26、
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☆
不安な夢を見てから、気にしない様にしていたけれど。
産毛がチリチリする様な不自然な感じは、少しずつ強くなっている。
初めは、私の精神の不安定さ故のモノかと考えていたのだが。
どうも、そうではなさそうだった。
講義が休講になる事こそ無かったが、先生方が、何やら忙しそうなのだ。いや、ソワソワして、落ち着かない、という感じなのかも知れない。ヒトの感情に疎い私には、明確に、先生方の感情が何なのかは分からない。
だが、先生方の纏う空気が、何だか揺らいでいる、というか、あまり良くない感じになってきている、というか。
世界の僅かな揺らぎが、先生方に集まったのか。
それとも、先生方が、世界の揺らぎを引き寄せたのか。
それは分からなかったけれど。
私は、何だか『ようやく馴染んできたテリトリーが、何者かに乱されている様な』とでも表現すれば良いのだろうか。日々増していく、そんな居心地の悪さを感じていた。
☆
そんな私を見兼ねて、という訳ではなく、単純に、先生方の注意が散漫になっている、というのが主な理由で、アルヴィン君が何時もの問題行動を提示してきた。
「なぁ、この大学の図書館、立ち入り禁止区域があるだろ?見てみたくねぇ?」
「禁止されてるって事は、見てほしく無い物って事なのでは?」
「相変わらず、トリスは規則に固いなぁ。そんなのは、気づかれなきゃ良いんだよ!未知なるモノを探るって、ロマンだろ?」
「えっ?でも、いけないって言われるのには何か理由があるのでは?」
「その理由すら秘密にされるとな、何故駄目なのかの判断がつかねぇだろ?だから、自分の目で確かめるんだよ。」
「?」
どうして、それが規則を破る理由になるのか、私には、全く分からなかった。私の戸惑いを察してか、悪餓鬼すぎるアルヴィン君に思うところがあるのか、レヴィちゃんが反論する。
「そう言って、実は単なる好奇心なのではありませんの?」
「それもあるぜ?だがよ、お宝が眠ってるかも知れないんだぜ?未来の凄腕トレジャーハンターとしてはよ、チャレンジしてみてぇじゃん。トラップを掻い潜っての侵入とか。」
「…気付かれない様に、侵入する…(隠密の訓練になりそうだねぇ。)」
ピクッとリースさんが反応する。
「見たことのねぇ宝飾品とか、」
「宝飾品…」
ピクッとクレアさんが反応する。
「未解読の古文書とか、」
「古文書…(貴重な兵法書があるやも知れんな。)」
ピクッとアリ君が反応する。
「魔法の付与された珍しい武器なんかもあるかも知れねぇんだぜ?」
「珍しい武器…」
ゴクリ、と私が唾を飲み込む。
「見てみたいと、お前らは思わねぇのか?」
「そんなの、当然見たいわよ?」
「当然だな。」
「見たことの無い武器…。」
「な?行くしかねぇだろ?」
「これは、監視するのについていくしかありませんわね。やれやれですわ。」
こんな会話がされたとか、されていないとか。




