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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
123/230

81 無職の少年、一緒に食事

▼10秒で分かる前回までのあらすじ

 アルラウネたちを迎えに行った姉が無事みんなを連れて戻る

 姉からは、ケンタウロスの集落での事の顛末を聞かされた

 温かい。


 そんな感覚と共に目覚めを迎える。


 徐々に意識が覚醒してきて、状況を理解してゆく。


 そっか、昨日は久々に姉さんと一緒に寝たんだった。


 互いに抱きついた格好になっていた。


 ちょっと恥ずかしい。


 モゾモゾと抱擁から抜け出す。


 吹き抜けの空は既に青い。


 いつもより長く寝過ぎたみたいだ。


 久しぶりに姉さんと一緒に寝たから、知らず安心したのかも。


 もう一つのベッドでは、丸まったブラックドッグに抱かれるようにして、スライムたちが寝ていた。


 何だかんだ、仲がいいよね。






 手慣れたもので。


 身体は勝手に食事の準備をしながらも、頭では他事を考える。


 デヴィルの襲撃は昨晩も無かったようだ。


 だけど、それは世界樹の話なわけで。


 地上では人族が侵攻して、人馬の集落が襲われていたらしい。


 門番をしていた、あの強そうな石像が倒されたとも聞かされた。


 何でそっちには、デヴィルは対抗しないんだろう。


 それとも、既に戦闘が行われていたりするのかな。


 アイツが倒されてさえいなければ、取り敢えずは構わない。


 のんびりとはしていられないかもだけど。


 早く倒しに行きたいのに。


 まだ全然、準備なんて整ってなくて。


 望む強さが、力が得られていない。


 次の機会は、いつまた巡ってくるのだろうか。


 世情は乱れて、先行きは不確かだ。


 誰も彼も、邪魔しないで欲しい。






 食事の準備を終えても、姉さんが起きてこない。


 ブラックドッグたちは、ちゃんと起きてきたのに。


 スライムは待ちきれなかったのか、果物を食べ始めていた。



『ウマウマ』


『シアワセ』



 2体に増えたままだと、消費も2倍って何だかおかしい。


 戻ったりできないのかな。


 食べる側としては、嬉しいのかもしれないけど。


 それはともかく、姉さんを起こしに2階へと向かう。


 ベッドに丸まる姉さんの身体を揺すりながら、声をかける。



「姉さん。起きてください。もう朝ですよ」


「ぅ~~」



 モゾモゾ動くものの、目が開かない。


 仕方なくもう一度試す。



「姉さん。食事もできてますよ」


「ぅぁ~~」



 結構な時間、寝たと思うんだけど。


 まだ眠いんだろうか。


 疲れが取れてないなら、起こすのも忍びない。


 ドリアードさんの住処に行く予定はあるけど、無理に起こすほど、急ぐことでもないのかな。


 自然に起きるのに任せて、1階へと戻る。


 姉さんが起きるまで、食事は我慢しておこう。






 妹ちゃんが家に来ることもなく、時間だけが過ぎてゆく。


 全然起きてこない。


 流石にお腹が減ってきた。


 しきりに音も鳴ってる。


 ここまでくると、意地の張り合いだ。


 姉さんが起きるのを待つか、諦めて食べ始めるか。


 今まで待っていただけに、待つほうに傾きがち。


 もう少し待てば、起きてくるんじゃないか。


 そう思い続けて、今に至るわけだ。


 生活のリズムがズレてしまっても、食事だけは一緒に取っていた。


 だからか、先に食べ始めるのは気が咎めてしまう。


 やっぱり我慢して、先に洗濯を済ませようかな。


 他事をしていれば、気も紛れるはず。


 席を立ってお風呂場に移動すると、ブラックドッグとお腹いっぱいになったスライムたちが付いてくる。



『モウ、オフロ?』


「違うよ。洗濯しに行くだけ」


『フク、キレイ』


「そうだね」


『フク、キナイ』


「ん?」


『ハダカ』


『センタク、フヨウ』



 もしかして、服を着なければ洗濯しないで済むって言いたいのかな?



「それはちょっと……裸はお風呂の時だけかな」


『ハダカ、ハズカシイ?』


「そうだよ」


『コマッタ』


『フク、キル?』


「えっと……スライムたちは、そのままで大丈夫だと思うよ」


『カナ?』


「うん。服はあんまり、伸び縮みできないしね」


『シカタナイ』



 会話しながらも、洗濯を済ませてゆく。


 服を着てる魔族って、人型だけに思える。


 まぁ、アルラウネさんみたいに、絶対ではないけど。



『ジャブジャブ』


『ゴシゴシ』



 服を着ないんだし、洗濯も物珍しいのかな。


 泡立ってくると、そっちに夢中になっちゃうみたいだけど。



『キラキラ』


『フワフワ』



 飛んでいくシャボン玉に突撃してゆく。


 弾けるのが楽しいらしい。


 ブラックドッグも気になるみたいで、しきりに目で追ってる。


 もしかしたら、同じようにシャボン玉を潰したいのかもしれない。






 一通り洗濯を終えて、干していると、やっと姉さんが起きだした。



「ふわあぁぁぁ」


「姉さん。おはようございます」


「おふぁよぉ~」


「まだ眠いんですか?」


「ん~? どうかしらぁ~?」



 まだフワフワしてる。


 薄手の上着だけ羽織って、1階に下りてきた。



「お腹空いたわねぇ~」


「もう用意はできてますから、食べましょう」


「……もしかして、お姉ちゃんが起きるのを待っててくれたの?」



 急にハッキリと喋り始める姉さん。


 やっと目が覚めてきたのかもしれない。



「いつも一緒に食べてましたから」


「弟君……ッ!」



 ガバッ。


 何か抱きつかれた。



「嬉しい! 大好きよッ!」


「わぷッ⁉ そ、それより、食事にしましょう。僕もお腹が空きましたし」


「そうだったわ。我慢して待っててくれたのよね。一緒に頂きましょう」


「はい」


「「いただきます」」



 もうすっかり日も高い。


 やっと食べられた食事はすっかり冷めていて。


 けれども、不思議と美味しかった。






本編85話までと、SSを2話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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