14、先輩
14、
☆
アリ君からのお願いでの、課外授業を終えた私には、またいつもの日常に戻って来た。
則ち、グリーンヒル先生ご指導による戦闘訓練である。
「トリス、ちょっと来い。」
一通りの基礎鍛練が終わるのを見計らって、グリーンヒル先生からお声がかかる。
「はい!」
素直に返事をして、直ぐに駆け足で先生の元へと寄っていくと、先生の後ろに、一人の青年が控えていた。
日によく焼けた肌に、健康そうに鍛えられた筋肉。キラキラと、自分を鍛える事への充実感を漂わせた方である。
「はい、先生。トリス、只今参りました。」
何事かと内心警戒しながらも、私は先生へと向かい、元気良く返事を返す。
そんな私に、うむ、と頷くと、先生はおっしゃった。
「ブラックドラゴンの討伐、ご苦労だった。集団戦闘とはいえ、見事だと思うぞ。偉かったな。成長の見られるお前にも、そろそろ実践での訓練が必要だろう。そこでだ。お前の兄弟子を紹介する。ロイドだ。コイツは最近まで旅をしていてな。最近帰って来たんだ。ロイド、コイツが妹弟子のトリスだ。」
一気にそうおっしゃった先生は、自分の後ろに控えていたその青年の背中をずいっと私の方へ押した。
(確か、物語の本では、格下から先に挨拶をするのが礼儀とあったわ。先生が直接私に紹介しようとなさるって事は、目の前のこのお方は、私より格上!失礼があったらいけないわっ!!ご挨拶しなければ!!!)
私は、すぐに跪拝すると、挨拶の口上を述べる事にした。
「ロイド先輩、はじめまして。私、トリスティーファ・ラスティンと申します。武具防具の事を知り、きちんとお客様に合う逸品をお渡しできる人材になるべく、グリーンヒル先生に師事しております。人との接し方など、まだまだ不慣れなふつつか者ですが、よろしくお願いします。」
私はにっこり笑って顔をあげた。すると、
「ロイドだ。グリーンヒル先生を指導教官に選ぶとはガッツあるな。よろしくな。」
と、ロイド先輩は、爽やかな笑みを浮かべて、握手してくれた。ついで、と言わんばかりに、背中もバシバシ叩かれる。
(これが、人間社会でいうところの、『上下関係』という奴ですね。勉強になります、先輩。)
私は、兄弟子ロイド先輩に、心からの敬意を払うと決めた。
弟子二人の様子を穏やかな笑みで見守って下さっていた先生は、満足げに頷くと、更に告げた。
「さて、二人には、これから手合わせの訓練も追加するので、心して行う様に。」
そうして、私の日常に、手合わせ、という新しい項目が追加されたのだった。
今回は、短い回。
長いばかりじゃ、疲れますでしょ?