18、
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★『少年と剣のお話』
昔々、あるところに、一人の少年がいました。
彼の名前は、アイルハルト。
とても綺麗な金髪をした少年です。
彼には両親が居ませんでした。
けれど、彼を育ててくれたモノがありました。それは、『妖精女王』と、呼ばれる、長命種族の美しい女性でした。
彼は、様々な事を彼女から教えられて育ちました。
彼が何故、彼女に育てられたのかも。
彼が果たすべき使命も。
その為に必要な知識や技術や教養も。
成すべき使命を知った時、少年は彼女と約束を交わします。
『僕が人間達を纏めて王様になって、使命を果たした暁には、僕と結婚して欲しい。その時が来るまで、僕はこの髪を切らないよ。君を想う気持ちが、この髪なんだって、誓うから。』
と。少年には、精一杯の誓約でした。
『ええ。待っているわ。』
輝くような笑顔で、彼女はその誓いを受け入れました。
それからの少年は、今まで以上に熱心に自分を高めまていきました。
全ては、愛する彼女の為に。
時が過ぎ。
元服を迎えた少年は、美しく逞しい青年に成長しました。
『私からの、貴方への祝福です。』
旅立ちの時を迎えた少年に、彼女は、一振の剣を授けました。
『これは、未来永劫、貴方にしか扱えない剣。輪廻が廻っても、私が貴方と共にある証。喩え道半ばで別れても、何時か貴方に逢える様に。貴方の困難を、私の想いが振り払い、道を切り開ける様に。』
別離に耐えながら、美しい彼女は、彼に彼のための剣を贈ったのでした。
★
少年は、ヒトの社会に旅立って行きました。
不安定な、ヒトの世を廻る中で、彼は人々の不安を取り除きたいと願う様になりました。
運命に導かれる様に、少年は、不思議な剣に出会います。
誰にも抜くことが出来ない、岩に刺さった剣です。
この剣の柄には、『私をこの岩から解放した者、王と成る者なり。』という光る文言が浮かび上がっていました。
少年は、その剣をあっさりと抜くことが出来ました。
すると、柄に浮かんでいた文言が嘘のように消え、抜き放った刃に新たな文字が光と共に浮かび上がりました。
『汝、王たる者よ。我は王の剣なり。』
と。
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そして、『王者の剣』を持った、かつての少年は、様々な困難を乗り越えて、剣の予言通りに、王国を作り、王となりました。
その見事な、外套の様に輝く金髪から、彼は『黄金外套の王・アイルハルト王』と呼ばれる様になったのです。
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これが、ハイルランドで初めて国を治めた王様の伝承なのです。
あくまで、ラスティン家で読み聞かされている『王様と剣のお話』です。
他のお宅では違う部分もあるかも知れません。
なにせ、彼ら(ラスティン家の人々)にとって、主体は『剣』の方なので。




