親友。
短期集中連載です。
週末には終わりますにゃぁ。
「ああ、やっとわかったよ」
そう。お前の恐ろしさが。
皆がおそろしい恐ろしいと言うだけで、誰も本当の事を教えてはくれなかった。
誰に聞いても口にするのを憚られるとでも言う様に口籠って逃げる様に去っていった。けれど。
今になって。俺にもやっとそれが理解できた。
ああ。確かに。
「確かにお前は恐ろしいよ。宮本」
俺はそう、親友に、親友だと思っていた奴に、そう語りかけた。
奴の顔が、変わるのがわかる。
無表情だった、その顔が、ぱぁっと花が咲いた様にほころんだ。
☆☆☆
俺、坂本拓真。現在高2。
父親の仕事の関係でここに引っ越してきたのは去年の冬。この柊木第二高等学校への編入試験を受け合格し無事に高校二年生になれた訳だけど、もう勉強はそこで力尽きた感じ。あとはまったり高校生活を平和に送りたいなぁと思ってるごくごく平凡な人間だ。
身体を動かすのは嫌いじゃないけど部活をやるにはちょっと中途半端だしな、と、もう帰宅部で良いやと、なんだったら図書館でミステリーとかでも読んで時間を潰そうかとそんな事を画策しつつ、新学期を迎えたわけだ。けど。
ぼっちはやっぱりつまらないし、誰でもいいから一緒にダベったりできる奴いないかなぁと物色しながら教室の一番後ろから観察して。
世の中にはいろんな人間がいる。
社交性があって誰とでも仲良くできる奴。
その反対に、他人との距離が分からずついつい人間関係に失敗する奴。
俺はどっちかっていうと後者だから。なるべく失敗しない様、気の合いそうなのを探してみてるわけだけど。ね。
じーっとみてるといろんなことがわかる。わかるんだけれど、さ。
気になるのが居た。なんだかいっつも一人で行動してる奴が。
別にいじめられてる様には見えないけど?
影が薄いのかどうにもまわりの人間に認識されていないのか? 何か話題が湧き上がってもそいつはいつも蚊帳の外だ。
まあ、それは俺だっておんなじ。
周囲の人間に知られていないってのがこんだけきついとは思わなかった。
孤独で居ればいいとかいう奴もいるんだろうけどダメ。ちょっと今日俺まだ誰とも会話してないよ。ああ、もう耐えられない。
男の転校生に構ってくれる奇特な委員長ちゃんみたいなのもどうやら期待できないし。
我慢が出来ず、俺は勇気を出して昼飯の時間に奴に声を掛けた。
「なあ。もしよかったら一緒に食わない?」
弁当箱を右手に奴の席の前に陣取って。そう聞いてみたのだ。
一瞬、びっくりした顔をした彼、宮本悠希。
ちょっとほころんで「ああ、いいよ。僕でよかったら」と、笑った。