【幕間:■■■の裏側の外で】
【幕間:■■■の裏側の外で】
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ハイルランドのある【世界】の理として、確認されている事の一つに、魂の輪廻転生がある。魂は輪廻を巡り、転生するのだ。時には、転生前の記憶を有する場合もある。前世の記憶は、完全であったり、違ったりもするし、全く覚えていない場合もある。人生の半ばで思い出す場合すらある。一般的には、前世の記憶は転生の際に真っ白に洗い流されて別の人格として生まれ変わるとされている。
魂は、時を超えて過去も未来も無く色々な所に転生する。魂に、時の概念は無いのだ。故に。何人もの、同じ魂の転生体が同時に存在する事も珍しくは無い。
しかしながら、魂とは、同時代に幾つも存在したとしても、魂そのものが分裂するわけでも、統合するわけでも無い。
ただ、並列に存在するだけでなのである。
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器と中身は、引き合う様に出来ていた。
否。
正確には、器には、その裡に容れるべき中身を定めるまでの、仮初めの意識が必要であった。
元々の計画では、器の基となった素体に宿っていた魂を、器を動かす基盤とする筈であった。
然れど、魂は既に素体から離れ、輪廻の輪の中に還った後だった。
普通であれば、素体に合う魂を内に入れ、動かせば良い。
けれども、この素体には、僅かな魂の記憶が残っていた。この素体に宿っていた魂は、少々特別であった。魂としての力が強く、その魂を宿していた素体には、魂の残滓とも言える名残があったのだ。
その、残滓があることが、まず初めのイレギュラーだった。
困った事態も起こっていた。普通の魂を器に入れても、動かないのである。これがふたつめのイレギュラーである。
器に染み着いた前の魂の残滓と、器の性能が高過ぎて、並みの魂では器を持て余してしまう。最終的には、それくらいの性能を必要とする器に育てなければならない。それこそが、この器を創る目的なのだから。
だが、「まだ」その時ではない。知られる訳にはいかない。
故に、細工を施す事にした。
器の核である理の違う【世界】の権能を埋め込む事で、隠すのだ。
まず、この器に、幾重にも厳重な仕掛けを施し。そして、計画を遂行させるべく見繕った手駒に、それと判らない様に使わせる事にした。
本来なら器を動かすに足りない素体の意識に細工を施して、薄い意思を持たす。七つに分かたれた◆◆◆の一部を使い自我とさせた。
◆◆◆を復活させたい勢力の動きすらも、●●●にとっては娯楽に過ぎない。
これからどんな物語が織られてゆくのか、●●●は予定調和に無い展開を望み、ほくそ笑む。
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巧い具合に、意思の薄い器は、虚ろであるが故に高性能であると、手駒達は認識した様だった。
器は高性能なのが良い。
いずれは、●●●か現界する為に。
今回の幕間はこれでおしまいです。
次はちゃんと大学でのお話に戻る予定です。




