普通に憧れて。
もうじき四月も終わろうとする頃にはクラスの中である程度仲のいいグループが固まってくる。
大型連休も控えて休み時間なんかもきゃーきゃーわいわい賑やかだ。
でも。
ああ。結局俺には友人と呼べる人間は悠希しか出来なかった。
俺、そんなに怖く見えるのかな?
ちょっと悲しい。
がんばって声を掛けてもみんなよそよそしいのだ。それでめげる。
外見がちょっとだけ派手目だもんだからそれで怖がられちゃったりしてるんじゃないかって。それ、誤解だから。俺、すごくコミ障でチキンだから。そう弁解したくてもチャンスはなかなか無くて。まあ、勇気がなくて、かな。
そもそもこの派手目の顔は親父のせい。別にとりわけ何かしているわけじゃないのにな。
髪がちょっと紅いのも、目鼻立ちがちょっとくっきりし過ぎているのも。背が少し高めなのも。みーんなただの遺伝だ。
別にヤンキーやってるわけでも無いのに怖がられたり、とか、もう中学の時でコリゴリ。
俺は喧嘩とかしたくないし誰かと争うのも苦手。街で絡まれた時なんかはジロって睨むと向こうが自動的に消えてくれるのは、少しは助かってるけど。
俺は、「普通」になりたかったのだ。
ただただ「普通」に。
普通ってつまんない。
そういう人もいるけどさ。
それって普通で居られるからそう思うだけなんだよね。きっと。
「普通」になれなかったやつは、「普通」に憧れてどうしようもなくて。
ああ。ほんと俺なんてほんとうに平凡で普通の筈の人間なのにな。
外見同一性障害? みたいな?
外見だけ見て俺のこと普通じゃないって判断する人間がものすごく多くって。
それでいつもめげるのだ。
まあそれも今まではそれでも。
何ヶ月か一緒に過ごすうちになんとなく少しづつわかって貰え、友人も少しづつできて。って感じだったのに。
なんだか今回の根の深さはちょっと変。
流石にこのよそよそしさは今までと勝手が違うような気がしてならない。
「なあ拓真、連休中って何か用事ある?」
ああ、悠希、心の友よ。お前だけだよほんと俺の事名前で呼んでくれるのは。
「特に用事は無いけど? 悠希は?」
「僕もこれといって忙しいわけじゃないんだけど、良かったら一緒にどこか遊びにいかない?」
「あー。いいねー。どこいこっか? スッゲー楽しみ!」
俺の顔、思いっきり笑顔になってると思う。さっきまでの仏頂面とは百八十度変わったのが自分でもわかる。
「あは。そしたら帰りにミスドで計画練ろっか?」
「オーケー。ミスドかぁ。それも楽しみだ」
「拓真ドーナツ好きだもんな」
「ああ、フレンチクルーラーにココナッツチョコレート、あとエンゼルクリームも食べようかなー」
「僕はポンデリングとチョコファッションかな。あはっ。お腹空かせていかないとね」
悠希もすっごく笑顔になってる。普段あんまり感情を表情に出さないから、こんな笑顔はほんと凄く嬉しい。
ん?
なんだか周囲の空気が変わったきがする。
特に女子。
俺たちの事遠巻きに見て、こそこそ呟いて。
なんだろう?
んー、もどかしいな。