6、初めての訓練~グリーンヒル先生は私の師匠~
6、
☆
うーん…。
私は思い切り伸びをしてベッドから降りた。時間は午前4時半を回ったところだ。
私は日課の武具の手入れを素早くこなす。そして急いで身なりを整えると、走って訓練所へと向かう。
学園生活では、自分に合った指導教官を選ぶ事ができる。
私の親友レヴィちゃんが揚先生を選んだように、である。
私、トリスティーファ・ラスティンの場合、それはグリーンヒル先生だった。
グリーンヒル先生は、試験の時の勇姿、気遣い、そして何と言っても、狼鷲人という種族故の見た目(※狼の上半身、鷲の翼ありの全身毛皮と羽毛に包まれたモフモフな外見の筋肉質な殿方。)が、人間社会に不慣れな私には、とても安心感を与えてくれるからだ。
更には、当初の目的である、武器防具の扱いというかそれらに見合った身体の動かし方・戦闘の指導者としての腕前も超一流だというのだから、他に選択肢はない、ともいう。
そんな訳で、グリーンヒル先生のご指導を賜っているのだが…、訓練の開始時間は朝早い。早朝5時からの開始に合わせて、起床、準備を済ませてグリーンヒル先生を待たなければならないのだ。
訓練所に着くと、既にグリーンヒル先生が待っていた。
「良く来たな、トリス。」
小走りでグリーンヒル先生の傍まで寄って来た私に、先生は言った。
「おはようございます、グリーンヒル先生。少し遅かったでしょうか?」
既に先生が来ていた事に驚き、私は尋ねる。
「おぅ。おはよう。トリスは遅れてないぞぉ。私が早いだけだな。指導の前に自分のウォーミングアップをするのも、指導者としての心得の一つだからな。」
ハッハッハッと、豪快に笑いながら、グリーンヒル先生は言った。
「よかった、遅れたのかと思いました。」
「大丈夫だぞぉ。」
グリーンヒル先生はそう言い、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
邪魔に為らないように後ろで一つに括った髪はボサボサになってしまった。だが、私は、なんだかくすぐったい気持ちになって嬉しかった。
☆
「うむ、時間だな。」
時間を確認したグリーンヒル先生は、私の方に向き直り、聞いた。
「トリス、戦闘に必要なものが何か分かるか?」
しばらく考えて、
「戦う意思、ですか?」
私が答えた。すると、先生は、にこりと笑い、ぽんぽんと私の頭を叩いた。
「うむ。それも大事だな。だが、それだけでは生き残れないぞ。まず必要なのは、武器をきちんと持つ為の筋力・膂力そして、戦い抜く体力だ。勿論、戦うための意思やイメージも大切だが、お前に今一番必要なのは、体力アップのための走り込みと、筋力アップの為のトレーニングだ。その後、戦うための技術を教える事になる。」
そういって、先生は、一枚の紙を私に手渡した。
「まずは毎朝、そこに書いてあるメニューをこなして貰う。戦闘技術については、午後に行う。いいな。」
その紙には、
・走り込み12km
・腕立て伏せ100回
・スクワット20回
・腹筋300回
・背筋50回
…等が書かれていた。
私はちょっと絶望的な気分になりながら、先生の終了の合図まで、精一杯メニューをこなすのだった。
☆
早朝の訓練を何とかこなし、私はシャワー室に直行した。ハードな運動により、体中汗まみれになり、大変気持ち悪かったからだ。
30分後、こざっぱりとした私は、食堂へ向かう。メニューを注文しようとしたら、後ろからグリーンヒル先生に声をかけられた。
「トリス、朝はよくやったな。戦闘向きの体に必要な食事、というものもあるので、軽く教えておく。疲労の回復には、すっぱいもの、レモンとかグレープフルーツとかだな。筋肉をつけるには、良質なたんぱく質、あー、鶏のササミ、胸肉、チーズ、豆類などが有効だ。脂身は控えるように。後は栄養バランスを整えて、食べ過ぎないことだ。わかったな。」
矢継ぎ早にまくし立てて、私の頭をぽんぽんと叩くと、先生はさっさ行ってしまった。
その先には、揚先生と経済学のジョン先生がいた。
レヴィちゃんの情報によると、この先生方は皆、30代という事でよく一緒に居るとの目撃例があるらしい。先生方が、何を話しているか聞こえなかったけれど、ずいぶんと仲が良さそうに、私の目には映った。
私も、仲の良い友人がもっとできるといいな、と思いながら、朝食をとるのだった。
リメイクなので、内容的にはあんまりかわらないはずです。
なので、暫く予約投稿してます。