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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
121/230

79 無職の少年、家路

 既にドリアードさんと話し始めていた。


 邪魔しないよう、終わるのを待つ。



「──随分と時間が掛かったのう。ともあれ、皆連れ帰って来れたようじゃな」


「そうね。色々とあったけど、ね」


『大変だったポー! でも、頑張ったポー!』


「──ふむ? しがみついておるオーガの娘のことも含め、詳しく話を聞きたいところじゃが。確か其方そなた、寝ておらんのじゃったな」


「まぁ、そうなんだけどね」


「──ならば、子細はアルラウネから聞くとしよう。其方そなたはゆるりと休むがよい」


「何よ、アナタ無理して迎えに来てたの?」


「タイミングが悪かっただけよ。じゃあ、一度家に帰らせてもらうわね」


「──うむ。此度は世話を掛けたな。世界樹の守りに関しても、今後は力を割けよう。しっかりと眠るがよかろう」


「なら、久々にゆっくりさせてもらうわ」



 既に僕を見付けていたのか、姉さんがドリアードさんたちから離れて、迷いなくこちらに歩いて来る。


 腰に妹ちゃんがしがみついたままの状態で。


 いつだかの僕みたいだ。



「お帰りなさい」


「ただいま。取り敢えず、帰りましょうか」


「はい。それであの、妹ちゃんはどうかしたんですか?」


「ちょっとあってねぇ……ひと息ついたら、いえ、ひと眠りしてから話すわ」


「……分かりました」


『オカエリ』


『オミヤゲ、アル?』


「ちょっと、そんな余裕は無かったのよね」


『『ザンネン』』



 体を崩してゆくスライムたち。


 姉さんの腰から、妹ちゃんが不思議そうに眺めている。



「増えてる……?」


「そうなのよねー。説明は全部後回しで。まずは寝かせて頂戴」


「う、うん。ゴメンね」


「謝んなくてもいいわよ。先に家まで送り届けてあげるわ」



 姉さんが優しく、妹ちゃんの頭を撫でている。


 妹ちゃんが姉さんにベッタリなんて、いつ以来だろう。


 それこそ、最初に会った頃とかかもしれない。


 何だか、懐かしい感じがする。


 姉さんたちと一緒に、ドリアードさんの住処を後にした。






 妹ちゃんの家を訪ねた。


 出てきたご両親が最初は訝し気に。


 けどすぐに妹ちゃんに気が付いて、駆け出してきて抱きしめた。


 ドクン。


 胸が痛む。


 感極まったのか、泣き始めてしまった。


 姉さんに促されるまま、そっとその場を後にする。



「フゥ。無事に再会させられて良かったわ」


「そうですね」



 1人減った集団。


 姉さんと手を繋ぎ、ブラックドッグとスライム2体で家路を急ぐ。


 姉さんが頻繁に欠伸を噛み殺している。


 凄く眠たそう。


 でも、これでようやく、普段どおりの生活に戻れるのかな。


 見回りをしなくて済むようになればいいんだけど。



「待っている間に、何もなかった?」


「だと思います。ずっと住処の中に居たので、外のことまでは分かりませんけど」


「ドリアードの様子はどう?」


「えっと……普通だったと思いますけど」


「妙に疲れてるとか、怒りっぽいとかはなかった?」



 どうだっただろうか。


 いつもと変わりなく見えた気がするけど。


 いやでも、人族に対して悪感情を抱いてはいたかも。



「人族をあまり快く思ってない感じでした」


「それはまぁ、世界樹を壊されたんだし、仕方がないでしょうね」



 実際に目にしてないから、どうにも実感が湧かない。


 地上から見た世界樹は、山よりも大きい。


 雲の上にまで届いているのだ。


 そんな巨大なものを、人族が壊すなんてこと、本当に可能なんだろうか。


 にわかには信じられない。


 どれだけの人数が、どれだけの力で以てすれば可能なのか。


 そこまで考えて、ふと疑問が浮かんできた。


 人族は地上を行くしかないとしても、空を飛べる魔物や魔族は、どうして今まで、この集落や人族の側へ侵攻しなかったんだろう。



「姉さん、質問してもいいですか?」


「ん? なあに、弟君?」


「どうして今まで、魔物や魔族たちは、空を飛んでこの集落や人族の住処を襲わなかったんですか?」


「あら、教えてなかったかしら? それはね、世界樹が世界を隔てる壁になっていたからよ。境界とも呼んでたわね」


「きょうかい、ですか? 人族の町にあったものや、賢姉けんしさんの住んでる場所みたいな?」


「それらとは字も意味も違うわ。世界のさかいで境界よ。人族と魔族たちを争わせないために、世界樹自体に近づけなくなっていたの」


「えっと、それなら、どうやって人族は世界樹を破壊したんでしょうか?」


「アタシも、そこが気に掛かってはいるのよね。力が弱まった状態ならいざ知らず、万全の状態を破ってみせるなんて、考えられないんだけど」



 空を飛んで移動できなかったらしいことは、何となく分かったけど。


 どうして世界樹を壊せたのかまでは、姉さんにも分からないみたい。


 何となくだけど、この間戦ったデヴィルのほうが、人族なんかよりもよっぽど強いと思う。


 なのに、人族が世界樹を壊してみせたと云う。


 人族がとても危険な存在に思えてくる。


 アイツと同じように。


 危険なのはアイツだけじゃない?


 人族自体が、危険なんだろうか。


 じゃあ、僕もそうなのかな……。


 分からない。


 分からないからこそ怖い。


 もし、他の世界樹も破壊して回るなら。


 この世界樹をも標的にされるなら、人族をどうにかしないといけない。


 そこで再び、アイツと戦うことになるのだろうか。






本日は本編80話まで投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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