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トリスの日記~私の世界の歩き方~  作者: 春生まれの秋。
12/37

12、アリ君からのお願い①

長かったので、分割しました。

内容は、完全に、筆者の趣味です。

12、

☆アリ君からのお願い①





がやがや。



 今日も食堂は賑わっている。


「今日のオススメ定食をお願いします♪」


「はいよっ。あんたちっちゃいんだから、たんとミルク飲んで大きくおなりよ~。」


 何時もの様に、食堂でメニューを頼むと、給仕のおばちゃんは、たっぷりのホットミルクを付けてくれた。これは、毎回のやり取りである。私を見かけると、たっぷりのホットミルクをくれるのだ。


 余談はさておき、ランチを終えた私は、午後の予習をすべく、早めに教室に向かった。すでに、レヴィちゃん達は揃っており、何かお話をしていた。


「早いですね。皆さん。」


「よぅ。トリス。」


「何の話しをしていたんですか?」


「ん?恋ばな。」


「え?どんなです?」


「大学での恋愛事情ですよ。結構、皆さん青春なさっているみたいですね。」


黒い手帳をぱらりと捲りながら、レヴィちゃんが教えてくれる。


「え?そうなのですか?ちっとも気付かなかったです。」


人間社会に疎い私は、周囲の思惑にも鈍い。当然、そんな人間関係の変化に気付くはずも無かったので、素直にびっくりした。


「そう?ボクも何回か呼び出されたよ。全部お断りしたけど。」


「えっ。すっ凄い。リースさんっ。」


「普通でしょ。私、経験済みだし。」


「私も、貴族の嗜みとして、元服の儀で経験はしたな。」


「俺は無いなぁ。」


「みぎゃ。うっわわわわ。ミナサンオトナナンデスネ。」


 皆の、特に、クレアさんとアリ君の発言にどきりと胸が高鳴る。急に皆が遠い人に見えて、こんな感覚は初めてで、目がぐるぐるとまわる。顔が赤く染まる。熱くて仕方ない。良く判らない落ちつかなさに支配される。


「貴族の子息には、あるんだよ。そういう機会が。あまり気にするな。」


私のあまりのテンパり具合に、アリ君が然り気無く貴族社会の事情を教えてくれた。


「ボクはまだ処女だよ。」


淡々と、なんでもない事のように、リースさんも、自身の恋愛事情をもらす。


「人それぞれだろっ。気にすんなよ。」


アルヴィン君がばーんと勢い良く私の背中を叩いて励ましてくれる。


「ふっ。お子ちゃまねぇ。」


そんな私を見て、クレアさんがツン、と私の鼻先をつついて笑った。


「ふむふむ。(かきかき)」


その横でレヴィちゃんはいそいそと、嬉々として黒革の手帳にナニかを書き込んでいた。




 結局、その後の講義は、クレアさんとアリ君の衝撃発言にびっくりし過ぎて、まともに頭に入って来なかった。


 授業後、そんな私を見兼ねたのか、アリ君が珍しく、皆に呼び掛けてきた。


「ちょっと残ってくれないか。お前らに話がある。」




『私も、貴族の嗜みとして、元服の儀で経験はしたな。』



 頭の中で、アリ君の言葉がリフレインする。つまりそれは、素肌を他者に晒す行為で、私には一生、縁の無いハズの行為だ。

 なのに、なぜ、リフレインするんだろう?

 私には、答えが分からない。

 ただ、普通に対応するのが難しくなってしまって、自分では自分を制御出来ない事だけを理解した。




 そんな状態で、アリ君からの、


「ちょっと残ってくれないか。お前らに話がある。」


とのお願いである。

 私は、ガタッと椅子から落ちかけながら、


「なっ何でしょう。」



と、若干引き攣りながら答えた。


 そんな私をちらっと見た後、こほんっと咳ばらいしたアリ君は言った。


「そこの挙動不審な奴は置いといて、話をするぞ。将来、私が仕えるべき主君の為になるかも知れない研究の材料が、南方の国にあるらしい。そこで、それを採りに行こうと思う。あー…、お前達さえ良かったら、その、だな、一緒に行かせてやらなくもない。ただし、数日かかる旅になる。その間の授業の代わりとして、課外活動の許可がいる。許可は各指導教官から貰う必要があるがな。どうだ?」





「「「「「…。」」」」」





 沈黙がその場を支配する。



「ちょっとアリ以外全員集合。」



 アルヴィン君の呼び掛けで、ガタガタッとアリ君以外の皆が集まり、ヒソヒソと小声で話す。


(おい、今あいつ、俺らにお願いをしたのか?)


