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シャルディア様に正体がバレてしまいました。

騎士団長ジオルドの別荘に匿って貰う事になった勇者オルト。

いや、邪神オルベルトが本当の名前と正体なのだが、

オルトは落ち込んでいた。


全身黒い鱗に、カラスのような羽、羊のような角、金色の瞳に牙の生えた恐ろしい姿から

人間に戻る方法が解らない。

念じてみたが、恐ろしい姿のままなのだ。


このままでは王宮で待ってくれているシャルディアに会う事が出来ない。


ジオルドとエリオットが、共に別荘に泊まってくれた。


ジオルドは食事を作って、持ってきてくれて。


「その姿をエリオットが何とかしてくれるだろうから。ともかく食事だ。勇者様。」


エリオットも頷いて。


「もうすぐ、親戚が来てくれるから、何か解るかもしれない。だから、飯を食おう。

後、酒も飲もう。」


ドンと酒をオルトの目の前に出すエリオット。


ジオルドがエリオットに向かって。


「酒の失敗を忘れたか?酒の失敗で知らない女どもに身ぐるみはがされて修道院送りになったんだぞ。ともかく、酒はもう飲まないと妻に約束した。」


「ここはお前の別荘だ。周りに失敗を犯すような女もいない。久しぶりに飲もう。勇者様も。」


「有難う。エリオット殿。ジオルド殿も。飲もう。」


3人で、飯を食べながら酒を飲む。


エリオットとジオルドは酒を飲むと嫁の悪口が出るタイプみたいで、


酒をぐいっと煽りながらエリオットが、


「勇者様。勇者様は女王様の王配になるのだろう?それって大変だぞーー。妻が王族っていうのはそれはもう尻に敷かれてだな。」


ジオルドも大いに頷いて、


「俺は妻は王族ではないが、俺自身、婿養子でな。それはもう、結婚なんてするもんじゃない。窮屈でたまらんぞ。」


エリオットは驚いたように、


「ええええ?お前、結婚に後悔していたのか?」


「いや、後悔はないが…。窮屈なのは確かだ。娘は可愛いし、妻は愛しいが…。」


オルトは思った。


「そういうものなのか?俺はシャルディア様が愛しくて愛しくてたまらないが。」


エリオットがオルトの肩をポンと叩いて。


「想いも3年経てば冷めてくるし、一生、熱いままの愛なんてあるのだろうか。と俺は思うぞ。」


「それでも俺は…シャルディア様と結婚したい。」



その時、魔法陣が床に展開されて、一人の金髪の少女が現れた。


「スーティリアにお任せよーー。何よ。忙しいのに、何用よ。エリオット。」


「実はだな。勇者様が邪神の姿から戻れないんだ。何か方法はないか?」


スーティリアと名乗った少女は、オルトの傍に来て顔を見上げて、


「あらら。邪神が勇者に選ばれるなんて、珍しいね。ミルデルト王国の勇者様だったっけ?」


「ああ。そうだ。」


「それならさ。お助け聖女様にお助けして貰ったらいいんじゃ。聖女様って癒しの力が強いんだよね。だから助けて貰えると思うよ。」


「聖女様がシャルディア様なんだ。正体を知られたくない。婚約破棄をされたらどうするんだ。」


涙がこぼれる。


シャルディア様に嫌われたくない。

愛しているから。


スーティリアははっきりと、


「でもさ。隠したままにしておくのは、まずいと思うよ。いつかバレるし。ここは聖女様に、シャルディア様に頼んだら。」


エリオットが、スーティリアに、


「シャルディア様を連れてきてくれ。」


「了解。」


「待ってくれ。俺の正体を言わないで。」


「無理だからーー。では行ってきまぁす。」



オルトは怖くて怖くて、ベッドに駆け寄ると布団を被って潜った。

こんな姿、シャルディア様に見られたら。


エリオットとジオルドが心配そうに、声をかけてきて。


エリオットが、


「さっきはすまん。だがな。スーティリアの言う通り、隠したままにはしておけないぞ。」


ジオルドも同意して、


「ともかく、まずはシャルディア様にもとに戻して貰ってだな。それから、話し合いをした方がいい。」


勇者である前に邪神だったなんて…


シャルディア様に嫌われてしまう。




布団に潜って震えている邪神って自分位ではないのか…


勇者だって布団に潜って震えている事はないだろう。



しばらくすると、シャルディアの声が聞こえてきた。


「まぁ、勇者様、お布団に潜って。わたくしに顔を見せて頂戴。」


「嫌だっ。シャルディア様に顔なんて見せられません。俺は…」


「お話は聞きましたわ。どんな姿でも貴方が例え、邪神であったとしても、オルト様はオルト様でしょう?違いますか。ですから…お顔を見せて頂戴。」


オルトはおずおずと布団から顔を出せば、シャルディアは微笑んで、


「まぁ。さらに男前ですわ。素敵。」


「え????」


「元に戻したくはないけれども、仕方ないわね。」



シャルディアが額に触れると、身体が暖かくなって、オルトは元の人間の姿に戻ったのであった。


そして、シャルディアは、置いてあった聖剣を手に取って、


「それじゃ、これはわたくしが又、預かっておきますわね。」


聖剣はペンダントに再び姿を変える。


それをシャルディアは首に下げる。


エリオットがシャルディアに。


「別の邪神が勇者様を狙っている。仲間に引き込むと言っていた。どうしたものか…」


シャルディアはきっぱりと、


「これはお助け聖女として、勇者様と共にその邪神を倒さなければなりませんわね。」


スーティリアがニコニコ笑って、


「さすが、お助け聖女様。」


「オホホホホ。わたくしは正義の味方ですもの。オルト様。どうか、正義の為にも、立ち上がって下さいませ。」


「しかし、俺は邪神なのです。」


「邪神の前に貴方様は勇者オルト様。そうではございませんか?」


そう言うと、シャルディアはオルトの頬にチュっとキスをしてくれた。


そして手を両手で握り締めてくれて、オルトの耳元で囁く。


「わたくし、悪者をほってはおけないそんな貴方様が、好きなのですわ。」


ああっ…シャルディア様が…好きって言ってくれて…


「勿論です。悪者をほってはおけません。俺はっ。勇者オルトとして頑張ります。」


宣言してしまった。


エリオットとジオルドが、


「シャルディア様、勇者様を操るの上手だな。」

「未来のお二人の夫婦の在り方を目の当たりにしているようだ。」


二人が何やら言っているようだが、オルトは再びやる気が出た。


俺は勇者オルト、必ず邪神を倒して、シャルディア様の期待に応える。


決意を新たにするオルトであった。


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