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トリスの日記~私の世界の歩き方~  作者: 春生まれの秋。
23/37

23、

23、



私の中の、存在する事への葛藤はあれども、大学での日常は、穏やかに過ぎていっているかに見えた。

学生特有の、多少の好奇心からくる出来事(あれこれ)はあるけど、大事件と呼べる様な案件なんて普通はそうそう起こらない。

そう、普通の年なら、一般的な小さな出来事の積み重ねがあるくらいで、何事もなく、月日は過ぎていくモノなのだ。


しかし、この年、そう感じていた多くのボーグワース総合大学の関係者は、それが、幻想であることを知る。





寝覚めの悪い朝を迎え、それを振り払おうと、いつもより早くグリーンヒル先生の元へと急いだ私を待っていたのは、どこかざわついた構内の空気だった。





(・・・・・?・・・・・なんだか、変?)





得体の知れない、纏わりつく様にねっとりとした負の空気。まだ、不浄にまでは至らない、微かな翳り。


いつ何時にでも、そして何処にでも、確かに世界に存在している()()()が、今朝は何故か、いつもと変わらない容貌(かお)をして、でもどこかいつもより存在感を増した様な、そんな、空気。そんな、違和感。


悪い予感の様な、第6感に僅かに引っ掛かる、そんな、ざわめき。


悪夢の続きから抜け出せない様な、嫌な感覚が、私を居心地悪くさせている。


早くこの気持ち悪さから解放されたくて、グリーンヒル先生を探すが、今日はまだトレーニング場に御出になって居なかった。


仕方がないので、私はさきにトレーニングに打ち込む事にした。







だが結局、本当に珍しい事なのだが、その日最後まで、グリーンヒル先生は、朝のトレーニングに姿を見せて下さらなかった。



不安な気持ちのまま、その日の講義に参加する事になったのだが、構内の空気は、一向に変わる様子がなかった。


教室内で、周囲の気配を探る。

目を閉じて、耳を澄ませる。


私の感覚を研ぎ澄ませ、違和感の出所を探ろと、集中してみる。

けれど私は、人間という種族(ひと)が苦手である。

意思の通じる存在は、等しく『人』と認識してしまうが故に、私は、〈組織を作り集団で社会を形成する〉ニンゲンが、怖い。





これから、《ヒト》として、《私》として、この世界で生きる為に、否。存在する為に、私は学ばなくてはならない。

どうしたら()()でいられるのかを。


生きる意味を。

存在する意味を。



私は何一つ、実感が持てないのだから。


()というものに。





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