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エピローグ

ハリス王国の国王ゼルダスは、ミルデルト王国が魔王の爪痕が酷く国全体が疲弊しており、シャルディア王女と勇者オルトの結婚式が派手に行えないだろうという事を気の毒に思ったのか、結婚の祝いをハリス王国で行うと言う事を進言してくれた。

結婚式はミルデルト王国で半年後に地味に行うが、披露宴を先に派手にハリス王国で行おうという話である。話であるのだが…


闘技場のような広場で、各国の王族や有名人を招待したらしく…

どうも勇者オルトとシャルディア王女の披露宴だけではなくて、催し物を行うらしい。


当日、オルトは驚くべき催し物の内容を聞いた。


エリオットからである。


「何でも、5対5で戦うとの事だ。」


オルトは驚いて、


「誰と??どのように?今日は俺とシャルディア様の披露宴ではないのか?」


ジオルドが腰の剣を手に取りながら、


「模造剣で戦うそうだ。勿論、俺とエリオットと勇者殿は一緒のチームだがな。」


すると、テリアス・アシュッツベルク公爵が一人の青年と共にやって来て。


「私もこちらのチームに参加する事になった。そして…紹介しよう。こちらのお人は、英雄ディストールだ。」


黒髪の背の高い黒騎士の格好をした英雄ディストールは微笑んで。


「ディストールだ。よろしく頼む。」


オルトは右手を差し出して、ディストールの手を握り締め、


「英雄殿。よろしくお願いします。」


そしてオルトはエリオットに聞く。


「相手は誰なんだ。」


エリオットが指を差せば、何とも言えない覇気を纏った一団が見えて、


「あの中央に立っているのが、マディニア王国のディオン皇太子だ。破天荒の勇者と言われている。隣にいる金髪の凄い美形がローゼンシュリハルト騎士団長。あの赤毛の長髪はディオン皇太子の右腕と言われているミリオン・ハウエル。魔族だな。

背の低い幼顔の男は伝説の勇者ユリシーズ。隣に立っているのはグリザス・サーロッド。死霊の黒騎士だ。後、クロード・ラッセルとか、勇者ファルギリオンとか色々有名人がいるが、今回はあの5人が出てくるだろうな。」


