29、
お待たせして申し訳なくおもいます。
只今、当方、スランプ気味です。
何度書いても文章が纏まりません。
というより、意識が朦朧とする日々が続いています。
私、生きてるのかな?
29、
★
【〖告知:学生の研究室立ち入り禁止について〗
本日より、学生諸君は、担当指導教官及び如何なる教官の執務室及び研究室への立ち入りを禁止する。
期限は、本日より一カ月を予定とする。
禁を犯した者は、学生及び教官共に、如何なる理由であれ、ボーグワース総合大学より除籍する事とする。
尚、質問等は受け付けないものとする。
ボーグワース総合大学 理事長 ウララ・ペンデュラム
】
★
☆
ざわざわと、不穏な空気を感じていた矢先に、掲示板に貼り出されていたこの告知に、私は真っ青になった。
講義を別とすると、私が安心して過ごせる構内の場所は、そんなに多く無い。
気の置けない友人達とですら、ちょっとした事で落ち込む私である。
楽しく人間社会を学べる友人達との集合場所たる楊先生の研究室と、落ち込んだ私を癒してくれるグリーンヒル先生の研究室で行われる心理療法の時間を持て無いのは、余りにも致命的だ。
血の気の引く想いで告知内容を何度も凝視する。
何度も確認するが、内容は変わらない。
ショックを受けたまま、ふらふらと食堂に向かっていたようで、気付いたら食堂のおばちゃんがカウンター越しに此方を見ていた。
「はい、お待ちどう!あんたちっちゃいのに、ぼ~っとしちゃって!!何がショックかはおばちゃんには分からないけどね、取り敢えず、美味しい物をたんっと食べて、元気を出すんだよ!!おっきくなるように、ミルクもタップリついであげるからね!!!」
有無を言わせぬ勢いで、目の前のトレイに山盛りのご飯と、大きなジョッキに注がれたミルクが乗せられて、
「ほら、シャキッとおし!」
忙しいであろう最中に、私にサービスしてくれた。
そんな気遣いに、はっとして、
「あっ、ありがとうございます。頂きます。」
私はおばちゃんにお礼を言う。
「良いんだよ!!学生さん達が元気なのが、おばちゃんには嬉いんだからね!ほら、あっちで待っているの、あんたのお友達じゃないかい?あたしに構ってないで、さっさとお行きよ。」
とっさに、
「ありがとうございます」
と、お礼を言おうとするが、その前に、おばちゃんは、さっさとカウンターの奥へと引っ込んで行ってしまった。
気にかけて貰えて嬉しくて、でも、ちゃんとお礼が言えなくて、ちょっとまごまごとしてしまっていると。
「トリスさん、遅いですわ。迎えに来ましてよ。」
と、痺れを切らせたレヴィちゃんがお迎えに来てくれた。
私は、導かれるままに、彼女に案内されて席に着いた。
☆
「皆さん、掲示板、見ました?」
席について、ご飯をたべながら、私は皆に聞いてみた。
幸いな事に、今日はまだ午後の講義があるので、放課後の楊先生の研究室での雑談やミニ講座に支障は起きていない。
だが、告知を見るに、今日から私の安楽の地は暫くお預けになるらしい。
1日の終わりの、この時間は、私にとって人間関係を学ぶ為の大事な練習の場であり、貴重な癒しの空間でもある。
なので、皆で集って雑談したり出来る場所が失くなるのは、精神的支柱の喪失に近い。それくらい、苦痛である。
他のメンバーが同じ気持ちであるかどうかは分からないけれど、皆がどう感じているのか、知りたかった。
「見たぜ?正直、楊の研究室に入り浸れないのは痛いよなぁ。」
ガツガツとランチを食べ、ごくごくとコップの水を飲みきったアルヴィン君が言う。
「うむ。私も、誰にも邪魔されない仮眠室を取り上げられるのは痛いな。だから、既に手を打っておいた。」
優雅に食後の紅茶を啜りながら、アリ君が続ける。
ざっと、一斉に皆の視線がアリ君に向かう。
「どういう事ですか?」
楊先生の研究室が使えないこの状況で、アリ君が何を言っているのか分からずに、私は疑問を口にした。
アリ君は、自分を注視する私達の事など意にも介さず、ニヤリと口角を上げると、チャラリと何処かの鍵を取り出した。
「うむ。歴代の先輩から秘密裏に受け継がれている隠れ家の鍵を手に入れててな。暫くはそこで憩うのが良かろう。完全防音・認識阻害対応付の秘密基地、とでも呼称する場となっている。無論、既存の構内地図には無い、教官らの認識していない場だ。」
先読みの得意な(←トリスによる偏見)アリ君は、既に新たな集合場所を準備していてくれた。
「そんな場所が、あるんですか!?」
「ああ、噂にはあるが、実態の掴まれてない場所か。幾つか候補はあったが、どれも見つけるのが困難だとかっていうヤツだな。アリ、良く先輩達から鍵を貰えたな!」
「うむ。とある先輩とのチェス勝負に勝ってな。穏便に譲って貰ったんだ。」
「流石ね、アリ君。勿論、私達も使うけど、構わないわよね?」
「いやですわ、クレアさん。アリ君がわたくし達を差し置いて自分だけの場所として独占するわけ無いじゃないですかぁ~。そうですわよね、アリ君?」
「っかぁ~、頭の出来の違うヤツはやることが早ぇな。早速行こうぜ!」
「うんうん。」
「馬鹿か、貴様らは!どんな状況にでも備えられる様にするのは、優秀な軍師としては当然の行動だろうが!!私が未来に使えるべき主君の役に立つべく練習しておくのは、学生たる今、絶好の機会だからに他ならん!今回、貴様らに使わせてやるのは、ただのついでに過ぎん!それに、その場所の鍵は手に入れたが、問題はここからだ。」
グイッとカップの中身を飲み干して、フウ、と呼吸を整えたアリ君は、衝撃の一言を宣った。
「この鍵の合う鍵穴が見つかっていないんだ。さて、どうしたものだろうな?」
意地悪そうな表情で、一同を見渡すアリ君。
その視線を受けて、アルヴィン君が、キラリと瞳を輝かせる。
「つまり、ここからは、俺とリースの出番って事だな?」
「まあ、そういう事だな。お前達がどれだけつかえるかは分からんがな。」
「言うじゃねぇか、アリ。いいぜ、見つけてやるよ。」
「ふっ、早急に見つかると良いのだがなぁ。凡愚なお前らに、果たして見つける事が出来るのか、見物だな。」
「はっ。直ぐに見つけてやるさ!お前は指でも咥えて見てるんだな!」
アルヴィン君に対して、やけに挑戦的な物言いをするアリ君と、アリ君への雑な返答をするアルヴィン君を見ていて、私は閃いた。
「わぁ、これが、男友達の熱い友情による会話ですね!初めて見ました!感激です!」
物語の本でしか見たことのなかったシチュエーションに興奮して思わず私ははしゃいでしまった。
そんな私を見て、不憫そうに此方を見るクレアさん達の生暖かい眼差しに、とうとう私は気付かないままだった。
先日、コロナのワクチン接種一回目に行ってきました。
左腕が痛いです。
首も痛くなってきました。
暫く安定しない投稿になるとおもいます。