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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
113/230

75 無職の少年、ちょっとだけ賑やかな夜

 2回目の洗濯物が何とか乾いた頃。


 ほどなく日が完全に見えなくなる。


 今日すべきことは、お風呂に入ることと、寝ることぐらい。


 と、二階で物音がし始めた。


 姉さんが起き出したみたいだ。


 また夜の見回りに出掛けるのかな。


 ひとまず、居間で姉さんを待つ。






「ふわあぁぁぁ~~~ッ」



 盛大に欠伸をしながら、姉さんが下りてきた。


 まだちゃんと目が覚めてないみたい。



「おはようございます、姉さん。まだ下着姿のままですよ」


「おはよ~、弟君。って、あら~? ホントね。さっき着たつもりだったんだけど、不思議ねぇ~」



 階段を再び上がっていく姉さん。


 服を着ようとしてるってことは、やっぱり出掛けるつもりなんだ。


 しばらくの間は、夜の見回りを続けるってことかな。


 ガサゴソと二階から物音が続く。


 ……随分と時間が掛かっている様子だなぁ。


 まだ眠いのかもしれない。


 物音は足音へと変わって、姉さんが再び下りてきた。



「おっはよー。じゃあ、食事にしましょ」


「え?」


「ん?」


「いえあの、作ってないですけど。てっきり、帰ってきてから食べるのかなと思ってたので」


「あー、そっかそっか、今は夜だもんね。アタシの感覚がズレてるのね。いっつも起きたら食事を取ってたからつい、ね」


「どうしますか? 急ぐなら手早く用意しますけど」


「んー、じゃあ、そのまま食べられるパンか果物を出してくれる? 普通の食事は帰ってきてから一緒に食べましょう」


「分かりました」


『クダモノ!』


『ズルイ!』



 流石、果物のことになると、反応が素早いね。


 でも、机の上で跳ねるのは止めて欲しいかな。


 直上に手を翳して、跳ぶのを遮る。



「はいはい、悪かったわよ。やっぱりパンでお願い」


「はい。硬いかもしれませんけど、いいですか?」


「ええ、構わないわ」



 一応の確認を取ってから席を立ち、台所へと向かう。


 そのまま食糧庫へ。


 さっきはああ言ったけど、なるべく柔らかいパンを選び取る。


 居間に戻ってくると、姉さんが居なかった。



「あれ? 姉さん?」


「──お風呂場よー。洗顔と手洗いしてるのー」



 ああ、なんだ。


 いきなり居なくなってるから、びっくりしたよ。


 居間に姿を見せた姉さんにパンを手渡す。



「モグモグモグ……じゃあ、モグモグ、見回りに行って、モグモグ、くるわね」


「いえ姉さん。装備がまだみたいですけど」


「モグッ⁉ あっれー?」



 武器も防具も、未だ身に着けてはいなかった。


 顔まで洗ったのに、まだ寝惚けてたんですね。


 階段を使うのが面倒になったのか、吹き抜けを跳び上がり、二階へ直行する。



「もう姉さん。行儀が悪いですってば」


「のんびりとはしてられないんだもの。今は見逃して頂戴」



 今度の用意は素早く済んだらしい。


 すぐに一階へと跳び下りてきた。



「姉さん!」


「御免御免。ホントに急いでるのよー」



 そのまま居間を通り抜け、玄関へと向かう。


 そこで振り返って告げてくる。



「もし今度、何かの襲撃があったら、迷わずドリアードの住処に避難しなさい」


「……やっぱり、戦うことには反対なんですね」


「当然よ。特に、一緒に居ないときはね。それに、戦うのは嫌なのよね?」


「それは……そうですけど」


「昨日……いえ、今日みたいな無茶はしないで。お願い」



 悲しげな表情を浮かべている。


 姉さんを心配させたいわけじゃない。


 それに姉さんの言うとおり、戦うのは嫌いだ。


 今日のことは、寝ている姉さんを気遣ってのことだっただけで。


 当たり前のことだけど、相手が僕より強ければ、時間稼ぎにしても命懸けになってしまう。



「分かりました」


「本当に本当ね? いつも間に合うわけじゃないんだからね?」


「はい」


「ブラックドッグもよ? 弟君を守るつもりなら、戦わせないで避難させて頂戴」


『状況にもよる。が、避難を優先させるべきなのは理解した』


「……ハァ、ホントに大丈夫かしら」


『トモダチ、マモル!』


『オマカセ!』


「……そうだったわね。スライムたちも今日みたいな無茶しちゃ駄目よ? 絶対に助かる保証はないんだからね?」


『ダメ?』


「駄目よ。まずは逃げること、いいわね?」


『ワカッタ』


『ジグザグ、トクイ』


「じぐざぐ……? ま、まぁ、そういうことだから。じゃあ、行ってくるわね」


「はい、行ってらっしゃい」


『『マタネ』』



 そうして姉さんを見送る。






「じゃあ、僕たちはお風呂に入ろっか」


『オフロ!』


『プカプカ!』


『泳ぐなよ。後、飲むな』


『シ、シナイ』


『シタコト、ナイ』


『嘘を吐くな。やったら放り出す』


『ヒドイ』


『オタスケ』


「みんなで大人しく入ろうね」


『ダネ』


『ワンコ、ランボウ』


『……何だと?』


『『コワコワ』』


「ブラックドッグも、お風呂で暴れるなら、追い出すからね」


『むぅ』


『『ソウダ、ソウダ』』


「スライムもだよ? いい?」


『ウクダケ』


『モグラナイ』



 昨日より1体分賑やかに、お風呂へと向かう。






 大人しくお風呂を終え、二階へ移動する。


 ブラックドッグも付いて来てるし、一緒に寝るつもりみたい。


 何だか懐かしい気分。


 もっと小さかった頃は、いつも一緒に寝ていた。


 まだ姉さんとの二人暮らしに慣れていなかった頃のこと。


 ズキリ。


 何処かが痛みを訴えてくる。


 ベッドに横になると、スライムとブラックドッグに挟まれる形になった。


 スライムたちは、顔の真横だけど。



「布団の中じゃなくて平気? 寒くない?」


『ダイジョブ』


『ゲンキ』



 いや、元気かどうかは聞いてないんだけど。


 まぁ、寒かったら布団に潜ってくるか。



「じゃあ、おやすみ」


『『オヤスミ』』


『例えトイレに起き出す場合でも、1人では行かぬようにな』


「う、うん。気を付けるよ」



 いつもの護衛モードなんだね。


 懐かしい記憶に浸りながら、次第に意識が遠退いて行った。






本日はあとSSを1話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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