英雄ディストールは4人に向かって、


「一番強いのはディオン皇太子だろう。私が相手をしよう。」


エリオットは、連中を見渡しながら、


「それじゃ俺はミリオン・ハウエルにするか。ジオルドは騎士団長のローゼンがいいか?」


テリアスが困ったように、


「私が死霊の黒騎士か。この中で一番腕が劣るのは私だ。自信がないな。」


そこへエリオットの妻、サリアがやって来て。


「ならば、私が代わりに出てやろうか?アシュッツベルク公爵。」


「いや、自信はないが、私は男だ。やるしかあるまい。」


残るは勇者ユリシーズである。小柄で童顔な男は強そうには見えないが。


オルトは頷いて、


「勇者ユリシーズが必然的に俺だな。あんな小さな男に負けたくはないが、彼は伝説の勇者だ。ここは頑張らねばならないな。」


相談は終わった。


いよいよ、マディニア王国の5人と、勇者オルト達5人との戦いが始まった。


オルトは勇者ユリシーズと激しく打ち合う。

童顔のこの勇者の剣は鋭くて、受けるのがやっとだ。


だけど、凄く楽しい。


「勇者ユリシーズ。凄い腕だな。俺はとても楽しいっ。こんな楽しい想いをしたのは初めてだ。」


ユリシーズも剣を振るいながら、


「俺も楽しい。勇者オルト。もっともっと打ち合おう。」


シャルディア様の声がした。


「頑張って。オルト様。応援していますわ。」


ああ…花嫁姿のシャルディア様が客席から。

なんて綺麗なんだ。

ここは勝たないと。


その頃、エリオットもミリオン・ハウエルと剣で打ち合っていた。

騎士団200名から逃げきったエリオットの剣の腕もかなりのもので、

ミリオンは模造剣は普通の大きさの剣なので、扱いにくそうで。


「俺の聖剣は大剣なんだ。くそっ、こんなに手こずるとは。俺としたことが。」


エリオットはニンマリ笑って、


「俺としてはラッキーだな。ほら、行くぞ。ミリオン。」


ガンガンと追い詰める。


ミリオンは背後に下がった。そしてついに、剣をエリオットに鋭く突かれて、弾かれてしまう。


「俺の負けだ。くそっ。」


ミリオンは負けを認めた。


エリオットは胸を張って。


「まずは一勝だな。他の連中は??」




テリアスは逆に黒騎士グリザスに押されていた。

グリザスは200年前から戻って来た死霊の黒騎士である。

戦経験が豊富で、剣の腕もかなりの物だ。

一方テリアスは公爵であり、戦経験は全くと言っていい程ない。

剣技はある程度、たしなんではいたが、戦経験が豊富なグリザスと比べるとどうしても劣ってしまう。


頑張って防いでいたが、ついに押されて、剣を弾かれてしまった。


「まいったな。強い…君は…」


「いや、アシュッツベルク公爵こそなかなかの腕だった。」


二人は握手を交わす。




一方、ジオルドはと言うと、ローゼン騎士団長と戦っていた。

ローゼンシュリハルト・フォバッツア騎士団長。あまりの美しさに生きているうちから実在が危ぶまれ伝説と言われた男である。テリアスと比べるとどちらも遜色つけがたい美しさである。