(アレは本物のアリ君なのでしょうか。)


(ツンデレ?ツンデレなの?)


(何の心境の変化なのかな?)


(槍でも降るのかしら。)



「おいっ。本人を目の前にして内緒話とは失礼だな。全部聞こえているぞ。」


ちょっとイラッとした様子を見せながら突っ込まれた。


「嫌、悪い。アリ。お前が俺らを頼るのが珍しくて、つい…。」


「頼ってなどおらんわっ。この話は無かった事にしてもいいんだぞ。」


「だから、悪かったって。怒るなよっ。面白そうな話だしな。俺は乗るぜ。」


「じゃあボクも。」


「こんな面白いアリ君を見れたんですもの。もちろん参加しますわ。」


「私も参加しようかな。旅行でしょう♪バカンス♪バカンス♪♪」


「置いてけぼりは嫌です。行きます。」


 こうして、我等のパーティーは、初めて一緒に旅立つ事になった。



 授業の一環として行動するために、アリ君の企画書を基に、それぞれが、指導教官に許可を求めた。

 当然、私の場合は、グリーンヒル先生だった訳だが…。


 グリーンヒル先生は、


「おう。何事も経験だっ。大いに体験してこいっ。実践は何より勉強になるからな。あ、トレーニングは怠るなよ。」


と、ちょっと尻込み気味だった私に、旅の許可と、大きな勇気をくれたのだった。







 季節は11月。ハイルランドの地は、雪のちらつく季節である。

 基本的に、余り太陽の光が強くない、この世界(ハイルランド)では、気温もさほど高くない。故に、11月でも、雪が降るのは珍しくないのだ。

 私達は、いくら南方へ行くと言っても、軽装、という訳にはいかなかった。

 旅人は、暖かい外套や野宿に対応した旅仕度の一つも整えなければ、万全とはいえないのだ。

 それらの準備を整えた、私達の向かう先は、南方の国、エクセター王国。

 乗り合いの馬車に揺られながらの旅になる。


 馬車に揺られながら、私は考える。

 自分の事。周りの優しく賑やかな、気のおけない仲間たちの事。

 自分が何者であるのか。

 何が正しい事なのか。

 自分のこの『消えたい』という願望を解消する知識は何処にあるのか。

 取り留めの無いことを考える内に、心地好い馬車の揺れは、私を眠りの中へと誘い込んでいった。






「着きましたわよ、トリスさん。お起きになって。」


 レヴィちゃんに揺り起こされて、私は目を覚ました。


「ん~…着いた…?」


「そうですよ。本日泊まる町まで着きましたわよ。馬車から降りてください。」


 頭がぼ~っとする。


 ふらふらしながら、皆の後を追う。

 寝起きで使い物にならない私の代わりに、クレアさんやアリ君達が、宿屋との交渉を行ってくれたらしい。


 しょぼしょぼと開かない目を擦りながら、彼らの後を追っていくと、大部屋を一つ借りられたようで、皆が一つの部屋に入って行く。私達は、アルヴィン君とアリ君の二人のベッドを入口近くに、他の4人のベッドは入口から離して配置をし直した。更に、アルヴィン君達との間に衝立(ついたて)を設置した。


 ベッドの配置は防犯対策である。


 夜ばいに関しては…この2人に関しては正直心配していない。

 それ以前に、私にはそんな魅力や価値は無いのだから、心配は無用である。

 クレアさんやリースさん、レヴィちゃんは、私から見ても十分魅惑的なので、彼女らは護らねばならないが、集団でいる以上、手出しは出来ないだろう。



バタバタバタッ


 荷物の整理をしている所に、アルヴィン君が勢いよく入って来た。


「おいっ。この宿、露天風呂があるんだってよ!!!」


「何、本当かっ!?」


「本当ですのっ!?」


「本当っ!?」


「ホントに!?」


「本当なの!?」


 私達の住む地域は、蒸し風呂が一般的である。それさえなく、シャワーがあるだけマシ、な所も多い。

 そんな中、ラスティン家(我が家)には湯舟式のお風呂があったので、湯舟に浸かるのは当たり前だが、普通の人には普及していない。

 よって、この宿は、大当りといえる。


「だが、問題がある。大きな浴場が一つきりなんだとよ。」


「じゃあ、交代で入るの?」


「人数から言って、俺ら男が先だろぉ。」


「何言ってんだい、アルヴィン君。ボクらが先。レディーファースト、だろ?」


などと話していると、宿屋の女将さんがやって来た。



「ごめんなさいね。普段あんまりお客さん来ないから、部屋数も少なくて…。お詫びに、露天風呂を仕切って男湯と女湯に分けてあげるから、どうぞゆっくりしていってくださいね。更衣室も別で用意致しますから。」



