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トリスの日記~私の世界の歩き方~  作者: 春生まれの秋。
32/37

32、

32、




強大な力の爆発は、次元を揺らす。時空を揺らす。時間も、また。


【闇の鎖】を打ち砕いた衝撃で、『()』達は吹き飛ばされた。




トリス()ティーファ()ラスティン()』を象創る(かたちづくる)全てが、闇で覆われた【奈落】から、【奈落】で蓋をされた【世界】から、唯一神アーの創りし【世界】から、認識出来得る【世界】の外へと弾き出された。




それは、永遠(とわ)であり。

また、刹那(せつな)でもあった。


時間という尺度もまた、存在しない、【外側】へと、弾き飛ばされたのだ。



それも。



身体(うつわ)意識(なかみ)すらもばらばらに。






ぐらりと揺れる意識。

上も下も右も左も前も後ろも無い、ぐちゃぐちゃに意識を搔き乱す衝撃に、私は必死に抗った。




私の中に有ったのは、ただひたすら、アリ君達が待ってくれている、【あの日の放課後】への強い執着だった。


自分自身がどうなっているかなんて、少しも考える余地がない程に。

唯々。友人として()を心配してくれる人に、私ごときが心労をかけてはいけないと。

交わしてくれた『約束』をまもらなくては、と。

そんな事ばかりが、()という意識を支えていた。



今思い返せば、そのお陰だったのだろう。

私は【奈落】に呑まれる事無く、気付けば元の場所に戻って来ていた。

体感的には、【奈落】から【現世】への帰還は、ほんの一瞬で。

着地に失敗した時みたいに、身体に感じる感覚と意識で感じる感覚に、微かな振れがあった様な違和感が有っただけで。



奇妙な事に、【奈落】に行く程の大冒険から帰って来てみたら。【奈落】まで行かなくてはならなかった事件そのものが無くなっていた。

神話の中に巻き込まれた様な出来事そのものが、私達、臨時で組んだパーティーメンバーの記憶の中にしか、残らなかったのだ。

しかも。不思議な事に、その詳細も、ハッと意識が切り替わった瞬間には、幻の様に思い出せないモノへと変貌したのだ。

思い出せない事を疑問に思う事さえも、出来ない有り様へと変わっていったのだ。

でも確かに。『()は【()()】へと行った事がある』と言う事実だけが、私の中に刻まれた。

…〖()は【()()】に行った〗という認識を、私は確かに、実感として持ってしまったから。




それは、【消滅したいという願望】が消えない私には、救いであり、抗い難い誘惑でも有った。

【奈落】は魂すらも消滅させてしまう闇の底。

()】という存在全てを消したい私には、

【奈落】は禁断の果実そのものである。

神々の欠片を宿す者(ピースメーカー)】の御業の中には、一度行った事のある如何なる場所にでも転移出来るという力もある。

もしも、その力を得てしまったら。私は自分を消滅させる為に、自分の自由意思で、【奈落】へと行けてしまうという選択肢が、無意識の裡に、しっかりと刷り込まれてしまったのだ。



意図せずに、仄暗い安心感を得てしまった私は、脆い脆いその実感を支えとして、けれどもその安心感を晒す事の無い様に振る舞いながら、【あの日の放課後】へと帰還する。


アルバイトと言う名目の冒険そのものが無かった事になったので、放課後の憩いの場を探すという新たな探険に心踊らせながら。







「ねえねえ、皆!新しい拠点、見つかりました?今日の用事が無くなっちゃったから、集まってるならご一緒したいのですが。」


大学に着くなり、食堂で、クレアさん達に話しかける。


「あら、トリスちゃん、ナイスタイミングね。ちょうどアルヴィン君が探し当ててくれたみたいよ♪」


「ちゃんとボクが精査したからね。危ない罠は解除出来てるよ。」


「男どもは先に行っておりますわ。トリスさんもおいでになった事ですし、わたくし達も、そろそろ参りましょうか。」




何時ものメンバーと、何時もの様に。

今日も楽しい時間を迎えられる。



続いていく日常に心をときめかせて、私は彼女等と新しい拠点を目指した。














中々更新出来ずに申し訳なく思ってます。

お目汚し失礼します。



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