ローゼンもジオルドも正統派の剣技の持ち主である。

共に激しく打ち合って、そして共に良い好敵手に出会えたと敵でありながら、

互いに尊敬の念を抱いた。


ジオルドが攻撃を繰り出しながら叫ぶ。


「さすがローゼン殿。素晴らしい。俺は尊敬する。」


ローゼンもその剣を受けながら、


「私も同感だ。これほどまでに正統派で素晴らしい剣技の腕の男に出会った事はない。もっともっと剣を交えたい。」


二人はかなり激しく互いの剣を交えていたが、ちょっとした隙についにローゼンはジオルドの剣を弾いた。


「くそっ。俺の負けだ。良い戦いだった。」


ローゼンはジオルドに右手を差し出して。


「こちらこそ、素晴らしい戦いだった。有難う。ジオルド殿。」


二人も握手を交わす。


オルトはそんな様子を目の端で見ていた。


エリオットだけが勝って、ジオルドとテリアスは負けてしまった。

二対一で負けているぞ。


そしてもう一組は、最強の二人、破天荒の勇者ディオン皇太子と英雄ディストールである。


目にもとまらぬ速さで剣を打ち合う二人。


互いから発せられる物凄い覇気に観客から失神者が出る始末で。


模造剣で打ち合っているのに、空には黒雲が渦巻き、冷たい風が吹き、

オルトとユリシーズの打ち合いより、そっちの方が主役という感じの打ち合いであった。


ディオン皇太子が叫ぶ。


「これ程の相手とは。さすが英雄ディストール。凄い物だ。」


ディストールもディオン皇太子を睨みつけながら、


「この勝負、負ける訳にはいかない。ディオン皇太子。覚悟しろ。」


再びぶつかる二人。


二人の覇気についに会場に雨が降って来た。


見物人は皆、慌てて屋根のある所に移動する。


オルトはシャルディアの事が心配になった。


ウエディングドレスを着て、オルトの試合が終わるのを待っていてくれたのだ。

この雨でびしょびしょになってしまうのではないのか。


客席を見て見れば、雨に降られながらもシャルディアは祈るようにオルトを見つめて。


「オルト様。わたくしは貴方様が勝つと信じています。勝って、わたくしと結婚致しましょう。」


「シャルディア様。必ず勝ちます。」


オルトはうおおおおおおおおっーーーと叫んで、ユリシーズに斬りかかる。


ユリシーズはあまりの気迫に押されてしまって、ついにオルトの渾身の一撃に、剣を弾かれてしまった。


オルトはシャルディアに向かって叫ぶ。


「勝ちました。シャルディア様。」


「さすが、オルト様。素敵ですわ。」


雨は土砂降りになって来た。


破天荒の勇者ディオン皇太子と、英雄ディストールの激しい戦いが、嵐を呼んでしまったのだ。


皆、屋根の下に逃げ込みながら、エリオットがポツリと呟く。


「あの二人、まだ戦っているのか?」


ジオルドも頷いて。


「一番肝心の披露宴がこれでは…出来ないんじゃ…」


そして、シャルディアのウエディングドレスは雨でぐちゃぐちゃになってしまった。

シャルディアはオルトを見て微笑んで。


「凄い雨になりましたわね。でも…わたくしは貴方様の強さが見られて満足ですわ。

本当に貴方様は凄い人。結婚出来るわたくしは幸せです。」


そう言って、抱き締めてくれた。


オルトもシャルディアを抱き締めて。


「俺も幸せです。シャルディア様。一緒に幸せになりましょう。」


二人は熱いキスを交わす。


周りに居た人達に拍手をされて、オルトは幸せだった。


外の雨は更に酷い事になったが、そんな雨の事も気にならない位に…

シャルディアと共に周りの祝福を受けて、とても幸せを感じた。



結局、ディオン皇太子と英雄ディストールの勝負はつかず、引き分けたらしい。


嵐の披露宴の後は、主だった王族達は国に帰ったが、何故かディオン皇太子達や、エリオット達、剣の勝負をした連中、そしてシャルディアやサリア、イデランヌ達が、オルトの故郷に皆で賑やかに来てくれた。


辛い…亡くなった育ての両親や婚約者。皆、魔物に殺されたのだ。

守り切れなかった。

骨が至る所に転がっていて、どれが両親の骨か婚約者の骨か解らない。

だが、そのままにしてはおけない。


皆、骨を拾って、一か所に集め、それを埋葬するのを手伝ってくれた。


皆が一緒だから、オルトはこの辛い作業をすることが出来たのだ。


大きな石を置いて、作られた共同の墓の前で、オルトは、両親や婚約者、犠牲になった人たちの冥福を祈った。


シャルディアがそっと手を握り締めてくれて。


「オルト様。気がすみましたか?まだ、貴方様は死にたいですか?」


オルトは首を振る。


「シャルディア様や、皆のお陰で、こうして皆をお墓に入れて眠らせることが出来ました。

本当に有難うございます。俺はこれからはシャルディア様と共に生きたい。生きていきたい。

何があっても生きて、この国の為に尽くしたいと思います。」


エリオットがオルトの肩をポンと叩いて。


「その意気だ。応援しているぞ。」


ジオルドも頷いて。


「俺達は友だ。オルト殿。いつでも声をかけてくれ。」


「有難うございます。」


ディオン皇太子も、英雄ディストールも、こちらを見て微笑んでいる。


他の人達も皆、温かく見守ってくれていて。



空は晴れ渡っていい天気で。


コリーヌが空を見上げて、


「ああ…沢山の魂が昇って行く。皆、安心して天に帰っていくんですね。

オルト様、有難うって言っていますよ。」


オルトは涙した。


天に向かって叫ぶ。


「俺はシャルディア様と幸せになります。見守っていて下さいっーーー。」




勇者オルトはシャルディアが後に女王になった時、ハレス王国の王配になって、国の為に一生尽くした。

エリオットやジオルド。この時、知り合った人達とは一生を通じてよい友となり、

共に助け合って、楽しく過ごしたと言う。


オルトとシャルディアは子供にも恵まれ、長く生きて幸せな一生を送ったとされている。




完結しました。楽しかった。有難うございます。

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