも駄目ですかね?」


「……もし可能だったとしても、今度はコロポックルたちの魔力が枯渇しちゃうわ。そしたらドリアードが魔力を分け与えることになるでしょうね」



 それじゃあ、結局ドリアードさんが魔力を消費するのと変わらない。


 ドリアードさんの住処には、かなりの数のコロポックルが居たはず。


 だから、どうにかできるのかなって思ったんだけど。


 それだけ、ドリアードさんの魔力が凄いってことなのかも。



「他の……えっと、風の精霊様とかは助けてくれないのかな?」


「どうなのかしら。交流はなさそうだったけど」


「あとは……水の精霊様とか」


「この状況だと、力になるのは土か風でしょうね。まさか、地下水を噴き上げさせてってわけにもいかないでしょうし」



 再び妹ちゃんが発案し始める。



「会ったことある?」


「残念だけど、どちらも無いわね。ノームはともかく、土や火の上位精霊にだって、今回初めて会ったぐらいだもの」


「長生きしてるのに?」


「コラッ!」


「うひゃッ⁉」


「失礼なこと言わないの」


「ご、ごめんなさい」



 結局、グノーシスさんを頼るしかなさそう。


 姉さん、早く帰って来ないかな。






本日は本編100話までと、SSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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