どうしようもないうんちみたいなしょうもないザコキャラに転生してしまった。 #! 転生してもブラック企業だった件
地鳴りのような魔物の叫び声で目を覚ます。
俺の名前は二子玉川太郎。どうやら俺は死んでしまったようだ。そして異世界へ転生してしまったようだ。
視点がいつもより低い。サウナのなかにいるような熱気が俺の周りに漂う(サウナ行ったことないけどな!)。俺のまわりには、茶色いキノコの化け物や、赤や緑いろのにそくふぉこうの亀が立っている。そいつらは全員同じ方向を向いている。
…手が俺の体からなくなっている。というか俺今裸じゃねえか! キノコ&カメに裸という概念はないか…なら恥ずかしくないな! むしろ逆に俺の鍛え上げられた彫刻のごとき肉体美を周りに見せつけることができる!
ん? 俺の肉隊美もない! 手も筋肉もないってことは…
ーーOh! 俺の大事な未使用の《ピー》も亡くなっているじゃねえかッ!
せめて一度は使ってから死にたかったぜ。はあ
とにかく! アレはともかく、手がないってことは俺はうんち色のキノコになったらしい。はあ、俺はキノコが大嫌いで、食べれないんだよ…やれやれ。
誰もが子供の頃に一度は耳にしたことがあるだろう。実際にプレイした人も多いはずさ。さらわれた姫を救い出すために、プレイヤーが帽子に M という文字が描かれたレッドマンを操作するあの国民的ゲームを…
俺はどうやらそのゲームさながらの世界に転生してしまったようだ。俺はその世界の主人公ーーというわけではなく、主人公が一番初めに出会う、かの国民的ザコだ。よほどのことがない限りうんち色のキノコに殺されることはまずないだろう。少なくとも、俺は初めて出会う第一村人ならぬ第一うんちキノコにやられたことはない。
レッドマンは帽子に刻まれた文字とは対照的に 弩 がいくらあっても足りないぐらいの S だ。自分の目の前に立ち塞がる敵には容赦なく死をもたらす。俺の周りにいるこの雑魚共はレッドマンのことを影で赤い死神と呼んでいるレベルだ。
ラスボスが俺たちの前で演説をはじめた。bossの口からは駅に停車している蒸気機関車のように煙がでたいる。道理であたりに熱気が漂うわけだ。ボス亀の隣には、大きな鳥かごのような檻に入れられた姫がいる。チッ、もうすべてがはじまってはじまってやがるのか…。このゲームのbossの余命は短くて一日だ。長くても一か月程度だろう。かわいそうに…。俺はボスを憐れむような眼で見た。
ボスの演説の内容は、今からレッドマンが来るから各ステージで一日中待ち受けろとのことだった。現在地であるボスの城からの移動費や各持ち場での食費、その他費用は俺達の自腹らしい。俺が務めていた昔の会社よりブラックだ。俺のさっきまでの憐れみを返せ!
思わず俺は叫んでいた。
「おい! ちゃんと給与は出るんだろうな! もちろん残業代と危険手当もだ!」
周りが一斉に俺の顔を見る。冷たいつららのような視線がオレオ襲う。だが俺はこんなことでは動じない。慣れているからな。俺がもといた世界のブラック企業でも俺はこんなヤツだったのだ。もちろん周りからは煙たがられた。
ボス亀が低い声で言う。
「じゃあお前、1-1の一番初めに配置な。」
は?
「すぐに仕事が終わるから。」
おい! あんなとこで主人公をマンマミーアさせるプレイヤーなんてこの世に存在するだろうか? いやいない。1-1の一番はじめなんかに配置されたらすぐに踏みつぶされるか、運が良くてスルーだ。しかし、スルーするやつも少ないだろう。俺なんかいつも景気づけで一番初めに出会った敵は殺していたぜ?
「はあ? それはねえよ!」
俺は叫び、言い返す。
「いや、決定事項だから。w 行ってらっしゃい。w」
俺は最終ステージとなる城をおいだされ、そこから一番遠い始まりのステージ・1-1へと左遷させられてしまった。
それから一日もたたずにその時が訪れた。
レッドマン が 現れた。
レッドマンは全力でこちらへと走ってきた。くそっ! ザコキャラの俺があいつに勝てるわけがない。俺は全力でヤツのほうへダッシュした。と言っても、俺の素早さは死ぬほど遅い。全力で走っても、ヤツの歩く速度と同じ、いやもしかしたらそれ以下かもしれない。
レッドマンはおれに急速に迫ってきた。ヤツは俺の二倍以上背が高い。まるで踏切の中で目の前に迫ってきた快速列車のようだ。
ーー轢かれる
そう思った一瞬のことだった。俺とヤツの目があった。最後の瞬間に列車の運転士と目が合った感じだ。
レッドマンは俺をゴミを見るような目で見た。言い換えるなら、gkbrを見る目て”俺を見た。
レッドマンは無言で空中にまいあがった。そう、あれが全人類が当たり前だと思い込んでいるが、よく考えたら人間の域を超えたヤツの”通常ジャンプ”だ。
レッドマンはそのまま空中で一回転し、俺にケツを向けた。
ーーまさかのヒップドロップ…だと!? 一番初めのキノコに出す技じゃねえ!
と、俺が考えると同時にレッドマンのブルーのジーンズの素材に包まれたケツが俺の頭上に落ちてきた。この期に及んで気づいたが、ヤツのケツは意外なまでに臭かった。うんこの後ちゃんとケツ拭いているのか…? いや、拭いていないのだろう。
やっぱりな! 今の俺のこの体じゃあこいつに勝てない!
あの死んだときに流れるやたらハイテンションな音楽が脳内で流れる。敵キャラでもこの世界で死んだらこのミュージックが自動的に脳内再生されるらしい。
夏場に油断した蚊のようにぺったんこにされた俺はそのまま短いザコうんちキノコライフを終了した。
〜はっぴぃえんど〜