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箱庭の怪物たち  作者: 暫定とは
プロローグ『神代』
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1

 太古の昔、名もなき世界の始まりに、二つの極星(きょくせい)だけがあった。


 昼を司る黄金(こがね)の星、(すなわ)ちアステラ・クリューソス。

 夜を司る白銀(しろがね)の星、即ちアステラ・アルギュロス。


 この極星、この名もなき世界に六頭の聖なる獣を生み出す。

 これ即ち火のサラマンダー、水のウンディーネ、風のシルフ、土のノーム、闇のプリマギア、光のルーメン。

 また、これを従える六人の(あやつ)(びと)もあり。

 これ即ち火のガイナス、水のミューズ、風のフィオーネ、土のジランド、闇のオルディナ、光のアルバトレ。


 聖なる獣は与えられし元素の力を以て、世界に色と形を持たせた。

 操り人は幾多もの〝始まりの種子〟を()き、世界に命の営みを(もたら)した。


 種子は蒔かれればその地に結び付き、発芽するとそこへ(つが)いの生命を生んだ。

 生命は喰らい合い、交わり合い、新たな生命を生み育て、やがて朽ちては地に還った。

 これを繰り返し、いつしか世界は生と死の豊かなる循環によって満たされた。


 創世は滞りなく、運命に導かれるまま成ったかに見えた。


 然し、これも運命の導きか、これら天地の創造を、世界の裏側より黒き凶星(きょうせい)が見つめていた。

 無を司る黒鉄(くろがね)の星、即ちアステラ・マヴロス。

 凶星は厄災を生み、厄災は開かれた門より世界そのものを飲み込まんとした。


 聖なる獣と操り人、極星と共に力を結集し、この厄災を封じ込めるも滅することは叶わず。

 平穏は(なが)く続いたが、幾星霜(いくせいそう)を経て再び、世界は厄災の門に晒される。


 聖なる獣と操り人、そして極星には協約があった。

 再び門が開くことあらば、一度目と等しく力を結集し、等しく門を封ずるべしと。

 然し協約は守られなかった。凶星に魅入られし裏切者がいたのだ。


 狼狽(うろた)えの()に門は広がりて、最早何人(なんぴと)も封ずるに足らず。

 如何(いか)にかと導き出された苦肉の策は、始まりの種子の駆使であった。

 本来の用途とは異なれど、ほかに為す術もなしと(みな)これを受け入れる。

 操り人は種子を放ち、門は種子によって封じられた。


 然しこの時、想定とは異を為す事態が起こった。

 種子は門へと結び付くと、厄災の力に蝕まれながらも、これを超克(ちょうこく)し、受容し、新たなる生命として地に堕ちたのだ。

 人を恨み、人を憎しみ、人を喰らいしこの新たなる生命、人々はこれを悪しき獣――即ち魔獣と呼んだ。


 魔獣は(またた)く間に勢力を広げ、やがて世界を覆い尽くした。

 進化と共に様相を変え、いつしか絶大の力と巨躯(きょく)を持つ、魔獣の(おさ)なるものも出現す。

 数えるに六頭、これら魔獣の長は各地にて人の里村(さとむら)蹂躙(じゅうりん)した。


 六人の操り人、これら魔獣の長と戦い、果たして打ち破ったとも敗れたとも聞く。

 時の流れと共に風化し、細々なれど語り継がれ、やがて彼らは伝説となった。

 どれだけの時が流れたか、いつしか彼らをこう呼ぶ者やあり。


 運命を司る朱鐡(あけがね)の星、――即ちアステラ・エリュトロス、と。

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