23、
23、
☆
私の中の、存在する事への葛藤はあれども、大学での日常は、穏やかに過ぎていっているかに見えた。
学生特有の、多少の好奇心からくる出来事はあるけど、大事件と呼べる様な案件なんて普通はそうそう起こらない。
そう、普通の年なら、一般的な小さな出来事の積み重ねがあるくらいで、何事もなく、月日は過ぎていくモノなのだ。
しかし、この年、そう感じていた多くのボーグワース総合大学の関係者は、それが、幻想であることを知る。
☆
寝覚めの悪い朝を迎え、それを振り払おうと、いつもより早くグリーンヒル先生の元へと急いだ私を待っていたのは、どこかざわついた構内の空気だった。
(・・・・・?・・・・・なんだか、変?)
得体の知れない、纏わりつく様にねっとりとした負の空気。まだ、不浄にまでは至らない、微かな翳り。
いつ何時にでも、そして何処にでも、確かに世界に存在しているそれらが、今朝は何故か、いつもと変わらない容貌をして、でもどこかいつもより存在感を増した様な、そんな、空気。そんな、違和感。
悪い予感の様な、第6感に僅かに引っ掛かる、そんな、ざわめき。
悪夢の続きから抜け出せない様な、嫌な感覚が、私を居心地悪くさせている。
早くこの気持ち悪さから解放されたくて、グリーンヒル先生を探すが、今日はまだトレーニング場に御出になって居なかった。
仕方がないので、私はさきにトレーニングに打ち込む事にした。
だが結局、本当に珍しい事なのだが、その日最後まで、グリーンヒル先生は、朝のトレーニングに姿を見せて下さらなかった。
☆
不安な気持ちのまま、その日の講義に参加する事になったのだが、構内の空気は、一向に変わる様子がなかった。
教室内で、周囲の気配を探る。
目を閉じて、耳を澄ませる。
私の感覚を研ぎ澄ませ、違和感の出所を探ろと、集中してみる。
けれど私は、人間という種族が苦手である。
意思の通じる存在は、等しく『人』と認識してしまうが故に、私は、〈組織を作り集団で社会を形成する〉ニンゲンが、怖い。
☆
これから、《ヒト》として、《私》として、この世界で生きる為に、否。存在する為に、私は学ばなくてはならない。
どうしたら私は私でいられるのかを。
生きる意味を。
存在する意味を。
私は何一つ、実感が持てないのだから。
私というものに。




