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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
131/230

87 無職の少年、根を断つ

 考えるよりも、行動あるのみ。


 幸い、魔力だけは有り余っている。


 思い付く片っ端から試せばいい。


 身体を幹に固定した状態だと、武器では根に届かない。


 普通であれば。


 魔装化まそうかなら、大きさだって自在。


 その上、重さは無い。


 イメージするのは、姉さんの大剣。


 短剣ほどは上手くいかない。


 不格好ながらも続ける。


 長く大きく。


 根元の太さは尋常ではない。


 何メートルあるのかすら、定かじゃない。


 大剣を伸ばす。


 身長の2倍、3倍、5倍、10倍辺りで止める。


 取り敢えずは、このぐらいで試してみよう。


 身体の拘束を緩め、身体を反転させて剣を振りかぶる。


 最後に、できるだけ鋭さをイメージしてやる。


 何でもスパッと切断できる感じ。


 ──斬る!


 狙いを定めるまでもない。


 根は無数に存在しているのだ。


 振れば当たる。


 根に当たり、刃が食い込む。


 が、切断には至らず、剣のほうが折られてしまった。


 剣速が圧倒的に不足してるんだ。


 根は常に動いているから、一瞬で切断できないと、食い込んだ剣が根の動きに耐え切れず、今みたいに折られちゃうのか。


 もっと細い先端部分なら、何とかなっただろうけど。


 根元では僕の腕前ぐらいじゃ、通用しないらしい。


 重さがあれば剣速は増すだろうけど、今度は重過ぎて振れないだろうし。


 そもそも、実体剣じゃないから、重さは備わらない。


 この方法では駄目だ。






 斬るのが無理なら、突くのはどうだろうか。


 よく使っている棘を試してみよう。


 全身から……だと幹への攻撃は楽だけど、根に対しては使い辛い。


 両腕を根に向け、指先から棘を伸ばす。


 長く鋭いイメージ。


 突き刺さりはするものの、剣のときと同じく、容易く折られてしまう。


 それに、攻撃箇所も少な過ぎて、根への効果は見込めない。


 相当数繰り返せば、効果はあるのかもしれないけど。


 せめてもっと広範囲に攻撃できないものか。


 数は増やせる。


 棘を枝分かれするみたいに、増やしてやればいい。


 元々の本数にしても、腕からも生やしてやれるし。


 だけど、切断には至らないだろうな。


 刺さっても折られるのが分かり切っている。


 一度に貫通させられないなら、何度も刺すしかないか。


 ならいっそのこと、何度も伸縮させてやればいいのかも。


 折られる前に縮めて、また伸ばして突き刺す。


 後は、1本1本を互いに邪魔にならない程度に、なるべく太くしたりとか。


 ひとまず、これで試してみよう。


 再び両腕を向けて、打ち出す。


 連打連打連打連打連打。


 効果は劇的だった。


 見る間に根元が抉れてゆく。


 流石に一気にとはいかないけど。


 何も完全に切断できなくても構わない。


 これだけ大きいんだ。


 ある程度削れば、自重で折れるだろう。


 懸念があるとすれば、復元しないかってことだけど。


 例え復元されても、その分魔力を消費してるのかな。


 そうだといいんだけど。






 ようやく1本の破壊が叶った。


 自重に耐え切れず、その身を砕いて落下してゆく。


 攻撃している間も、こうして破壊した後も、復元する様子はない。


 勝手に復元するわけじゃないなら、ドリアードさんの注意が姉さんに向いているってことか。


 もう視界内に姉さんらしき姿は見当たらない。


 きっと場所を移したんだと思う。


 もしかしたら、僕から注意を逸らすために。


 僕も頑張らないと。


 魔力はある。


 けど、体力というか、疲労が蓄積してる。


 魔装化まそうかを解除して休みたい。


 足場は最悪。


 ずっと酷い揺れに晒されて、気持ちが悪いし。


 耳は轟音の所為で、耳鳴りが続いてる状態。


 どれぐらい経ったのか。


 そして、後どれぐらい続ければ世界樹を止められるのか。


 妹ちゃんやアルラウネさんは大丈夫かな。


 世界樹上の集落のみんなは無事なんだろうか。


 家の中は、またぐちゃぐちゃに違いない。


 思考が逸れる。


 疲れてる。


 身体もそうだし、精神的にも堪えてる。


 あーもう、面倒臭い。


 ずっと続けてられやしない。


 一気に終わらせてしまいたい。


 早く楽になりたい。


 こんな馬鹿デカいものを相手に、人の姿でいる必要もない。


 化け物には化け物で。


 巨木を食らい尽くしてやればいい。






 魔力は吸収し続けないといけない。


 だから、此処からは移動できない。


 手も足も胴体も不要。


 噛み砕く牙と、届かせる首だけあれば十分。


 巨大なあぎと


 イメージするのは、見たこともないドラゴン。


 いや、胴体が無いから、精々が蛇かも。


 幹から生える首長の竜。


 視覚を同調させ、限界まであぎとを開く。


 獲物は間近にある根。


 全力で噛みつく。


 噛み砕く、食い千切る。


 ──さっさと折れろ!


 苛立ちをぶつけるように、何倍もの太さのある根を砕いてゆく。


 もっと大きく、もっと強く。


 魔力を注ぐ。


 ベキベキ、バキバキ。


 ボキボキ、メキメキ。


 何度も何度も噛みついて。


 鬱陶しい根を破壊する。


 効率的な方法ではないのかも。


 けど、多少の鬱憤は解消される気がする。


 ただただ貪り尽くす。






 これで2本目か、それとも3本目か。


 手当たり次第に噛みついてやる。


 噛み砕いてやる。


 と、不意に根から引き剥がされる。


 いや、それどころか、幹からさえも。


 慌てて周囲の確認に努める。


 木製の巨大な腕。


 それに捕まれているのだ。



『──何とも醜い姿じゃな。ともあれ、母の玉体ぎょくたいを傷付ける蛮行、見過ごすはずがなかろう』



 凄まじい力が加わえられる。


 抵抗すらできず、無理矢理に幹から剥がされ、何処かへと投げ飛ばされた。






本日は本編90話までと、SSを3話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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