こうして、女将さんの機転により、私達の仲は険悪にならず、皆で露天風呂を楽しむ事になったのである。






☆~女湯~


ザア…ッ ザア…ッ


 湯煙が立ちのぼるなか、躯を洗う一同。


「クレアさん、石鹸取ってちょうだい。」


 リースさんがクレアさんに声をかける。

 リースさんは、艶やかな黒髪と白い肌が色めき立つ、スレンダーでしなやかな体つきをしている。張りのある肌が水を弾き、健康そうな肉付きが若い羚羊(かもしか)を思わせる。


「はい。どうぞ。」



 クレアさんは、17歳ながらも、しっかりと主張する胸、きゅっと締まった腰から流れるような曲線を描く張りのある太股、そして括れた足首をしている。更に、しっとりとした肌と、黒髪をアップにした首筋からは、大人の色気を漂わせている。


「それにしても、リースちゃん、好い体つきしてるわね。」


「クレアさんが言うと反則臭いよ。ボクはそんなに大きく無いしね。」


「いやいや、引き締まってて見事な足腰だわ。出るとこ出てるし。」



「みなさんっこっちは見ないでくださいよっ。みなさんと違って、私は成長しきってないんですからねっ。」



 レヴィちゃんが、隅っこでコソコソ躯を隠しながら言う。


「またまたぁ。そんな事言ってぇ。レヴィちゃんだってほっそりしててイイモノもってるんじゃないの♪」



 クレアさんが茶化しながら、レヴィちゃんの布を取る。

 日に当たる事の少ない彼女の肌は透ける様に白く、無駄の無い体つきには、清純な色気があった。

 そんな中、何時もの様に、入浴衣を着けていた私は、びっくりしていた。


「皆さん、裸なんですね。入浴とは、入浴衣を着てするものだと思っていました。」


「ボクらの方こそびっくりだよ。何でそんなの着てるのさ?」


「えっと…我が家の家訓なんです。伴侶以外に肌を見せてはいけないって。お母様も御祖母様もお姉様も、そう教えてくださいました。それに、古傷もありますし、人に曝したく無いんです。」



「ふぅん。でも、トリスのそれは反則だよね。」



「うん。」



「ええ。」



「…?何がです?」



(太股とかの出っ張りに布が張り付いて透けてるのに、この娘は気づいてないのね)


(出るとこ出ててるしね。)


(ええ、引っ込むとこ引っ込んでますしね。)



「「「何でもないよ〜。」」」




訳がわからなくて、友達の棒みたいな声に、私は首を傾げた。





☆〜一方、その頃、男湯からは。〜


「アルヴィン、お前のでかいな。」


「アリこそ。しかも固い。」


「いや、お前のが立派だって。」


「形はお前の方が整ってるだろう。」


「せっかくだから、もっと大きくしようぜ。」


「あぁ、そうだな。」


 という会話が聞こえて来た。


「ねぇ、クレアさん、ヤツらは何の話をしてるんだろうね。」


「ブツの比べっこかしら。」



 女性陣が不思議に思っている中、男共は雪だるまを作って遊んでいたそうな。








「好い湯でしたね~♪」


 そう言いながらごくごくと喉を潤すのは、キンキンに冷やしたミルクだ。搾りたてのミルクを、雪で冷やしてあるのだ。濃厚なミルクが身体に嬉しい。


 そして、夕食は、源泉を利用した温泉卵に、ジビエ(野生動物の肉)の蒸し焼き、それに、ライ麦のパンだった。そこに、女将さん特製の、ライムを搾った炭酸水がついてきた。ホクホクの卵に、余計な脂の抜けた柔らかいお肉。更に、ホカホカのパン。シュワシュワぱちぱち弾ける泡が爽快な炭酸水。

 女将さんは、食べ盛りの私達に合わせて、量を多めにしてくれたらしい。

 幸せな気分に成れる、素晴らしいお宿だった。


 翌日、私達は、去りがたい想いを残しつつ、旅路を急ぐのだった。






描写が酷い?

もっとkwsk???


ご意見は色々あるかとは思いますが、息抜きって必要よね?


違う?

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