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勇者に挑むは無職の少年  作者: nauji
第二章
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SS-27 魔王様の苦悩

▼10秒で分かる前回のあらすじ

 世界樹倒壊の影響が冷めやらぬ中、世界樹の集落に誰かが訪れる


 淡い緑色の光が照らす、縦長の空間。


 壁際に居並ぶ配下たち。


 日がな一日。


 特にすることもなく、背もたれがやたらと長い椅子に背を預ける。


 ──ハッキリ言って、退屈で死にそうですわ。



「魔王様」



 ──ちょッ、びっくりしましてよ!


 いつの間に来ていたのか。


 椅子よりも数段低い位置、正面の赤絨毯で跪く側近の姿があった。


 外面には動揺を表さぬよう、努めて冷静を装う。


 続きを促すように、無言で顎をしゃくってやる。



「世界樹群にて異変が生じたようです」



 すると、こうべを垂れている姿勢で、こちらが見えているかのように応じてみせた。


 相変わらず、不気味ですわ。


 それにしても今、異変と仰いまして?


 非情に面倒臭そうですけれども、捨て置くには剣呑過ぎますわね。



「子細をお聞かせくださいまし」


「ハッ。ドラゴンの【竜眼】で観測したところ、世界樹の一本が倒壊したとの報告を受けた次第であります」



 ──ハァ⁉ 世界樹の倒壊ですって⁉


 先代ですら、破壊は敵わなかったと聞き及んでおりますのよ?


 一体全体、誰がどのように事を成したんですの?


 配下たちがざわめき出す。


 ギロッ!


 鋭い一瞥で以て黙らせておく。



「原因については、お分かりになりまして?」


「残念ながら。事の起こった後での発見と聞き及んでおります。少なくとも、境界より手前側では無いようです」


「つまり、人族側で何かしらがあったという意味かしら?」


「恐らくは。しかしながら、世界樹の影響は未だ健在らしく、境界より先は見通せず仕舞いとのことですが」



 遥か遠方までをも見通せる【竜眼】。


 なればこそ、世界樹の倒壊との知らせは、極めて真に近しいのでしょう。



「では、考えられる原因はございまして?」


「私見ながら、人族に因る事象かと」



 人族ですって?


 魔族に劣る人族に、そんな真似が可能なのかしら。


 現状、どちらも魔法は使えませんわ。


 もしも本当に、魔族に先んじて人族が事を成したと言うならば、諦観してはいられませんわね。


 魔法を用いず、如何にして成し遂げてみせたのでしょう。


 いいえ、問題はそのすべを、いつこちらに向けてくるとも限らないことですわね。



「対応策は検討しておりまして?」


「ハッ。ダンジョンの転移魔法陣を用いて、境界の向こう側への侵攻は、ご裁可頂ければ、すぐにも実行可能です」


「まぁ⁉ 相手の手札も知らずにですの? まさか、無為に犠牲を増やせとでも仰るおつもりかしら?」


「恐れながら、時間は敵に利するばかりかと存じ上げます。世界樹の破壊が一本だけというのも、それだけ準備に時間を要するが故かと」


「希望的観測に過ぎないですわよね。相手が準備万端整えていたらどうなさるお積もりでして?」


「……その可能性もございます」


「情報収集を徹底なさいまし。こちらは数歩も出遅れておりましてよ」


「今こそが好機との可能性もございます。何卒、精鋭による強襲のご許可を賜れれば必ずや──」


「くどいですわよ! 1体の犠牲も許容するつもりはございませんわ。事を起こすならば、完勝してみせなさい」


「……御意に」


「全員お下がりなさい。呼ぶまで誰も立ち入らぬように、よろしいですわね?」


「「「ハハァッ」」」






 ようやく静けさで満たされる。



「はぁ~~~~~~~~~~」



 長い長い溜息を吐き出す。


 死ぬほどの退屈の方が、実際に死ぬよりも遥かにマシ。


 何故、今代で事が起こってしまったのかしら。


 魔王としての重責が、否応にも圧し掛かってきますわ。


 人界の制圧は魔族の悲願。


 いえ、魔界に住まう全ての弱き生物にとっての悲願かしら。


 地上に出られるのは、ほんの僅か。


 限られた強きモノだけが有する権利。


 殆どのモノは、地下で一生を終える。


 それが常。


 何百年過ぎようが、変わることの無い摂理。


 例え魔王であろうとも、たがえることは容易ならざること。


 居城がある魔都を拡げることもまた、容易には成し得ませんわ。


 外敵に対抗するだけで手一杯。


 少なくない犠牲も出ておりますし。


 ゆえの人界侵攻なのですけれども。


 元より乗り気ではないのですが、成さねばなりませんわ。


 世界を隔てる世界樹が、もっと強固であったならばと、思わずにはいられませんけれども。


 今のままでも良かったですのに。


 干渉し合わなければ、争いなど生じませんもの。



「はぁ~~~~~~~~~~」



 吐けども吐けども、陰鬱な空気は取り除けない。


 いつまでも、衝突は回避できないでしょうね。


 いずれ必ず、大きな争いが生じてしまいますわ。


 敵も味方も、双方犠牲など出ずに、事が収まれば良いですのに。


 人族の用いた何か。


 まかり間違えば、こちらが危ういですし。


 どうしましょう……どうすればいいのかしら……。


 初代様。


 ご先祖様は、どうお考えになられていたのでしょう。


 初めて人界に侵攻を果たし、その後、何故だか中断なされましたのよね。


 何を思われていたのでしょう。


 どのようなお考えの末に、侵攻の手を止められたのかしら。


 長く生きるドラゴンに尋ねてもみたのですけれど、知らぬと返されるばかり。


 一方、先代は好戦的な方だったとか。


 人族への侵攻を試みたが、その際に、世界樹群が現れたそうな。


 精霊とやらの仕業とまことしやかに噂されておりますが。


 …………待ってくださいまし。


 つまり、精霊は争いを良しとはせず、介入してみせたのだとしたら?


 精霊と協力できたなら、今回の争いも回避できるかもしれませんわ!


 試してみる価値はある……気がいたします。


 今までは、世界樹への干渉すらも叶いませんでした。


 けれども、今ならばどうでしょう。


 一本とは言え、欠けた状態は万全とは行かぬはず。


 【転移】ならば、口煩いお供を連れずとも行動できるでしょうし。


 側近が居ると、余計な真似を仕出かすに決まっていますわ。


 行動を起こすなら、今。






 空から見下ろせば、確かに世界樹の一本が倒れていた。


 これを人族が成したんですの⁉


 しかし、倒れた先は人族の領域ですわよね……。


 まさかとは思いますが、犠牲を厭わぬ野蛮な方々なのかしら。


 だとすれば、脅威度は更に増しますわ。


 見た限り、未だ境界を越えてはいない様子。


 時間が経てば、精霊が世界樹を復元してみせるかもしれません。


 そうそう、目的は精霊にお会いすることでしたわね。


 こうして、今までは不可能だった接近も叶いましたし。


 どうにか見付けて、話をしたいところですわ。


 ヨロヨロと中空を移動する。


 魔法の封印も解けているようですけれども。


 お蔭で飛べますが、久々過ぎてどうにも不安定ですわ。


 と、樹上に幾つか動く存在を見付けた。


 アレが精霊でして?


 十分に接近してから、大声で呼びかけた。






某VTuberさんの動画を見続け、お嬢様口調を学びました。

100点満点のあの方です。

慣れない所為か、普段の文章の2倍は時間掛かってます(;''∀'')



本日はあとSSを5話投稿します。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』 完結しました!

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