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「異世界という壁が俺達を阻む!!!!!」

ゆるいラブコメですので、気楽に読んでいただけると幸いです。

 これは魔王と一人の少女が世界の壁を越え、年齢という壁を越えて結ばれる話である。

 







 ある日、魔王は見つけてしまった。

 運命の相手に。

 だが、その少女は異世界人だった。


「見よ、彼女の愛らしさを!ダイヤモンドのように煌めく白銀の美しい髪、サファイアのように美しい瞳、そしてぷっくりとした桜色の可愛らしい頬! 何処を見ても惚れ惚れする」

「私からは変質者がにやついている姿しか見えませんが」

「冗談はよしたまえ」

「それでか弱い少女の姿を眺め、何をしているのです」

「彼女を我が妃として迎えたいのだ」

「頭が可笑しくなってしまわれたのですか? 年の差はさておき、この少女は異世界の人間ですよ」

「分かっている、それは重々承知している! 彼女を養うだけのお金も、守ることが出来る強大な魔法も権力も持ち合わせているというのに。異世界という壁が、俺達を阻む。くそっ」



 魔王はその膝を地面につけ、何度も床を殴った。その原因は、偶然手に入れた異世界を除くことが出来る水晶だった。魔王城の宝物庫を整理整頓中だったケルベロスから渡されたことがきっかけだ。その様子を困ったように一人の男が見ていた。魔王の腹心にして幼馴染み、闇魔道士ヴィルである。


「来世に望みを託しましょう。そのうち同じ世界に生まれることが出来ますよ」

「俺は待てない! 魔族である俺の寿命はいくつだ? 軽く千は超えるぞ! それに週間魔界占いの結果によると、彼女との相性は最高だと書いてある。しかもこの出会いを逃したら、あと四百年は出会いがないとも書いてあったんだぞ!」

「たかが占いごときで喚かないでください」

「五月蠅い五月蠅い。あと四百年後なんて、もうおじいさんだぞ。よぼよぼなんだぞ!」


 これが人びとから恐れられる魔王の実態である。

 しかしこの姿を知るものは、ごく僅か。ヴィルがその一人である。


「まあ、そうですね」

「俺は今、三○五歳。占い結果も最高。待てるものか」

「ではどうするんですか? 方法なんてあるわけが……あっ」


 ヴィルは思いついてしまった。『魔界の頭脳』と呼ばれるほどの天才だった故の失態である。

 魔界とは反対の、セイント王国には古より伝わる一つの魔法があった。異世界から巫女を召喚する儀式である。闇魔道士は色々あってその詠唱も、魔法陣も完璧に知っていたのだ。

 ヴィルは誤魔化すように、にこりと笑みを浮かべた。


「胡散臭い笑みを浮かべてどうしたんだ、闇魔道士」

「いえ、なんでもありません魔王様」

「そういう顔をするときは、俺を誤魔化そうとするときだって知っているんだぞ」

「ちっ」

「この国を統べる王に対して舌打ちとはなんだ、無礼だぞ」

「あ~、それは大変失礼致しました」


 ヴィルは引きつった笑みを浮かべた。


「それよりも、だ。俺とお前の仲ではないか。ここは身分という名の壁を越えて、一つ幼馴染みとしてその初恋を叶えてあげようという気持ちにはならないのか」

「嫌ですね」

「では、魔王の片腕として。そうだな、成功したらお前が欲しがっていた聖遺物を一つやろう」

「全てお話しいたしますね」


 ヴィルは現金な男であった。異世界から人間を呼び寄せるための詠唱、魔法陣、その他必要な道具を知りうる限り全て話した。

 そんなことを知ってか知らずか、魔王は機嫌良く高笑いをした。


「流石は魔界の頭脳、闇魔道士ヴィルだな」

「お褒めにあずかり光栄です。それで報酬の方はいかほどに」

「まあ、待て。ものは試し。一度実験してからでも遅くはなかろう」

「……かしこまりました。この召喚に必要なものは全て城でまかなうことが出来るでしょう。至急、準備をさせます」

「ああ、よろしく頼んだぞ」





♢♢♢

 ところ変わって、人間たちが暮らすルミエール王国。

 この国でも、魔王たちと同じ召喚実験を行っていた。こちらは王室に伝わる書物からヒントを得て、国中の魔法使いの総力を結集させて作った魔法陣だった。なぜそこまでしなければならなかったのか、それは魔界とルミエール王国の歴史を辿る必要がある。

 古来より、魔王が治める魔界と聖王が治めるルミエール王国では激しい争いが続いていた。どちらが先に始めたのか、それすらも分からなくなるほど永いときの間だ。だからこそ、お互いが引くに引けない状態に陥っていた。けれど魔を操る魔王軍の力は圧倒的なもので、ルミエール国軍は苦戦を強いられていた。それを打破する手立てとして、聖女召喚の儀式を執り行うことにしたのだ。

 魔王のような、色恋沙汰では決してなかったのだ。


 そして、この二人の王は無意識のうちに同時召喚を行っていた。

 勿論互いに打ち合わせをしたわけでもない、本当の本当に偶然だった。

 その結果として魔王が召喚するはずだった少女は、光属性であったがため、力に呼応して王国側へと引き寄せられてしまったのだ。


 一点狙いの魔王に対し、取り敢えず聖女カモンの精神だった王国。軍配は後者に上がった。

 

 魔王、無念なり。









「な、なんで。なんで召喚されないんだ!!!!!」


 その日、魔王の断末魔が城中に響き渡った。


ここまで御覧いただきありがとうございました。





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