34、
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それは、突然の事だった。
秘密の部屋で、皆で雑談をしていた最中の事。
秘匿されているはずの入り口が、音を立てずに、慎重に外から開かれた。
「楽しそうな所、すまない。急で悪いんだが、俺にもこの部屋、使わせてくれよ。ヤバい拾いモノをしちまったんだ。」
そう言って、目深にフードを被った小柄な人物を連れて素早く室内に入ってきたのは、同じ楊先生の講義を受ける、カーティス君だった。地質学に特化した戦術を得意とする彼が私達のもとを訪れるのは珍しい。
と、言うより、問題児だらけの第47期生の中でも指折りの跳ね返りばかりと言われているらしい、私達13班に接触してくる同期が、そもそも珍しいのではあるのだが。
「おう、カーティス、そんなに慌てて、どうしたんだよ。俺らんとこに来るなんて珍しい事もあるじゃねぇか。」
そもそも、秘匿されているはずのこの場所を探り当てたカーティス君に驚くべきでは無いかと私は感じたのだが、アルヴィン君はそれには一切触れずに、入ってきたカーティス君に話しかける。
「アルヴィン。事情が事情だからな。悪いかとは思ったんだが、緊急事態だ。許せ。」
「ふぅん。んで、緊急事態って何だよ」
「この方を匿って欲しいんだ。」
「厄介事か?」
「まぁな。」
「理由を聞いてもいいか?」
「あぁ。どうせ皆、無関係ではいられないのは確かだしな。」
そう言って、カーティス君は連れていたその人のフードを外した。
「自分についての記憶の一切を忘れているらしい。生活する上での知識なんかはしっかりあるんだが、それ以外は覚えていないそうだ。この方がだぞ。異常事態で、緊急事態、だろ?」
心底困った風を装って、この大学に起こっているであろう異常事態の根源とも言える鍵を連れて来たカーティス君は、とても楽しそうな気配を漂わせて、そう言った。
短くてごめんなさい。




