表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
114/230

SS-33 魔王様のお説教

「釈明する機会を与えて差し上げますわ。慈悲深い余に感謝なさいませ」



 ダンジョン特有の緑の淡い光が照らす、縦長の空間。


 叱責される姿を部下に見られるのも不都合だろうと、他のモノは下がらせた。


 椅子から相手を睥睨する。



「全ては魔王様の御身の守護と、魔族・魔物の繁栄を願っての所業なれば。忠誠に一片たりとも曇りはございません」



 段差の下、赤絨毯にて跪き、こうべを垂れる側近。


 邪魔をしたとは、露程も思ってはいないようですわね。


 まさかとは思うのですけれども、叱責ではなく、褒められるなどと勘違いしているのではなくて?



「アナタは! 余の! 邪魔をなさったんですのよ⁉ お分かりになりまして⁉」


「………………………………………………………………皆目見当も付きません」



 ず、随分と長考した挙句、お分かりにならないんですの⁉


 おフ○○クですわ!



「精霊に先制攻撃を仕掛けに行かれたのでは?」


「全ッ然違いますわよ! お話し合いに赴いたんですわ!」


「つまりは、布告と脅迫というわけですね」


「だから違いますわよ! どうしてそう、出てくる発想の悉くが、乱暴なモノばっかりなんですの⁉」


「魔王様の深淵の如きお考えを汲み取ることあたわず、不徳の致すところを悔いるばかりです」


「そこは是非とも悔いてくださいましね」


「ハッ! では、今すぐ精霊どもを殲滅しに――」


「ちっとも、全く、これっぽっちも理解しておりませんわねーーーッ‼」



 お馬鹿なんですの⁉


 フゥ、叫び過ぎて、少しクラッと来ましたわ。


 昔っから、お話が通じませんわね。


 とっても強いのは頼もしくもありますが、おつむが足りていなくては、下手な武器よりよっぽど危険ですわよ。



「許しを与えるまで、謹慎を命じますわ」


「魔王様をお守りするのが我が指名なれば、火急の折にはご容赦賜りたく存じ上げます」


「アナタの所為で、状況は悪化するばかりでしてよ? 居ないはうが上手く事が運ぶぐらいですわ」


「失礼ながら、魔王様ご自身に、自衛できる程の力はございません。万難を排するが我が役目なれば。どうか」


「だ・め・で・す・わ!」


「…………」


「言うことを聞かぬのでは、お話になりませんわ。世界樹の件にしましても、予想外に住まうモノとの邂逅となりましたが、アナタの凶行により反感を買いまくりでしてよ」


「申し訳ございません」


「アナタは当分の間、ここで謹慎ですわ! 護衛に関しても、もっと適当なのを連れて行きますから、ご心配には及びませんことよ」


「いえ、心配です」


「アナタねぇ……」


「彼の地は敵地とお心得くださいませ。人族の子供は妙な力を使っておりましたし、種族の不明な女に至っては、相当の手練れと見ました。他のモノでは後れを取りましょう」



 確かに、子供は変身みたいな真似をしておりましたし、女性のかたの動きは、目で追えない程でしたわ。


 次に赴いた際、気付かぬ内に倒されている、なんてこともあり得るのかしら。


 人族への備えとして、精霊を頼るつもりでしたのに。


 最悪ですわ。



「……しばらくは様子見といたしましょう。期間を設ければ、多少は悪印象も薄まるでしょうし」



 それに、気掛かりなことを仰ってましたわよね。


 まるでこちらの居場所を知り得ているかのような物言い。


 相手は精霊そのものか、少なくとも精霊に与するモノ。


 ドラゴンの【竜眼】のように、遠方を見通す力などがおありなのかしら。



「謹慎の間に防備を整えさせなさいませ。人族よりも先に、精霊による報復がないとも限りませんわ」


「畏まりました。既にデヴィルは招集しております。しかしながら、魔界からの増援は、都の防備が薄まりますので、困難かと存じ上げます」


「魔界に関しては現状維持で構いませんわ。むしろ、手薄にして都が陥落するほうが大問題でしてよ」


「そのように対応いたします」


「いいですこと? くれぐれも、く・れ・ぐ・れ・も! 勝手な行動はお慎みになってくださいましね」


「もちろんでございます」


「……本当にお分かりになっておりまして? どうにも信用できませんわ」


「侵入した輩を、殲滅すればよろしいのですよね」


「……随分と好きに解釈なさってますわね。せめて交渉の余地を残すべく、生きたまま捕えてくださいましね」


「善処します」



 そこは確約して欲しいのですけれども。



「そうでしたわ。世界樹の監視も怠らぬようになさいましね。何か変化があれば、勝手に判断は下さず、すぐに報告なさい。よろしくて?」


「そちらも対応させます」


「ではお下がりなさい」


「ハッ。失礼致します」



 去り行く背を見送る。


 自由裁量を与えてしまうと、好き勝手しそうですわね。


 監視していないと、また暴走しそうですわ。


 言っても聞かない気もしますけど。


 何だか、いきなり忙しくなって参りましたわね。


 退屈も困りものですけれど、忙しいのはもっと困りますわ。


 どうにか穏便に事を治めてしまいたいのですけれども。


 人族に加えて、精霊とも仲をこじらせてしまったのは、かなりの痛手ですわね。


 しかしまさか、世界樹の上に人族や魔族が暮らしていただなんて、思いもしませんでしたわ。


 もしかしたらもしかするのかしら。


 精霊のもとで、多種族が共存できているのならば、精霊は争乱を望んでいないのではなくて?


 どうにかして、話し合いの場を設けたいところですわ。


 余計な邪魔モノは排除したうえで、ですけれども。






本日の投稿は以上となります。

次回更新は来週土曜日。

お楽しみに。


【次回予告】

ようやく外への移動が可能になり、妹ちゃんたちを迎えにゆくのだが……。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