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トリスの日記~私の世界の歩き方~  作者: 春生まれの秋。
17/37

17、

17、ラスティン家の収集癖



我がラスティン家の者が収集する物は、様々な分野に及ぶ。それは、館の本館以外に幾つものコレクション蔵があることからも想像に難くない事実として、愛好家達の中でも有名である。何故、沢山の蔵があるのか、というと。

①各個人が

②それぞれに

③好きな分野の品を

④飾り

⑤保管し

⑥愛でる

、、、為である。


故に。新しい物だけでなく、古い物、珍しい物も数多く保有していたりするし、大事なそれらが傷まない様に補修したりお手入れしたりする技術の習得にも余念がない。

何ならそれらのエキスパートになろうとする一族である。





ある種の偏人(コレクター)として名を馳せる一族ではあるが、好きなモノ(コレクション)に関する真贋を見極める技術もまた、一目置かれている事も紛れもない事実。


そんな家族の()()()専門分野は、以下の通り。


父→主に防具関係。防具と対になる武器や、それらに関わった製作者、使用者、素材、構造等に精通している。


母→主に機甲馬(バイク)重輪車(4輪バイク)等の機械式の乗り物。乗り回すだけでなく、技術者としても超一流。様々な機械弄りも好き。


双子の兄姉→魔術的な本(魔導書)や魔術的な物品(魔導具)。中には危険な代物もあるらしい。


私→特に今の所、特別強い拘りは無い。ラスティン家的には珍しく、武器防具を満遍なく愛でている。読書も好き。


弟→発掘品。古代の品々に傾倒している。各所にコネがある様だ。


妹→武器・防具全般。好きが高じすぎて、武器や防具に関する全ての情報を読み取る特殊能力が発現している。何なら、それらと会話もする。






私が、大学受験の際に、お父様から頂いたのは、各個人の趣味の分野における収集物(コレクション)からの物ではなく、武器防具の納められた蔵からのワンセットである。


私が蔵に入った時に、吸い寄せられたのが、ケルバー水晶製のハーフアーマー(胸部装甲鎧)とケルバー水晶製の剣だった。

特に剣の方は、手にした瞬間に『これは私のモノだ』という強い確信めいた何かを感じた。


蔵からワンセット貰った直後に、私はボーグワース総合大学へと連行されたので、その来歴が判らないまま

(質の良い逸品なんだろうな♪ラッキー♡)

くらいの感覚でいたのだが、実家に戻った際に、妹にきちんとお願いして、鑑定は済ませている。


この剣、なかなか歴史的に価値の高い代物だったのだ。





「トリス姉様。姉様のお選びになったこちらの剣、鑑定(おはなし)が終わりましたわ。この方、中々の有名人ですわよ♪」


普段はちっとも動くことの無い表情筋を持つ妹、サラスティーファ。そのサラが、うふふ♪と、綺羅綺羅しい笑顔と明るく弾んだ声(←当社比)で後ろに立っていた。

私より少し背の高い、三歳年下の末っ子は、その情緒の殆どを武器と防具に持っていかれている。私よりも黄色味の強い金髪が似合う可愛らしい妹は、それこそ私とは比べ物にならないくらい大人しげで上品で清楚な外見をしている。姉妹の中で最も華奢な骨格の彼女は、社会慣れしていない私の目から見ても、庇護欲をそそる美少女だ。

そんな妹が、耀かんばかりの上機嫌で語るのだ。

普通の、なんの変哲も無い代物であるはずがない。

私は、私が手にしたこの剣が、一体どんな来歴(物語)を持っているのか、ドキドキと胸をときめかせながら聞き入るのだった。


「端的に申し上げますわね、お姉様。こちらの剣、()()、『名も無き王の剣』ですわ。」


剣を抱きしめ、くるりと軽やかにステップを踏んで頬を紅く染めた妹は、普段のビスクドールの様な様子から一変。とても生き生きしていて、生命力に溢れていた。


(可愛いなぁ。あんなに夢中になっちゃって。本当に、(サラ)、天使か何かかしら。)


そう眩しく妹に見とれることしばし。

妹の可愛らしさに現実逃避していた私の頭に、じんわりと妹の言葉が入ってくる。


…今、何と?


…『名も無き王の剣』?


…って、『名も無き王の剣』!!!?


そして、彼女の言葉の意味を理解した私は、その事実にびっくりした。


「え!?本当に?…本当に、()()『名も無き王の剣』なのですか?」


おたおたしだす()をニコニコと眺めながら、こくりと頷く妹。


「混乱するのも無理はありませんが、トリスお姉様。現実をお受け止めになって?」


小首を傾げるその様子も愛らしく。


(ここは姉らしく落ち着かねばっ!!姉の威厳、大事!!)


と、妹の愛らしさと妹からのびっくり発言に動揺する自分を無理矢理(自分なりに)落ち着かせんと試みる。


「いえ、そうね。ごめんなさい。サラが言うのならば間違いないわね。貴女のその武器と防具への見識の深さは、本物ですもの。疑う所は、其処では無いわね。」


「そうですわ。お姉様。『お姉様()この剣の持ち主である』、という事実こそが、大切なのですわ。」


良くできました、と、(専門家)から合格点を貰う。

そうなのだ。この世界では、「この剣の持ち主である」という事は、とても重要なのだ。

私は、サラの鑑定を聞いて、現実を受け止めざるを得なくなった。

何故なら、この剣が持ち主を選ぶという話は、とても有名なのだ。

子供の頃、寝る前に、何度も聞かされた英雄譚。

そこに登場する、有名すぎる一振。

それが、『名も無き王の剣』なのである。







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