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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
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SS-30 オーガ兄は家族を案じる

「おい、今何が起こった?」


『ただの地震だろう』


「……いや、どうにも嫌な感じがしやがる」


『つまりは、【竜眼】で原因を探れと言うわけか』


「頼んだぜ」


『まったく……便利使いしおってからに……』



 ウガァ───ッ!


 またしても、師匠と仲良さげに話をしてやがる!


 止む無く聞き耳を立ててた感じじゃあ、さっきの揺れのことを師匠が気にしてるみたいだが。


 地震はまぁ、珍しいっちゃ珍しい。


 が、そんなに気に病むことかねぇ。


 案外、師匠も地震が怖かったりするんだろうか。


 そいつはつまり、ギャップ萌えってヤツかよ⁉


 さ、流石は師匠!


 オレの好みをひたすらに押さえてきやがるぜ!






 相も変わらず、クソ暑い溶岩に囲まれた中で修行を続けているわけだが。


 せめて、溶岩じゃなく水に囲まれてさえいれば……ッ。


 一緒に水浴びするというシチュが可能だったものを!


 いやいや、それだけじゃない。


 単純に水を汲みに行く手間が省ける。


 こんな溶岩に囲まれた場所じゃ、すぐさま水なんて蒸発しちまう。


 だから態々、水を飲むだけで、そこそこの距離を移動しないとならない。


 溜めておくにしろ、結構離れた場所でないと、お湯どころか熱湯に早変わりする始末。


 寝床も離れた場所でないと、焼き肉になっちまうし。


 立地が不便極まりねぇんだよなぁ。


 地震云々で、場所を移したりしないもんかねぇ。



「テメェ、随分と手抜きな動きをしてやがるじゃねぇか、えぇ?」


「し、師匠⁉」


「修行中に他事を考えてるほどに、余裕があるらしいなぁ?」


「そんなことはないッス!」


「なら、それが精一杯の動きってわけか?」


「うぐっ…………ち、違うッス」


「だったらキリキリ動けやコラァ! サボってんじゃねぇぞ!」


「うッス! すんませんッス!」



 うへへへへへへへ。


 師匠から話し掛けられちまったぜ。


 そうなんだよなぁ。


 いっつも何だかんだ言いつつも、ちゃんとオレのこと見ていてくれてるんだぜ。


 これだから師匠の弟子は辞められねぇ……ッ!



「注意したそばから、やらかしてんじゃねぇ!」


「ぐぼあッ⁉」



 腹部に強烈な衝撃が加えられ、身体が吹っ飛ばされる。


 ──って不味い!


 周囲は溶岩。


 落ちれば焼けるどころか溶けるのみ。


 踏ん張りが間に合わず、足が浮いた状態。


 ──あ、これ、死んだわ。



『落ちたら跡形も残らぬぞ。努々(ゆめゆめ)気を付けよ』



 と、硬いものに背を押された。


 背に生じた抵抗を利用して、体勢を立て直す。


 再びの地面を踏みしめる。


 寸でのところで、溶岩に落ちずに済んだ。


 確かめるまでもなく、助けてくれたのは、忌々しい邪魔モノ。


 もとい、クリムゾンドラゴンだった。


 尻尾で背を受け止めてくれたらしい。


 溶岩まみれじゃなくて、助かった。



「あざッス!」



 憎い相手といえども、礼儀は怠るべからず。


 両腕をそれぞれ斜め下へ振り下ろし、頭を下げる。



『よい。しかし、常に助けがもたらされるとは思わぬことだ』


「うッス!」


「だらしのねぇヤツだ」


『キサマは加減を覚えよ』


「呆けるコイツが悪い。んで、何か分かったか?」


『デヴィルが何やら動きを見せておるようだ』


「ふーん。他には?」


『恐らくは、こちらが原因だろう。世界樹の一本が倒壊したようだ』


「………………はあぁ? んだと⁉ マジか⁉」


『倒壊の理由までは定かではないがな』


「……魔力が妙に多い気がしたが、世界樹のが漏れてやがるのか」


『それでいつもより、些か乱暴だったのではあるまいな?』


「知らねぇよ。オレサマはオレサマだ。何が起ころうが、オレサマの行動の責は、すべからくオレサマにある」


『……潔い覚悟だが、振る舞いにはもう少し気を配るべきだろう』


「うっせぇ。しっかしこれで、忌々しい境界が消えたわけか」


『仮初の平和も終いか。何者の仕業であれ、業の深い所業よな』


「あの馬鹿デカい世界樹を、どうやって倒しやがったんだ? よっぽどの威力の何かってことだよな」


『未だ境界の向こう側は見通せぬ』


「倒したのは、こっち側じゃねぇんだな?」


『……それらしきモノは見当たらぬ』


「場所は? 近いのか?」


『南東だな。此処からは、かなり遠い』


「チッ、遠いのかよ。戦闘でもおっぱじめやがったら、乗り込むつもりだったが」


『……連れては行かぬぞ』


「いいのか? オレサマが介入して戦闘が終われば、平和とやらがまだ少しは長引くかもだぜ?」


『………………状況次第だ』


「そうかいそうかい。精々、監視に励んでくれや」



 師匠が上機嫌でなにより。


 だが、世界樹が倒されたって言ってたか?


 家族は大丈夫だろうか……。


 流石に少し心配になってきた。



「すんませんッス。倒壊したのって、一番遠い南東の世界樹ッスか?」


『いや、倒れたのは別の世界樹だ。が、距離は近い。何かしらの影響は出ている可能性はある』


「そうッスか。どうもッス」



 取り敢えずは無事っぽいか。


 そうそう世界樹から出たりはしないだろうし、まぁ大丈夫だろう。


 もし、もしも、家族のいる世界樹が倒されるようなことがあれば、仕出かした連中を皆殺しにしてやる。


 やったヤツも、命じたヤツも。


 どいつもこいつも、赦しはしねぇ。


 ……そうか、ダチもこんな気持ちを抱えていたのかもしれねぇな。


 両親を人族に殺されたって聞いたが。


 そりゃあ、赦せねぇわなぁ。


 想像しただけでこれだ。


 実際に目の当たりにしたダチの感情なんざ、もっとひでぇもんだろう。


 ダチも大人しくしてればいいが。


 エルフの姐さんも元気してっかなぁ。


 あー、あの豊満過ぎる肢体、思い出すだけで堪んねぇぜ!



「またぞろ呆けてんじゃねぇ!」


「ぶべらッ⁉」


『そうポンポン、殴り飛ばすでない』






本日はあとSSを2話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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